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僕の物語  作者: lui
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Uへ


こうやって小説を書きはじめるのも何回目になるのか。今回もきっと最後まで書けない。それはわかっているけど、書いてしまう。

そんな物語。

何か新しいことをはじめようと思う。

いざ実行してみる。

長続きしない。

長続きしないといっても10分や長くて30分しか持たないのはいかがな物なのか。

僕の友人は言う。

「私ほど中途半端な人間はいない。」

しかし僕ほど中途半端じゃないと自分で思っていながらも、端から見たらなんともまあ中途半端な人間はなかなかいないのではないかと思う。

そんな中途半端な僕の、とりとめも無い話を少しの間聞いてほしい。

これは、僕の物語。


中学二年生の夏。

吹奏楽部に入っていた僕は当時好きだった女の子(仮にUとしよう。)と一緒に学校から帰っていた。

Uの家は学校から遠く、僕の家は学校から近い。

だからいつもUとは僕の家の前まで一緒に帰り、そこで別れるのだ。

ただまあ、いつもUと二人だったわけではない。

他の友人がいることがほとんど常であった。

だから、あの暑い夏の日。まだ夏休みが始まって間もない日。

僕はとても嬉しかったのだ。

Uと。

二人だけで帰れたことが。

それがどれだけ大切なものだったのか。

あの時の僕は知る由も無く、今の僕には知ることしかできない。


その時僕とUは二人とも夏休みに向けて自分の楽器を持って帰っていた。

吹奏楽部の部員は家で楽器を吹こうが吹くまいが、長期の休みには自分が普段吹いている楽器を持って帰るのが常である。

何故持って帰るのか。

真面目な奴は家で練習する。

不真面目な奴は持って帰らないと先輩の目が怖いから持って帰る。

たいていこの二つの理由のどちらかであるが、僕はそれらとは異なる、三つ目の理由があった。

Uは先ほど述べた理由のうち前者にあたるような性格の人物である。

つまり、「家で楽器を吹いて上手くなるために持って帰る」のである。

そんなUが好きな僕は「好きな女のこと同じ事をしたい。少しでも好かれたい。」、そんな理由で楽器を持って帰ったのだった。

われながら不純極まりないが、男なんてそんなものだろう。


さて、二人とも楽器を持って帰っているのだが、問題があった。

二人とも楽器が大きいのである。

楽器とケースで10kgはあるだろう。

そんな重さの楽器を、あろう事か僕はUと話したいという理由だけのために徒歩で持って帰っていた。

しかし同様にUも楽器とケースで8kgはある楽器を歩いて持って帰っていた。

Uは何故歩いて持って帰っているのかと言うと、「親が仕事」だということだ。

更に言うとUは自転車通学である。

しかし中学生の女の子が8kgの楽器を持ちながら自転車をこぐことなどできようはずが無い。

つまりUは「8kgの楽器を持ちながら」なおかつ「自転車を押しながら」更に「遠い家路」を帰らないといけなかった。

学校を出る直前、そんな彼女を見つけた僕が発した言葉はこうだった。

「俺が自転車を押してあげるよ。俺も自分の楽器があるけど、俺の方が力持ちだから大丈夫だよ。」


そういうわけでぼくは「10kgの楽器を持ちながら」なおかつ「自転車を押しながら」更に「遠い家路」を帰らないといけなかった。

遠いと言ってもUの家ほどではない。

普段なら歩いて10分ほどの距離だ。

しかしやはり辛い。

重い。

楽器が重い。

自転車はバランスをとらなければならなく、辛い。

少し崩れると自転車を倒してしまう。

しかもその自転車は自分の自転車ではなく、好きな子の自転車なのだ。

それはまずい。

少しでも嫌われたくない、と思う僕にはそれだけはできない。

そんなわけで余計に集中力を使い、辛い。

ああ、後何メートルあるのだろう。

好きな子のため、頑張ろう。


僕の家に、着いた。

いつも僕とUが別れる場所だ。

「ここまで、重いのにありがとう、ばいばい。」

Uは僕にそう言い、僕から自転車を奪い、颯爽と僕の前から立ち去ろうとする。

そこで、僕は、一生後悔するのであろう言葉を口にする。

「おう、ばいばい。」

その後、僕は家に自分の楽器を持って入り、リビングに置いた。

手を洗ってリビングに戻ると、母親がいた。

事のあらましを母親に伝えると、母親はこう言った。

「でもUちゃんもこれから家まで遠くて大変ね。家までおくってあげたら良かったのに。」

その時、僕はこう思った。

僕は暑い中頑張ってUの自転車をここまで運んでやったのだ。確かに、手伝ってやりたいが、僕も疲れてるし、それは勘弁してくれ。きっと後はどうにかするさ。

僕は、確かにこう思った。


僕が後悔するまでにそう時間はかからなかった。

具体的には30分位しかかからなかった。

Uの家は僕の家から歩いたら30分位だろうか。

つまり、僕の後悔は役に立たず、全くの手遅れだったのだ。


Uが、僕以外の男と付き合ったのはそれから一週間もたたない頃のことだった。


「Tが彼女と仲良さそうに話しているのを見ると、羨ましい。Tはこんな顔するのか、こんな風に笑うんだ、なんて事を思う。Mに対しても思うけど、やっぱりTは特別だと思う。こんなことをいってごめん。後悔するし、見たなかったら見なくていい。書きたいだけだから下に白字で書く。見たくなかったら、ほんとに見なくていいから。」

Uからこんなメールが、僕が他の女性と付き合った後のある日届いた。

Tとは僕のことである。

MとはUが当時付き合っていた男の名前だ。

独白のような、叫びのような、メールの終わりの部分に白い字で僕へのメッセージが書いてある。

それは、見ても見なくてもいいとまで言われたメッセージ。

でもUがどうしても僕に伝えたかった言葉。

きっと、僕がずっと聞きたかった言葉。

マウスでメールをドラッグすると。

「私、やっぱりTのことが好きだ。Mと付き合っていて申し訳ないと思うけど、Tのことが好きだ。」

そこには、そう書いてあった。


僕には彼女がいる。

Uにも彼氏がいる。

それでも、僕の返答は、何年も前から、決まっていた。

「俺も好きだ。俺も付き合っているけど、Uのことが好きだ。」

そう、言ってしまった。

言いたかった事をついに言ってしまった。


そうして、僕は、少しずつ人としての道を踏み外す。

恋愛体質。

恋愛至上主義者となったのだ。


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