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仕事

向日葵

作者: 奥野鷹弘

 絶望した僕は、50キロの体重を軽く切った。少し前までは悔やんでも解決しなかった減量のに、なぜか体重とは関係ない違う悩みで1ヶ月も経たない間に5キロ減量できるなんて…滑稽だ。



 だけど今は、少しずつ心身とともに戻りつつある。



 仕事している時はやりがいを感じ、生きる意味を知った。それが楽しいと思い、自分の尽くせる限り全力を注いだりもした。

 どんなに疲れて家に帰っても当たり前のように誰かが迎えてくれたり、布団の中で眠りにもついたりすることができた。



 でもいつからか孤独になった。それは、いくら改善していてもどこかしらのミスを先輩方に注意され続いたり、訊ねたくても『それすら知らないのか』になりそうで、そして失敗してもその原因の話すら聴いてもらえなくなって…孤立を憶えていった。ある人から言わせてみれば、モラハラという…。いや、でも、僕は…。



 自分にようやく目を向けた頃には、ご飯を食べていなく、夜中にそっとひたすら何かを頬張っている日が続いてた。そして、とうとう何も解らなくなっていた。

 ただ頭がうるさく「仕事行かなきゃ。」「休んではいけない。」「ミスはならない。」「どうにかしなければ。」それが一杯で、過呼吸をしながら職場へと重たい足を運んだ日もあった。いくら職場で仮面をつけられたとしても躰は正直なもので、途中で動機に襲われたり、家に帰って布団に身を投げた時にはどうしようもない疲労感にかられた。



 いつだかのあの日、どうしようもなくて風邪薬を手にしてお酒を持ち寄った。

 とにかく眠りたかったのだ。楽になりたいわけでもなく、ただ夢を見ずに目が覚めることなく朝を迎えたかった。

 そうしてまるで3時のおやつのような感覚で、薬とお酒を口にしていった。その次の朝は、予想通りのメリーゴーランドだった。

 過去にも同じようなことをしたこともあったが、今回は軽く済んでしまったことに悔やみきれなかった。せめて給料日前でなければ、ゆっくりと眠るために睡眠薬で寝て職場へと向かったであろう。いや、そっちの方で試したであろう。


 思い返せば腕の傷も盛り上がって、無様なまま。

 なんだかとても、泣きたかった。みじめすぎるから。




 感情を無くしたと気づいたのは、それから1週間後のこと。

 幼馴染の親から「病院行けっ!」と言われたが、すぐケロッと元通りになる自分には踏み入りがたい話でどうしようもなかった。病院には行きたいが、病気ではないと思う自分もいた。ただ、どうしようもなく食欲不振で、異常睡眠、無感情、趣味や色んなことに対して無関心になって、ときに死にたくなって暴れたくないから病院へは行きたかった。



 ただ結局、休み明け起き上がれなくて、母からの連絡で上司に状況が伝わり…僕は仕事と決別した。



 前日に色んな物をなげた部屋は、なんだか現実社会みたいだった。

 きっと、誰にもわからないんだろうけど。色んなものが社会を表現していた。




 さぁ…本題を話そうかな。

 僕が仕事先が決まったお祝いにお爺ちゃんからもらった向日葵の種を、庭に植えた。今、その向日葵が僕の方を向いて大きく咲いている。僕よりも少し小さな背高だが、自分の体より重い頭を必死に大空へと顔を向けている。


 それに対して背中では、ジリジリと僕がした現道を拒むかのように太陽が焼き付けてくる。太陽が言いたいことはわかる。



 何度もなんどもこんな絶望を繰り返しているけど、僕が人より早く枯れることが出来ないのなら…向日葵には申し訳ないが水をあげないことにする。そうすることで、僕が少しでも誰かに役立てて「生きてて欲しい」という残酷な願いを叶うのなら…向日葵を犠牲にする。犠牲にして、僕は誰よりも大きな人間になってやる。



 でなければ、ここで茎を折ってしまってもいいほど。

 でも、僕は・・・ 


 僕は・・・

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