第5話
「はあ……」
彼が二人組を返り討ちにし、彼の能力で出した見たこともないような豪華な食事を食べた後、私は自分の寝室のベッドに体をうずめて考え事をしていた。
もちろん彼の事だ。
最初は可哀想な身の上だと思った、そしてずっと一人で寂しかった私の一緒に住まないかという勧めに彼は賛同してくれてこうして一緒に住んでいる。
いくら記憶を失っているとはいえ初対面の男と一緒に住み始めるなんてパパやママが生きていたら危ないと言って大反対したんだろう、きっとそれが普通の反応だ。
しかし私は寂しさという敵に負けてしまい彼を受け入れてしまった。
虫の良い話かもしれないが、私は彼が怖くなってきている。
終わりのない暴力から身を挺して救ってくれようとしている彼を。
多分彼はこの国の人間じゃない、魔術で作る道具だって今まで私が見たこともない様な道具ばかり。
何となく生きている世界が違う様な雰囲気まで感じてしまう。
私は彼に若干の恐怖を感じると同時に、惹かれてしまっている、あの不思議な雰囲気に、粗暴さに隠れたあの優しさに。
もしかしたらいつか彼の銃口が私に向くかもしれない、でもその恐怖以上に一緒にいたいと感じてしまう。
私は愚かだ、恋は盲目と言うけれど限度がある。
しかしそんなことはどうでも良いんだ、両親が死んでから今まで久しく感じてなかった生き甲斐を彼が与えてくれたのだから。
例え彼の弾丸が私を貫いても、彼が私のそばから離れて行こうとも、その瞬間まで共に生きると決めたのだから。




