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僕の物語  作者: lui
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部活は、ひどく憂鬱だった。

何故なのか。

楽器を弾くことが嫌いなのではない。

部長に嫌われているのだ。

まあ、彼女にしたことを考えるとそれは当然である。

大いに僕が悪い。

しかしそれに加えて副部長の奴も一緒になって僕のことを嫌う必要は無いのではないかと。

副部長は部長が僕を嫌ったことをきっかけに僕を嫌いだした。

副部長にも悪い事はしただろう。

いや、副部長にこそ悪いことをしたのかもしれない。

結果的に僕が悪であるのは変わらないようだ。

それを、今、この物語を書くに至って気づいたのはあんまりにも遅すぎた。

まあ、いい。

過ぎた事は悩んでもしょうがない。

しかし当時の僕は部活やその人間関係において悩み、苦しみ、その結果助けを求めた。

僕のことが好きであり、僕は特別好きだったわけではない。

Aという女の子に。



「なぜTがやたらに女の子にもてるのかがわからない。」

僕の男の友人達は口をそろえて言う。

しかし「もてる」と言うのは嘘だ。

僕は人よりも少しだけ、人からの好意に気づきやすいのだ。

端的に言うなら「好かれていることがわかる」。

自惚れているように見えるだろう。

僕もそう思う。

しかし、今までの人生の中でわかったことである。

問題なのは「好かれていることがわかる」というだけである。

つまり、一方的に愛されていることはわかるが、僕がその人のことが好きなのかはまた別問題なのだ。

好きでもない相手に好かれていることがわかる。

でもまあこれは便利な特技で、上手い具合に利用させて頂いたことがあるのもまた事実だ。

そして、僕はAという女の子に対して人生で初めてこの特技を活かす。



「ずっとTには憧れていた。だから、付き合ってくれて嬉しい。」

こんな感じのことをAはよく言っていた。

Aはどんくさい女の子だ。

良く言えば天然、悪く言えばただのアホだ。

その上痛々しい発言を割と普通にするようなタイプ。

しかしそんなAと部活に疲れ果てていた僕は付き合いはじめた。

付き合ってわかったが決して悪い子ではない。

むしろ良い子だ。

人あたりも良く、優しい。

ただ、少し人より子供っぽいだけだった。

高校生の当時、Aと付き合ったことで僕はいわゆる「学生らしい青春」を謳歌していた。

そうすることで部活の疲れを癒していたように思う。

事実、もともとの目的はそれだった。

苦しく悩んでいたところを助けてほしかった。

しかしそのために女の子を利用したのも心が痛む。

これは本当のことだ。

僕は別に悪人なのではない。

言い訳がましいが。

ただよくあることだろう。

「失恋で傷心していることをつけ込まれて付き合ったが結果として幸せ」、みたいなパターン。

僕の場合は「部活に疲れて」だけども。

そして何よりも、みんなが無意識ですることを僕は意識的にしただけだ。

「部活で疲れているところをつけ込ませさせた」。

倫理的に微妙なスタートは別として、結果は幸せだったのだ。

お互いにね。



「そんな幸せも長くは続かなかった」というのは常套句すぎるが、まあそんなところだ。

別れる理由は色々あったが個人情報なので伏せよう。

簡単に言えば家庭の事情だ。

長々話したがここからが本題。

僕はAから学んだことがある。

それは「心は移ろうものである」ということだ。

Aはあんなに好きだった僕と別れてすぐに新しい彼氏を作った。



この事実は割と衝撃だったのだ。

「え、何それ。あんなに色々あったじゃん。家庭の事情とかめっちゃ話したじゃん。」

そんなことを思った。

しかし同時に、僕がAから離れるとAは自殺するんじゃないかとか考えていたので、それは杞憂であることがわかりホッとした。

でもそれにしても早い。

女心と秋の空とは言うが、こんなに早いとは。

具体的には一ヶ月だ。

「付き合ってるときから浮気してたんじゃない?」

と思うかもしれないが、ほぼ毎日会ってたのだからそんなことは無いだろう。

たぶん。

今となっては闇の中だが、そんなAは無事結婚したらしい。

まあ、うん。

おめでとう。

不思議な気分だよ。

本当に。



「心は移ろう、だからどうした?心の傷が辛くて悩んでいる人もいるだろう。」

そう、トラウマだったり心の傷を負うこともあるだろう。

だからこそ、心を移ろえるようにして別れることもまた技術なのだ。

滅茶苦茶な別れ方や、最悪な浮気をするべきではない。

恋愛とは紳士的であるべきだ。

まず「相手」に敬意を払う。

そして「相手のことが好きな自分」に敬意を払う。

人と付き合う以上、相手のことを愛してやまず、一時も忘れられなかった時間が少なからずあるはずだ。

そんな思いを抱いた自分をむげにしてはならない。

別れるときまで紳士的に。

「今相手と別れたい自分」ではなく「相手のことが好きだった自分」を大切にしよう。

そして別れるその時まで相手に対して彼氏である最低限の礼儀を。

相手の心は、相手自身から別れを切り出さない限り確実に乱れるだろう。

「相手の心を傷つけない」ではなく「傷ついても癒えやすい様に」。

達人が切った切り口は美しく、すぐにでもくっつくのだ。



恋愛指南の文章だったっけ?

いいや、これは僕の物語だ。

物語は続く。

AはUの親友だった。

浮気を持ちかけるほど僕のことが好きだった女の親友と、付き合った。

付き合っていた。

Aと別れた数日後、その日は雪だった。

普段自転車通学で高校に向かう僕は途中で自転車が滑ることを恐れ、自転車を押しながら高校に向かっていた。

後ろから女生徒が来る。

「おはよー。雪やばくない?Tも押してるんだね。」

2年ぶりの会話。

あの時と違い二人とも楽器はなく、二人とも自転車を押している。

「おはよ。やばいね。雪が積もるなんていつぶりだろうね。」

「小学校位からかな?五年生の時の。」

「ああ、先生が授業休みにして遊ばせてくれたな。」

「そうだったねー。あの林とかも雪積もってるよー。」

「そうだね。7面くらい、終盤で出てきそうな光景だね。」

「いや、意外と2面くらいの序盤でてこずるパターンだよ。」

そんな会話が2年ぶりでなされた。

お互い、何も深く入らない。

僕はUにひどいことをした。

Uも僕のことを嫌い、2年間、同じ学校や同じクラスになっても話さなかった。

それでも、こんな会話。

ああ、こんな瞬間がずっと続けば良い。

今度こそ、許されるなら、Uと付き合おう。

そんなことを考えて。

雪の振る町を僕とUは歩く。



でもやはり、「人の心は移ろうものである」。



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