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「RPGパラレル・パラドックス」  作者: しんTAKA


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第十話 「As is ありのままに愛せたら」

愛する人を奪ったのは、自分自身だった。

【フェーズ5(続き)】


ユキノが俺と付き合いだしてから気づいたことだが、一緒に買い物して、食事して、一緒に寝て、安心はできるのだが、どこか一箇所、入れないところがあると思っていた。ユキノは、俺に自分の過去のことは一切、言わなかったのだ。

俺は、何度か聞こうとしたが、その度に、はぐらかされた。それで俺はユキノが言いたくないなら無理に訊くのはやめようと思い、訊かなくなった。

でも、ユキノは賢い女性。俺が何も訊かないことが『崇の優しさ』だと理解していて、それに甘えておくこともできたのに、ある日、


「崇が自分の過去を教えてくれたのに、私だけ言わないのはフェアじゃない」

と言って、話をしてくれた。


「…………」


彼女の話を聞いて、俺は自然と涙が溢れていた。

ユキノはびっくりして、


「崇? 崇、大丈夫?」


と言った。

俺はなんと言えばいいかわからなかった。


「私のこと、嫌いになった?」


俺は首を振った。何回も強く首を振った。

ユキノが今、言ったことを忘れたい? 消し去りたい? 許せない?

いろんな感情が俺の首を振らせた。

ユキノは慌てて、


「崇、ごめん、やっぱり話すんじゃなかった。崇がこうなること、わかってたのに、ごめんね」

「いいや、教えてくれて良かったよ。ありがとう。これでユキノと秘密なしで一緒にいられるよ」

「ほんと? 嫌いになったでしょ。こんな私のこと」

「嫌いになんかなるわけない。ユキノは何にも悪くないじゃないか」

「いいえ、私には、きっとそうなってしまう部分があるのよ」

「いや、だからそれは、ユキノのせいじゃじゃなくて……」


と言いかけた俺の声を遮るように、


「そうなのよ、私の中にはそういう部分があるのよ」


と強い口調で言った。


「…………」


俺は言葉を失った。

ただ、目の前にいる女性の、その背中が小さく見えるほどの哀れさを感じて、俺はユキノを抱きしめた。

ユキノはその腕を振り払おうとはしなかったが、諦めたような遠い目をして俺に抱きしめられるままになっていた。




【フェーズ6】


「何、考えてるの?」


陽子のその言葉で俺は我に帰った。


「え、もちろん、陽子のこと」

「また~、調子いいんだから。本当は恵理さんのこと、考えてたんでしょ」

「いや、ほんとに陽子のことだよ。……辛かったよなって」

「崇……、もうやめてよ、そんなこと言うの。思い出して辛くなるじゃない」

「あ、ごめん。辛くさせようと思ったわけじゃないんだ。ただ、自分がそうだったらって思ってしまったから……」

「……そうね、崇はいつもそうやって相手の気持ちを考えてくれるもんね。ごめんね」

「いいや、俺こそ、軽率だったよ。ごめんな」


俺は陽子にそう言った。しかし、本当に俺が考えていたのは、ユキノのことだった。ただ、ユキノの過去が陽子とあまりにも似ていたので、その偶然性について物思いにふけってしまったのだ。


(陽子の過去のことを思っていた)


そう言ってしまったのは、ユキノと似た境遇の陽子と一緒にいると、違う世界から来たのに、そのことを隠している自分がだんだん辛くなってきたからかもしれない。陽子が何の疑いもなく俺を見つめて微笑む顔、俺にそんな秘密があるなんて、微塵も感じていない。


(いや、こういう俺だって、こんな状態が本当のことだなんて、今でも思えない。それをどう信じろというのか)


しかし、このまま黙っていたのでは、陽子に申し訳ない。俺は意を決して、陽子に声をかけた。


「あのさ、陽子」

「何?」


そう陽子が言って俺の顔を見た瞬間、目と目が合った。


「…………」


言葉が出ない。

そうだった。陽子と目が合うと言葉が出なかったんだった。それまで俺は陽子と話す時は目が合わないように自然と気をつけていた。でも、今は不用意に目を合わせてしまったのだ。


「何?あ、また、口パクパクやってる。また口がきけなくなったの?もう、せっかくいい雰囲気だったのに、すぐふざけるんだから」


俺は視線を外して、


「ごめん、陽子があんまり綺麗だから、声が出なくなっちゃった」

「またふざける……。ふふ、崇、キスしよ」

「え?」

「いいじゃない。たまには」

「たまにはって陽子、お前……」


と言いかけた俺の唇に陽子の唇が重なった。

陽子はそのまま俺を押し倒し、二人はソファへ倒れ込んだ。

俺は慌てて唇を離し、


「陽子、待てよ。お前、大丈夫なのか?」


と言った。


「大丈夫よ。た・か・し~」


と言って再び、陽子の唇は俺の唇を塞いだ。


(ほんとにいいのか? 俺は陽子を抱くのはじめてだ。陽子はもちろん、もうひとりの俺とそういうことしてるだろうから、はじめてじゃないんだろうけど、俺にとってははじめてだ。これは許されることなのか?)


そんな感情が頭でぐるぐる回りだした。と同時に、


(これがパラレルワールドだとすると、ユキノも今頃、もうひとりの俺とそういうことしてるかもしれない)


と気づいた。

すると、自分であるはずの『もうひとりの俺』に対して、俺は激しい嫉妬心を覚えた。


「崇~、早く~」


陽子の甘い声が、俺の理性を完全に狂わせた。

『もうひとりの俺』に対する嫉妬と、頭に浮かんだユキノの姿を振り払おうと、俺は陽子の体を激しく求めた。



♪『As is 〜ありのままに愛せたら 』


何故? 恋は不意にときめく

いつもと違うあなたの

瞳に映る思慕おもい

そのまま受け止めたいのに


言葉は嘘をなぞるだけ

戸惑うあなたのくちびる塞いで


ああ もっと  ありのままに

もっと 自由に愛せたら

ああ もっと  口づけて

もっと あなたを抱きしめて



吐息に心は震えて

彷徨う迷路に堕ちたふたりは


ああ そっと見つめ合い

そっと体を重ね合い

ああ そっとくちづけて

そっと 一つに溶け込んで


ああ もっと  もっと 

何もかも棄て去って

ああ ずっと ずっとこのまま

ありのままに愛したい

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