結&離
16本目
「離婚を前提に僕と結婚してください!」
「……はい?」
「ありがとうございます!」
「Yesじゃねぇよwhatだよ」
「いえ、はい、いきなりこんなこと言われて戸惑うのは分かります」
「いきなりなのに戸惑う余地がなさすぎることには戸惑ってる」
「ですよね!」
「分かってないだろ絶対」
「はい!」
「……返事がいいことを褒められて育ったことだけは分かった」
「もう僕のことを理解してくれたなんて。ありがとうございます!」
「したくてした訳じゃないんですけど」
「そうなんですか?」
「そもそも。さっきから気になって見ちゃってたんだけど。私で何人目?」
「ええと、17人目ですね」
「駅前で手当たり次第に何してるのかと思ったら結婚の申し込み?」
「はい!」
「いや返事で押し切れると思うなよ?」
「はい!」
「……もういい。酔ってる?」
「そんな!こんなこと酒の勢いでしていいことじゃありません!」
「お前今、多分結構な数の既婚者敵に回しただろ」
「え、そうなんですか?」
「知らんけど。てかそもそも私たちお互いのことなんにも知らないでしょ?」
「初めはみんなそうですよ!」
「その強メンタルは確かに興味がないとは言えないけどさ」
「はい!」
「今日17番目に声掛けた初対面の相手に言うこっちゃないわ」
「でも、僕間違ったこと言ってますか?」
「間違ってなきゃいいってもんじゃないのよ」
「難しいですね」
「お前がな」
「分かりやすいって言われるんですけどね」
「絶対それ褒めてないから」
「すごい、もう僕より僕のこと理解してくれてるなんて」
「あぁ、うん、分かりやすいのは認める。犬か」
「よく言われます!」
「でしょうね。いや、あのさ」
「なんでしょう!」
「ほんとにそもそもなんだけど。なんで離婚前提なの?」
「ずっと会ってない父から連絡が来たんです」
「え……あ、早く結婚しろとか?」
「いえ」
「病気で余命幾ばくもないとか?」
「縁起でもない」
「ごめん。……これ私謝る必要ある?」
「僕謝ってって言いました?」
「ごめん。いやめっちゃモヤるんだけど。で、結局なに?」
「戸籍課に配置換えになったそうで」
「戸籍課?ああ、婚姻届とかの」
「はい。なので、驚いた顔が見たいな、……って。えへへ、おかしいですよね」
「……だからさぁ」
「はい?」
「驚かせりゃなんでもええ訳ちゃうねんてホント!第一!」
「第一?」
「それなら結婚だけでいいじゃない」
「してくれるんですか!?」
「するかボケ」
「しゅん」
「常識ないのは分かるけど、常識的に考えてこの流れで結婚なんてする訳ないのは分かるでしょ?」
「はい」
「じゃあなんで」
「それはだって」
「なに」
「驚かせるためだけに結婚とかありえないじゃないですか」
「え、あ、はい。それはもちろん。いや、なら嘘でいいんじゃ」
「嘘はよくないです」
「それは仰る通りなんだけどさぁ」
「だから、サプライズが成功したらすぐ離婚するべきかと」
「いや、それでバツイチは割に合わなすぎる」
「はい。ですので、慰謝料も用意してます」
「……桁は?」
「7」
「さぁ、行こうか」
「え、どこに?」
「決まってる。戸籍課。だろう?」
「はい!」




