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初ログインと初戦闘

 4月15日。【First Step Online】サービス開始日。杏梨は講義が終わってすぐに家に帰り、FSOにログインした。


 視界が暗転する。明るくなるとそこは、前日まで《マジックボール》を打ち込みまくった、チュートリアルルームだった。

「アプリコットさん。本日もようこそおいでくださいました。」

「ドゥクシアさん。こんにちは。」

 もうこの挨拶も3日目だ。ドゥクシアが告げる。

「本日はいよいよ。貴方の冒険が始まる日です。最後に、来訪者ギルドについて説明いたします。」

 その発言とともに、アプリコットの目の前にウインドウが展開される。そこには〈来訪者ギルド〉の説明が書かれていた。


 要約するとこんな感じだ。

・来訪者ギルドは、来訪者への問題解決依頼――クエストの斡旋や、素材の買い取りを行うギルド。

・クエストは、ステータス画面の〈ギルド〉の項目から受けることが可能だが、達成報告は来訪者ギルドで行う必要がある。

・来訪者ギルドへは、各街に存在する転移ポータルから行くことができる。

・月に1度、評価に応じて来訪者の貢献度ランク付け・VP《Visitor Point》の付与が行われる。

・ランクが高い者ほど高難易度・良報酬の依頼を受けることができる。

・VPを貯めると、得点と交換することができる。


 アプリコットが文章を読み終えたのを確認したドゥクシアは更に言葉を続けた。

「準備はいいですね。ここから、貴方の冒険が始まります。では、後ろの転送魔法陣へとお進みください。」

 その言葉とともに、アプリコットの後ろの地面に、今までなかった円形の模様が浮かび上がる。

(これが、魔法陣……! それに、とうとう始まるんだ。)

 そんな想いを胸に抱きながら、アプリコットは言う。

「ドゥクシアさん、ありがとうございました! 行ってきます。」

「はい。貴方の旅路が、希望に溢れていますように。」

 そうしてアプリコットは踏み出す。まだ知らない世界〈イルカディム〉へと。

 

 やがて、魔法陣からアプリコットを包んでいた光が消え、眼前にファンタジーの世界が現れる。そこは活気溢れる街の広場だった。

「おー、ここがイルカディムかぁ。」

 辺りを見渡す。石やレンガで作られた街並みの中で、多くの人が楽しそうにしている。そんな姿を見てアプリコットの期待感も膨らんでいく。なお、期待感のうち9割は魔法が占めている。

 

(早く魔法を撃ちたい!)

 アプリコットはその一心で街の外に辿り着いた。広大な草原に佇む始まりの街。街の四方からのびている街道を外れると、そこはモンスターの領域。あちこちで来訪者がモンスターと戦っていた。

 アプリコットもまた人の少ないエリアに向かい、モンスター(魔法の的)を探す。そこで1匹のブルースライムと遭遇した。


 ブルースライム Lv.1

 

(行ける!)

 手に杖を出現させ、先制攻撃を放つ。FSOでは、装備している武具は任意で出現させることができる。

「《マジックボール》!」

 もう使い慣れた魔法がブルースライムにヒットする。しかし、それだけでブルースライムは倒れない。ブルースライムの反撃が来る。ころがり攻撃!

「うわっ」

 運動音痴のアプリコットはうまく避けられない。残りHP : 13/14。

(実際の戦闘ってただ魔法を当てればいいってわけじゃないんだ。)

 アプリコットは考える。その間に、ブルースライムが再び攻撃を仕掛けてくる。今度は跳びかかり攻撃だ。避けれ……そうにはない。だったらとカウンターを狙う。

「《スイング》!」

 振り下ろした一撃がちょうどブルースライムの頭に命中し、動きが止まった。チャンスだ。今のうちにアプリコットは呪文を唱える。

「《マジックボール》」

 再度魔法の球が命中し、ブルースライムはドロップアイテムへと姿を変えた。

 

「えっと、倒せたってことだと思うけど……」

 恐る恐る戦利品へと手を伸ばすと、眼前にパネルが現れた。

 

 触れている自分のアイテムはインベントリに格納することができます。

 ステータス画面を開くのと同じように、収納するよう念じてください。

 なお、全てのアイテムには『インベントリ質量』が設定されています。この質量がインベントリの開放枠を超えない限り、インベントリに格納し続けることができます。

 インベントリの初期開放枠は10000で、更なる開放には〈星ノ結晶〉(※課金)が必要です。

 

 以後、ドロップアイテムは自動で格納されます。

 パーティー・レイド結成時には、戦闘終了後に、貢献度に応じて分配されます。


 文章の指示通りに念じてみると、ドロップが目の前から消える。再度ステータスから〈アイテム〉を確認すると、〈スライムドロップ〉という名前のアイテムが1個格納されて、インベントリの残り枠が1減った。

「やった! 初勝利ー!」

 アプリコットは両手を突き上げて喜んだ。

 

 戦闘時以外はHPとMPは徐々に回復していく。MMORPGのお約束はこのゲームでも受け継がれていた。アプリコットはあまり詳しくないが。

 でも、MPが尽きないのならやることは1つだ。

(もっと魔法を使いたい!)

 アプリコットはしばらく戦闘を続けた。やがて自身のレベルが3になる頃には《マジックボール》の制御にも慣れてきて、不意打ちのバックアタックが決められるようにまでなった。

 

 ちなみに、このゲームではレベルアップ毎にSPを2獲得する。SPは好きなタイミングで任意のステータスに振り分けられる他、10消費することで、獲得しなかった《初期スキル》を1つ取得することができる。

 アプリコットはまだSPを振っていない。ここまで特に問題なかったのと、スキルは熟考して選びたかったので。


 さらに戦闘を続けていくと、脳内に音声が鳴り響いた。

『アーツ《マジックショット》がアクティベートしました。』

 もちろん、アプリコットに新アーツを試さない選択肢はない。

「《マジックショット》」

 すると、《マジックボール》より小さくて速い球がブルースライムを襲った。まだブルースライムは倒れない。もう1発同じ弾を撃つ。

「《マジックショット》」

 杖スキルのレベルが上がる。それはつまり、自身の魔法が成長した証。

「これでまた1つ、あの人に近づくことができたかな。」

 光に還るブルースライムを傍目に、アプリコットはそんなことを思った。


 ----------

 

《マジックショット》

・《マジックボール》より速射性が高く、再使用可能時間(リキャストタイム)も短い。ただし、そのぶん制御難易度は高い。


次話は本日12:00に投稿します。

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