クエスト達成報告とお勉強
その後、30分ほど戦闘を続けたアプリコット。流石にそれだけ続けると、気になることも出てくる。
(《雷》スキルに関わるアーツが生えてきてない。最初に属性スキルとして選択したのに。……ということは、使うための何かが足りてない?)
チュートリアルで属性スキルが使えない時点で違和感に気づいてもよさそうなものだけれど、アプリコットは魔法が楽しくて気づいていなかった。
(これは一度調べてみる必要があるかも。それに長時間戦闘したし、ここらで気分転換したい。まあ、どこで調べられるかなんて分かんないけど。)
アプリコットは一度街に戻ることにした。なんとなく街の中央にあるポータルから、来訪者ギルドに向かう。サービス開始初日だし混んでるかなとアプリコットは思っていたが、中はほどほどに人がいる状態であった。
(そういえば、公式放送でなんか言ってたっけ。)
動画配信サイト【イーチューブ】の公式放送での運営の発言を思い出す。
「『いっぱいの人が1つの施設に集まったら混雑しませんか?』というご質問ですが、ご安心ください。当ゲームではそういった施設に行く際には一定の入場組数毎にサーバー別に振り分けられます。」
それはさておき、せっかくギルドに来たし、クエスト達成報告でもしておこうとアプリコットは思った。ブルースライムを倒しまくった結果、納品依頼を達成できるだけの〈スライムドロップ〉が集まっているし。ちなみに、同一素材であればインベントリの枠は圧迫されない。
受付へ向かうと、カウンター越しに茶髪女性から声をかけられた。
「来訪者ギルドへようこそ。当ギルドへはどういったご用件で?」
「えっと、クエストの達成報告をしたくて。」
「わかりました。それでは、こちらの水晶玉に手をかざしてください。」
「えっと、こうですか?」
アプリコットがカウンターにある水晶玉に手をかざすと、水晶玉が淡い白色に光り始めた。
「アプリコットさん。現在受注中のクエストは『〈スライムドロップ〉×10の納品依頼』ですね。それでは、スライムドロップを出してください。」
(なるほど、この水晶玉で情報を読み取るのか。)
と推測しつつも、アプリコットはあることを尋ねる。
「あの、あるだけ納品することは可能ですか?」
(常駐依頼なら、またクエストを受注して納品できるんだろうけど、それは面倒かも。)
「構いませんよ。」
ありがたいことにOKが出たので、アプリコットはインベントリから〈スライムドロップ〉を30個提出した。
「確認いたしました。それでは報酬をお支払いいたします。ステータス画面をご確認ください。」
そうすると、ステータス画面の所持金の欄が|3000G《最初の所持金》から3300Gになっていた。これにてクエストは完了だ。
「ありがとうございました。それから、属性スキルについて知りたいんですけど。」
お礼すると同時に、アプリコットは疑問をぶっちゃけた。
「でしたら、2階の蔵書スペースに向かわれるといいですよ。初心者向けの本が置かれています。」
「ありがとうございます。では失礼します!」
再度お礼の言葉を言って、アプリコットは足早に2階へと駆け上がった。
蔵書スペースに来たアプリコット。そこから、目的の本を探す。蔵書自体は多くなく、すぐに『属性基礎』という本を見つけることができた。内容は以下の通りだった。
属性スキルはその属性に対する魔力の変換資質を持つ証である。
先天的に持つ者以外は、その属性について自身の魔力が深く知ることで入手できる。
先天的に属性スキルを持つ者は、無属性の魔力放出が苦手になりやすい。
――どういうことだろう? 私は既に雷魔法を使えていたということ? アプリコットは読み進める。
属性に染まっていない状態を無属性という。
魔法の基本である《マジックボール》がその代表例だ。属性スキルを通すと、それが《ファイアーボール》等に変化する。
――つまり、私は《雷》スキルを通して魔法を使えていないということ?
属性スキルを持つものは、自然現象を操ることができる。
例えば、《火》属性スキルを持つ者であれば、自然現象の「火」も操ることができる。
また、属性スキルを持つものは、同種の属性攻撃に耐性を持つ。
――つまり、今の私は雷を操ることができるし、雷攻撃に耐性を持つ、と。魔法自体は使えなくても。
残念ながら、これ以上は有用な情報を得ることはできなかった。現実時間では今18:30だ。夕食のため、アプリコットはログアウトすることにした。
次話は本日15:00に投稿します。