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夕べの夢と過去の灯篭

作者: なと

座敷の中で蠢くものに赤い蝶が止まる

何処かで鈴の音が鳴って夢は終わる

旅人は荒れ野の上で秋風を吹かせながら

ポケットから覗き込んでくる赤い目玉に

煙草の煙を吹きかけた

桜貝は海の中で常世を夢見る

時計の針がやけに大きな音に聞こえる

仏間には線香の香り縁側で季節外れの風鈴の音

何処へ行こう

人差し指が洗面所に落ちていた

だいぶ先が黒ずんでいっぱい使ったんだろう

寝ている間に家主から逃げ出した

そっと寝ている父の指を見てみると

やっぱり人差し指はこっそりなくなっていた

人差し指も自由になりたいんだろう

そう思って洗面台でしっかり洗って

玄関に干しておいた

父は気が付かない







独りぼっちになると聞こえて来る狐達の噂話

何故かかくれんぼでいつも物陰から見つめて来る子供がいる

夢の中で星屑の入った缶詰を食べたっきらきらサイダーの味

風は遠くから嬰児の泣き声を連れて来るあの町を飲み込むために

今僕はアンモナイトの声を聞くために耳を澄ます

古代の旋律がオーケストラ






夕魔道は猫の足音微かに仏間から

仏滅の日に何故か神社であやとり遊び

狐の妖怪になりたくて

真夜中神社の裏で縦笛で祭りのお囃子

あの子一人だけ右の人差し指の爪が真っ赤いんだ

前世で狐を殺した罰だって誰かが言ってた

夕暮れ刻はスキップをしたくなる街がある

風に吹かれてシャボン玉が何処かから






夏の欠片を探して今押し入れの中の

風の社に通じる闇に手を伸ばす

僕はどうしてこんなに出来が悪い

街角のお地蔵様にこっそり牡丹餅供えたら

翌日遠くの町からやってきたという

坊主頭の聡明な同級生が増えた

夏の影法師をこっそり冷凍庫で保存していたから

炬燵の中ですっかり溶けた夏と

町の噂話







宿場町の化けの皮をはがしたくて

こっそり町並みの影を虫取り網で掬いあげたのさ

嬰児の声が風に乗る街には

こっそり櫻を盗む怪盗がはびこる

僕はね実は死んでいるんだよ

人影のない公衆電話から聞こえてきた謎の声

胡散臭い噂話が仏間からひそひそと

コードの切れた黒電話で

宇宙の端っこに連絡だ







幽霊船は夜の宇宙を旅してる

そっとまぶたに落ちる夕焼けが涙みたいに暖かい

粉雪がこころのなかにまで入ってくるよ慰めるように

人生という名前の道路標識には分かれ道がここのつもある

あんまり寒くて、軒の下では幽霊まで震えてる

何故か通り過ぎた君の香りが気になる静かな雪の匂い






人生の灯りを灯すために

闇夜の街灯を眺めに旅に出る

夜行列車に乗って

ひたすら星空を追いかける車

涅槃の安らぎを抱えた蓮根畑の白い花が

いまぽんと音を立てて、咲いた

コオロギの鳴く田んぼのあぜ道には

曼殊沙華があの世への道をただ教えている






ああ、もうすぐ朝が来てしまう…

闇の中で楽しむ悪い遊びみたいな

ネットお化けたちの群れ

朝靄の中に掻き消えてしまう人生への問い

孤独の影法師とは此処に在ったのですね

眠れる布団には哲学が宿り

温泉の中には天体の宇宙

どこまでも広がる闇の中で

子供たちは踊る






微かな寝息のする仏間を通り抜け

ずっと雨の降りやまぬ庭を見つめる

螺鈿で出来た蝸牛の宝物は箪笥の中でぶつぶつと独り言

此処は不思議で出来た家なのです

遠くの海の潮騒がこの三半規管の中で鳴りやまず

三味線の音が隣の人の気配のしない部屋から聞こえてきます

磯の香りが過去を思い出させる座敷牢






夜風に吹かれて見知らぬ街へ行こう

夢の中身をばら撒いたようなおはじきビー玉遊び

夜の神社は呼んでいる夜寝ない悪い子を

お囃子が聞こえてきて薄暗い夕暮れを散歩する

浮遊してゆく心が御肉屋さんで500円で売られている

まこと此の世は不思議なもので

寂しさを運んでくる夜の風を

そっと匣の中へ







見知らぬ駅で幸福行きのチケットを買った

夜は随分私の知らない顔で静けさを運んでくる

街角で風は孤独を運んで

いつの間にか懐の中に這入り込む

街灯の灯り、車のテールランプ、信号機の赤青

美しい光に照らされて体を浄化してゆく

誰だって孤独は嫌だから

見知らぬ街で人の声を聴き

潮騒の夢を見る







幽かな調べに耳を傾ける夜の音が聴こえる

暗い顔を鏡で見ながら

ひそかに呪文を唱える過去が消えないように

手の中で消えそうな魂を詩人へと渡す

明日の導きになりますように

夢の中の雨は大切にあの抽斗に眠る

夜の闇が仏間から漏れいずる幽かな寝息と共に

遠くで汽笛が鳴っている

今、呼ばれたような





夕べの夢が、壊れかけのテレビに映っていた

夢とはいつも寂しげな風に吹かれて過去の水槽を漂う影

小道を歩いているとついてくる孤独は

どんな顔をしているだろう

振り返ったことがないから分からないと

影法師に手を振る夕暮れ時

冬の風はただコートの内側に孤独を送り込む仕事をしている

そっと息を






街の帳が下りる頃

夕焼け魔人は水琴窟から姿を現す

夜空の月は疲れた人々に優しい光で包み込み

座敷の裏では黒い影が手招きしている

地獄の沙汰も金次第

辻占いの御婆は街灯の下でぽつんと

暗黒からの逃げ方を伝授する

仏壇には花を切らしてはならないよ

御先祖を大事にするんだよ

夕暮れに線香の香り







屑籠の中に過去が隠れていた

夜の海に月を浮かべると

夢ばかりが押し入れから転がりだしてくる

そっと仏壇の扉を閉じると

中で仏陀像が御供え物の蜜柑をしゃぶるから

そっと海辺で拾ったガラスの欠片に

見知らぬ真言が彫られていた事は内緒

三日月は詩人の心を乗せて朝まで運ぶ

古い屋敷の世迷言







町には秘密が眠っている

陽が落ちて子供が眠る頃その胸の心臓の部分に

仏壇の隅にある真言の文字を知らないふりをして

仏像のパズルなんて誰が買ったんだ

一部分だけ真っ赤に染まっている

神社に行って鳥居に赤い紐を掛ける

子供の頃出会った狐面の人を探して

夕べのたましひを過去の瓶に閉じ込める







世の中の喧騒を忘れたかの様な奥座敷には

隠れ家の様な古い刻が眠る

昔の人の意識だけが眠る仏壇に饅頭を供える

仏壇の仏様は黄金色に輝き

未来はないあるのは過去だけと秘密の祝詞を唱える

夢を見ているのだ

あの神社から子供達のはしゃぎ声が聞こえる

さざなみの音が聴こえる

山彦のため息も聞こえた







悲しい時は仏壇に白菊を飾る

指の合間から白砂が零れ落ちてゆく砂時計のように

刻が止まれないように人生も止まらないのだな

過去に向き合った時夢の中を生きているような気分になる

弟は彼岸花を買いに地獄に向かったまま帰らない

座敷には忘れたはずの幸せが眠っている

仏壇に飾った菊は眠っている







思い出だけが凡てじゃない

昨日の体温がお風呂の石鹸に残っていた

押しては返しのさざ波が子守歌のように

綺麗な石の欠片には永遠が眠っているんだって

町の子供達の内緒話には赤い糸が絡んで鳥居地獄

夢ばかりの過去には遠い汽笛が似合う

旅人は懐に赤い掌を隠している

街は青い顔をしていて眠る魂







遠き過去を旅する旅人がいる

今日も風を頼りに右往左往とあちこちを

古きものばかりを集めてしまう

そのまなこは遠い世を見つめている

こがねが実り秋深まり

月の欠片をそっと神社の賽銭箱へ

明日も荒れ野の夢が見られますように

町は冷たい風が吹いてきた頃

浜辺には冷たい魚が打ち上げられ

夢ばかり






座敷の中で蠢くものに赤い蝶が止まる

何処かで鈴の音が鳴って夢は終わる

旅人は荒れ野の上で秋風を吹かせながら

ポケットから覗き込んでくる赤い目玉に

煙草の煙を吹きかけた

桜貝は海の中で常世を夢見る

時計の針がやけに大きな音に聞こえる

仏間には線香の香り縁側で季節外れの風鈴の音

何処へ行こう









夏の欠片を探して今押し入れの中の

風の社に通じる闇に手を伸ばす

僕はどうしてこんなに出来が悪い

街角のお地蔵様にこっそり牡丹餅供えたら

翌日遠くの町からやってきたという

坊主頭の聡明な同級生が増えた

夏の影法師をこっそり冷凍庫で保存していたから

炬燵の中ですっかり溶けた夏と

町の噂話

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