第4話
そしてそれから3日後、遂に開戦の時がやって来た。
俺とリリは農作業をしていたが、また先日の様に二人組がアホ面下げてノコノコとやって来た様だ。
クワを置いてMP40を手に取る俺を、リリは不安そうな眼差しで見つめるが、その不安を宥める様に、何も言わずにぽんっと軽く彼女の頭を撫でる。
そして俺は彼女を後ろに連れて二人組へと歩み寄った。
「おいリリ、何だこのガキ、男なんてたらしこんでやがったのか?」
「ハ、ハルト君はそんなのじゃないです……」
「まあいい、とにかく今日は畑と家を貰えるんだよなぁ?
この間みたいにケガしたくないだろ?」
俺の後ろに隠れる様に立つリリは男の言葉をする。
男は俺の事など気にもせずリリに脅しを掛けている。
全く、卑怯な連中だがこいつらの悲鳴が聞けると思うと楽しみで仕方がない。
二人組の武装は腰のナイフだけか、丸腰と変わらないな。
「家も畑もお前らに渡す義理はない、殺されたくなければさっさと立ち去れ」
「はぁ?随分ナメたガキだな、女の前だからって粋がってると……」
どうやら残念ながら俺の警告は通じなかった様だ。
男はナイフを鞘から抜いてこちらに向けてくる。
確かに俺の外見は少年、持っているMP40も玩具か何かだと思われているのだろう、それも仕方ないかもしれないな。
「警告はしたんだ、恨むなよ」
そう一言呟いた後、俺はMP40を男の膝の辺りに向け、ライターをつける様な気軽さでトリガーを引いた。
単調な金切り音と共に弾幕が男の皮膚を、筋肉を、脂肪を、膝関節を容赦なく突き抜けていく。
しかしマガジンの32発の内10発程度をぶち込んだ所で男は倒れてしまう。
至近距離から1ヶ所に弾幕を集中したからだろうか、右足が半分ちぎれかかっている。
恐らく5発は当たっただろう。
しかしこのむせかえる様な火薬と血の臭い、相変わらず最高だ。
「えっ、えっ?あ、足……俺の足っ!い、いだい」
「おいお前、そいつを連れて帰んな。
それともミンチにされてブタの餌になりてえか?」
「い、いやだ!帰る、帰るから!」
撃たれた方の男は突然の負傷により思考がついて行けていない様だ。
男にとっては全く予期せぬ奇襲攻撃だ、無理もない。
俺は次に呆然としていたもう一人に銃口を向け、男を連れて帰る様に指示をすると、もはや戦いにすらなっていない一方的な蹂躙に恐怖を顕にして男の肩を担いで退却していった。
これで初戦は完全勝利と言ったところだが、後は盗賊団本隊がどう出てくるかが今後の要になってくるだろう。
「やったな、勝利だ。
俺の魔術でご馳走でも出すから、家に戻って戦勝パーティーと洒落込むか」
「う、うん……」
こうして俺達は家に戻って戦闘の緊張を癒す事にした。
しかし俺は気付いていなかった。
リリが俺に向ける感情が変化していた事を。




