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僕の物語  作者: lui
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穴に落ちたり、段差から落ちたりした事はあるだろうか?

一度くらい誰しも経験したことがあるだろう。

僕も大学生の時に経験した。

あれは、お酒を飲んだ帰り道のことだった。

僕は田んぼに落ちた。

痛い、と思った。

それと同時に今何が起こったのかわからず気が動転したが、すぐにわかった。

しばらく痛みにもだえ、怪我はなかったことと、田んぼに水が張っていなかったことに感謝した。

そして、痛みを我慢しながら元いた場所へ這い上がった。

上がりながら何故自分がこうなったのか考えた。

あまり酔っていないつもりだったが、真っ直ぐには歩けない程度に酔っていたのだろう。

不覚だった。

後日この話を友人にしたところ

「大丈夫か?」

「怪我はないか?」

といった言葉を笑いながらかけてくれた。

そうして次に、何故落ちたのかという話になったのだった。


このように、まあ一概には言えないかもしれないが、人がどこかに落ちるとやはり最初に思う事は「痛い」ということだ。

そして次に何故落ちたのかと思う。

人に話しても同様だ。

まあ一般的な優しさを持つ人は、落下した人物の無事を確認し、その後何故落ちたのかを問う。

まあ、改めていうほどの事でもないだろう。


さて、穴や田んぼと同様、恋も落ちるものだ。

しかし不思議なことに「好きな人ができた」、「恋に落ちた」と言うとみんなはこぞって「どこが好きなのか?」「誰なのか?」と言うだろう。

また、「どうやって好きになったの?」なんて事を聞くだろう。

しかし、話を始めた当の本人は、大概の場合答えを濁す。

別に、理由があるから好きなわけではない。

「田んぼに落ちたから痛い」のと同様「恋に落ちたから好き」なのだ。

恋に落ちて、嬉しい、楽しい、相手のことが好きである、といったことで頭がいっぱいなのだ。

何故その人が好きか?というのはその後付随してくるものなので、恋に落ちてすぐに聞くのはお門違いなのである。

その上、残念なことに田んぼと違って、恋の出口を見つける事は難しい。

成就するか、フラれるか、永久に彷徨うのか。

そのため自分でも、「何故恋に落ちたのか?」という答えを見つけるのは非常に難しい。

その答えが見つかるときは恋が終わるときか、はたまた別の何かに変わるときか。

僕にはわからない。

ただ、その答えを見つけられなかった経験が僕にもある。

経験がある、と言ったが正確にはまだ答えを見つけられていないのだ。

つまり、成就せず、フラれもせず、未だ彷徨い続けている。

恋に落ちて、落ち続け、落ち着いてしまったのだ。

これは、そんな物語。

そしてこれから語るはそんな僕が恋に落ちる前の話。

地に足ついた物語だ。


僕の最も古い記憶の一つ。

幼稚園の年少の頃だから4才位だろうか。

当時の僕はいわゆる「ごっこ遊び」が嫌いだった。

必殺技を叫びながら渾身の力を込めて木の枝を振り回したりすることが苦手だった。

とても子供っぽくて、恥ずかしい行いを皆がしていると思っていた。

しかしやはり付き合いもあるので、一部の仲の良いフリをしている友達連中が誘ってきたときだけ、戦隊物のブルーのポジションでのみごっこ遊びをしていた。

何故ブルーかと言うと、ブルーはクールで無口なのだ。

だからセリフが少なくて済む。

なんなら遠く離れたところで見ていて、悪役を倒した最後に労いの言葉を掛けるだけで良い。

そうすることで僕はどうにかごっこ遊びを潜り抜けてきた。

しかし改めて書くとそんな子供もなかなかどうして可愛いものだと思う。

ひとりだけ大人ぶったふりしても無駄だぞ、僕よ。


何故そうなったのかは忘れたが、とにかく僕はある日の幼稚園の休み時間、一人で遊んでいた。

グラウンドにある山をフラフラとし、普段行かないような所を歩いていた。

まあ、広さは知れているのだが幼稚園児にとっては十分な広さのグラウンドだった。

その山の陰に木が二本立っており、そこにハンモックがかかっている。そこで僕は出会った。

Uと。

まさかここまで関係が続くとは思わなかったが、とにかく始めはこの時だった。

Uはもう一人の友人の女の子と二人でハンモックと戯れていた。

そしてどういう流れでそうなったのかわからないが、僕はそれから彼女ら二人とよく遊ぶようになった。

一番よく遊んだのは幼稚園の裏の倉庫、更にその裏で木の葉を集めていた。

そんな人気のない所で男一人、女二人で何をしていたのかと言うと、魔法を使って遊んでいた。

そう。

その時僕は確かに、魔法を目にしていたのだ。


嘘だと思うのなら好きにしたらいい。

別に誰が何と言おうと、僕は僕の物語を続けるだけなのだから。


僕も彼女達も普通だ。

何の事はない、魔法、といっても物理現象だ。

便宜上魔法と言っただけでしかない。

僕達はそれらの遊びをただ遊びと捕らえ、魔法とは認識していなかった。

しかもUではなく、もう一人の女の子の使うものを見ていた。

木の葉を集め、それに火をつけることなく暖めたり。

まあ、それくらいしか覚えてないのだが。

とにかく、なにやら木の葉を集めて不思議なことをしていたことをしていたことだけ覚えている。

しかし、その世にも奇妙な行いを見ながらも僕は他のものをチラチラと見ていた。

Uを。

その時には恋とも何ともわからなかったが、魔法よりもUのことが気になっていた。

ただ、何故か僕はもう一人の女の子と遊ぶことが多かったように思う。

それはきっと恥ずかしさからなのだろう。

好きな女の子に正直になれない。

そんなこんなでもう一人の女の子の家に入り浸り、ゲームをしたり、その子の親の不思議な何かを見たりしていた。

何かはわからないが、こう、オカルトちっくなものだ。

布団をばさばさしながら病気のインコを元気にしていた。

そんなよくわからない、面白げなものを見ていた。


しかしそれよりも僕が楽しみにしていたことがある。

Uはその女の子の向かいの家に住んでいた。

なので僕がその子の家で遊んでいるとUが遊びに来ることがある。

そんなことを楽しみにしながら、なにやら奇怪な女の子と戯れていたのだった。


あるときUは言ったのだ。

「わたしすきなこできたんよ」

四歳の子の「好き」とはどこまで本気なのかわからないが、僕は落胆した。

何故ならその後すぐにUは僕ではない男の名前を言ったのだから。

その時の僕は失恋したことで落ち込み、悲しんでいた。

そうすることで僕はどうにか失恋を潜り抜けてきた。

しかし改めて書くとそんな子供もなかなかどうして可愛いものだと思う。

諦めたふりをしても無駄だぞ、僕よ。


このようにして僕の初恋は幕を閉じた。

幕は閉じた。

幕と言うよりも、蓋かもしれない。

恋の蓋が閉じた。

この時僕は自分がどこにいるのか、何が起こっているのか、全くわかっていなかった。

既に僕は恋という「穴」に落ち、その唯一の出口が塞がれてしまったこと。



そして何年もこの恋の「穴」から抜け出せず、そもそも落ちている事に気づかないままになるのだ。


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