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夜の探索とアーツの検証

 4月18日。アプリコットはそろそろ街の外へ向かうことにした。ことのきっかけはアニーとのメッセージのやりとりだ。

 

アニー:「昨日の動画見たよ」

アプリコット:「ありがとう

       アニーは昨日なにしてたの?」

アニー:「ルカ村でクエストを消化してた」

アプリコット:「おー

       私、まだそっちに行ってないな。」

アニー:「私もまだ西と南には行ってないんだよね。一緒に行かない?」

アプリコット:「どっちに?」

アニー:「南!海鮮食べたい!」

アプリコット:(「OK」のスタンプ)


 というわけで、初日以来の2人旅だ。何の因果か今回も夜時間での探索である。ただし、今回の行く先は南側の港へと続く街道だ。と、その前に。

「アプリコット、かっこよくなったね。」

「そういうアニーこそ、かわいくなったじゃん。」

 まずはお互いの衣装を誉め合った。アニーは上半身には白いシャツに濃い水色の胸当てを着け、下半身には同じく濃い水色のスカートと白いハイソックスを履いている。

「どうしたの、その衣装?」

「現地人の店で可愛いのがあって、つい買っちゃった。」

「ミナピソル?」

「ミナピソル。店名は覚えてないけど。っとそろそろ行かないと着く前に満腹度が切れちゃう。」

「まあ満腹度超過しても全然食べられるけどね。」

「おなか減った状態で食べるのが一番美味しいんだから。行くよ! 《マジックトーチ》をお願い。」

 街道といえども街灯はついていないため、明かりをつけるのは必須だった。周りのパーティーも購入したランタンを手に持っている。

「私、魔法使えなくなるけどいいの?」

「ランタン持っての戦闘はこりごりなの!」

「あ、はい。」

 有無も言わせぬ気迫に押されてアプリコットは《マジックトーチ》を点けた。にしても、ソロ戦闘<ランタン持ち戦闘らしい。いったい何があったのか。

 

「いやー、快適快適。」

 アプリコットの灯す光を見ながらアニーが言う。

「まあ、ランタン代は浮くけど……」

「それだけじゃないよ。他のパーティーを見てみて。」

 アニーの言うとおりにのパーティーを見てみる。すると、手にランタンを持ったまま戦闘している前衛の姿がアプリコットの目に入った。どことなく戦いにくそう。

「戦ってるときにランタンがじゃまなんだよね。しかも、敵の攻撃で壊れかねないし。」

「なるほどね。」

「その上、私みたいな戦闘スタイルだと……ね。」

 アニーの場合、本来なら盾を装備している手にランタンを装備することになるため、戦闘スタイルが大きく変わることになる。両手で武器を持つ人達も同様だろう。アプリコットはアニーの言っていたことに納得した。

「こっちから攻撃する分には、一度しまうか置けばいいんだけどね。」

 言い換えると、迎撃だと無理ということである。


 そんな話をしている2人の元にも敵の攻撃を迫ってきた。


 グリーンスライム Lv.5

 ブルースライム Lv.3 ×2


 グリーンスライムの転がり攻撃を盾でなんなくガードしたアニー。そのまま他のスライム諸共《薙ぎ払い》を喰らわせる。次の一撃を狙おうと構えていると、グリーンスライムはアプリコットが点けている灯りに向けて口から粘液を飛ばした。異物が付着し、アプリコットの《マジックトーチ》の制御が乱れる。

「くっ」

 乱れた制御を取り戻すため、アプリコットは更に魔力を込めた。

 その間にもブルースライム2体はアニーめがけて転がってくる。アニーはそれらを前方にジャンプして回避、攻撃後の隙があるグリーンスライムに斬撃を加える。

「《スラッシュ》!」

 そして振り返って、相手を挑発アーツを唱える。これで、攻撃の矛先がアプリコットに向かうのを阻止した。

「《タウント》」

 それとほぼ同じタイミングで、《マジックトーチ》からスライムの粘液が溶けて無くなった。制御の乱れもなくなった。そのため、アプリコットは追加の魔力供給を止めた。いつもならここでMPの減少は止まるはずだが、何故かMPの減少が緩やかになったものの止まりはしない。何が起こっているかは分からないが、アプリコットは灯りの維持に集中することにした。

 一方のアニーもあることを考えていた。

(相手は前方に2体、後方に1体。だったら)「《薙ぎ払い》!」

 横薙ぎの斬撃《薙ぎ払い》。その攻撃範囲をアニーは自身が回転することで360°にした。各スライムに攻撃が当たり、それらが光に変わる。アニーの作戦は成功した。しかし、勢いよく回った後の静止がうまくいかずに尻餅をついてしまった。

「大丈夫?」

 アプリコットがアニーに手を差し出す。と同時に、トーチが切れて辺りが暗くなった。

「「あ」」

 2人声が重なる。それから、なにか可笑しくなって笑い合った。ひとしきり笑った後、アニーが呟く。

「なんかしまらないね。」

 アプリコットもそれに同調した。

「ほんとに。」

 

「行けそう?」

 1分くらい経った頃にアプリコットがアニーに声をかけた。

「ちょっと待って。新しいアーツを獲得したみたいだから確認したい。」

「OK。」

 数秒後、アニーは再びアプリコットに尋ねた。

「1回試してみてもいいかな?」

「いいよ。」

「ありがとう。」

 そう言うとアニーは少し離れて、アーツを唱えた。

「《回転切り》」

 すると、アニーの体が剣を構えたまま1回転した。先ほどと違って、回った後もちゃんと立てている。

「なるほど。次からはこけずに使えそう。」

 アニーはアーツの感触を無事に掴めだようだ。

 

「じゃあ出発するよ。《マジックトーチ》」

 今度こそ灯りをつけて出発した2人。歩いている途中、アニーが疑問を口にする。

「そういえば、灯り消えてたよね。何があったの?」

「実はね……」

 アプリコットは説明を始めた。グリーンスライムの攻撃で《マジックトーチ》の制御が乱れたこと。それを元に戻すためにMPを込めたら、無事に粘液は消えたが、MP供給が完全には停止しなかったこと。説明を聞いた後、アニーが口を開いた。

「なんか、森のときと似てるね。ほら、アプリコットが《マジックトーチ》を取得した時の。」

(確かに。あのときは灯りのための《マジックボール》が消えて……。状況が似てる? ということはさっきの《マジックトーチ》は《マジックボール》化してた? 攻撃性のない《マジックトーチ》では相手の攻撃を相殺することはできないけど、《マジックボール》ならあるいは……)

 そこまで思考してアプリコットはアニーに訊く。

「次の敵、最初の一撃は私がやってもいいかな?」

「いいよ!」

 アニーは快く快諾してくれた。そして、その機会はすぐに訪れる。


 グリーンスライム Lv.6


 灯りに気づいたグリーンスライムがそれに向かって粘液を放つ。奇しくも先ほどと同じ状況だ。アプリコットも同じ方法で粘液に対抗する。そして粘液が消えた段階で、アプリコットはその光をグリーンスライムにぶつけた。すると、グリーンスライムはノックバックした。

(やっぱり《マジックボール》化してる!)「アニー、上手くいったよ!」

「わかった。じゃあここからは私も参戦だね。《タウント》」

 攻撃を受けたことでアプリコットに向かっていたグリーンスライムのヘイトが、アニーのアーツによってアニーに向く。

「《マジックショット》」

 もう灯りは消えてしまっている。アプリコットは追撃を優先した。

「《スラッシュ》」

 そこに更なるアニーの攻撃がヒット。そして、

「《マジックボール》」

 アプリコットの更なる一撃で、グリーンスライムは倒れた。これにて無事、疑問解消も戦闘も終了だ。

(《マジックトーチ》に攻撃性の魔力を加えると《マジックボール》化する、と。)

 

 その後の行程は順調だった。もし、2人のうちどちらかだけでも《採取》スキルを持っていれば、もう少し時間をかけて探索したのかもしれない。《採取》スキル持ちは採取ポイントが分かるので。しかし、持ってない以上どれが採取物かは触らないと判らない。灯りがあるとしても、暗いことに変わりはないし。故に止まることなく進んでいる。ちなみに、触れられなかったらただのフィールドオブジェクトである。


 そうして10分くらいしたころ、2人は無事港町〈モアーレ〉に辿り着いた。

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