第1話
随分と長い間眠っていたみたいだ。
まぶた越しでも陽の光が眩しい。
そう思いながら俺はゆっくりと目を開ける。
しかしそこは先程の様な戦場ではなく青く澄み渡る空の下に広がる草原だった。
「死後の世界ってやつか……?」
これが天国というもの何だろうか、確かに自然豊かな心洗われる風景ではあるが……
しかも何だか妙に体が小さくなっているような気がするぞ、着てる服も……何だかよくわからんが一般的な白いシャツにズボンになってるし。
とにかく情報が足りな過ぎる、人が居そうな所を探してみよう。
そう思い俺は草原を見渡しながら歩みを進めた。
歩き初めて30分も経っていないが、何やら集落のようなものを見つけた。
あれはきっと村だ、村ならば人が居る筈だ。
少々緊張しながらも村へ歩み入ると可愛らしい女の子が馬の様な動物の世話をしていた。
歳は15.6歳くらいだろうか、真っ直ぐな金髪を腰の辺りまで伸 ばしていてまるで絵画に描かれた女騎士の様な凛とした顔立ち、非常に魅力的だ。
情報収集の為に声を掛けてみよう、決して可愛かったからとかではないぞ、うん。
「こんにちは……悪いがお嬢さん、少々聞きたいんだが」
「はいはーい……ってお嬢さんだなんて失礼ね、貴方も同い年くらいじゃない」
はて、この村娘は何を言ってるんだろうか。
俺は今年で30歳、しかも老け顔と呼ばれる部類に入る筈。
間違っても10代青春真っ盛りの少年には見えない筈だが……
「あー……えっと、俺が同い年とは……?」
「えっ、だって貴方も16歳くらいでしょ?」
「あぁ!?流石に……ないだろ、それは」
どうも村娘がお世辞を言っているようには見えない、確かにさっきは少し身体の大きさに違和感は感じたが……
「すまないが鏡を借りても?」
「ええ、構わないけど……」
村娘は皮袋から手鏡を出して貸してくれた。
そして確認すると……
なんだこれは!?
全くの別人、しかも10代のイケメンになっている!
……まずは心を落ち着かせよう、自分自身の顔を見てあからさまに驚くなど不自然にも程がある。
「こ、これ返すよ、ありがとう」
「え、ええ……ところでさっき聞きたい事があるって言ってたけど?」
「あ、そうだったな。
まずは此処がどこなのか教えてほしい」
「此処はシュワローゼ王国のヴェステン州ってとこ、この村はアンファ村って言うんだよ。
にしても貴方自分がいるところも知らなかったの?」
「すまないが先程生き返っ……じゃねえ、気絶してたみたいで少し記憶が混乱しててな……」
どうやら私は天国に来た訳ではないらしい……
しかも全く聞いたことのない国名、これはまさか転生、というヤツだろうか……
まあ、取り敢えず怪しまれない程度に話を合わせておこう。
「てことは記憶喪失ってこと!?」
「ああ、早い話だとそうなるな」
「大変……じゃあうちにおいでよ、記憶を取り戻すまで置いたげるよ」
「えええ!?いやそれはちょっと……」
「いいから遠慮しないの!困った時はお互い様でしょ?
それに男手があると仕事も捗るからね」
「えぇー……」
転生?して1時間経たないうちにまさか女の子と同棲フラグが経つとは……
顔の良さというのはそれだけでステータスになるのが良く分かった。
まあ、しかしひょっとしたらこれはこの世界に慣れる良いチャンスかもしれない。
「私はリリ、リリ・ラングナーっていうの。
貴方名前は覚えてる?」
「ああ、名前だけなら。
エルハルト・シュタイナーだ」
「んー、じゃあハルトって呼ぶね。
私のことはリリで良いよ!」
「えっと……ああ、分かったよリリ」
「うんうん、それでよーし!」
何だかリリはリーダーシップが強いというか、逆らえなくなるような感じがした。
決して俺が女の子に弱いからとかそういうことではないぞ。
とにかくこうして謎の世界?での新生活(美少女つき)が始まったのであった。




