七夕の話の様で七夕の話じゃない
暗い話になります。
少年は森にいた。
少年は泣いていた。
自分がいなければ彼女は幸せになれたかもしれない。
その思いが、この日は特に強くなる。
あの日から年を取ることが出来なくなってしまった。
死ねればどれだけ楽になれるか。
だが少年は死ねなかった。
何故なら少年は呪われてしまったから。
神の娘に見初められ、神により不老不死となり、夫婦となった。
しかし、イチャイチャしすぎて仕事をサボった結果、神の怒りを買い、この場所、『箱庭』へ送られてしまった。
老いる事なく、死ぬ事なく、ただ無限に等しい時間を『箱庭』で孤独に過ごす。
故に、この不老不死を呪いと呼ばずに何と呼ぶか少年にはわからなかった。
今日は年に一度の状況確認の為、神界の者と顔を合わせる事となっている。
時間が来ると、森の湖に彼女の姿が映る。
「罪人No.77。」
無機質な声で今の自分の名前を呼ばれた。
「どうやら問題はないようですね。ではまた一年後に確認を行います。」
そう言うと、彼女の姿が湖から消えてしまう。
昔は表情豊かで、いつも笑顔であったが、神の怒りを買ってから、彼女は私との記憶を消され、神の操り人形となっており、私の事を、神界にて罪を犯した罪人と認識している。
会えるのは年に一度。
それも彼女とは次元の狭間を挟み、わずか数秒確認が行われるのみ。
まるで七夕の彦星と織姫の様だと思いながら、私は涙を流した。
彼女は無機質な声でありながら、私を見て涙を流しながら、視線を逸らしていた。
あれは私と夫婦だった時の癖で、言いたい事があるが言えない時は、よくそうしていた。
記憶が戻ったのかどうか、私にはわからない。
それでも私は、昔の彼女を思いだし、孤独に『箱庭』で眠るのであった。
本来なら、連載中の作品の閑話(?)として七夕関連の話を作りたかったのですが、どちらの作品もキャラあまり出ておらず、作るのは不可能と考え、短編を作ろうと考えましたが、途中で消して書き直しを繰り返した結果、こんな時間になり、とりあえず書きたかったシーン(年に一度だけあえる)を作り、無理矢理投稿しました。