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アプリ『異世界ポイント』で楽しいポイント生活 ~溜めたポイントは現実でお金や様々な特典に交換出来ます~  作者: よっしゃあっ!
第四章

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95.一億あったら仕事だって辞めたくなる


 寝覚めがとてもいい。

 一晩寝ればまるで体力も気力も全てリセットされたかのような爽快感。


(これ、間違いなくポイント交換の影響だよな)


 ポイント交換で得た身体能力と身体機能。

 ぐっすり眠れて疲れが残らない。それだけで社会人にとっては素晴らしい恩恵と言えるだろう。

 ありがたや、ありがたや……。


「さて、今日の予定は……」


 朝食を取りつつ、手帳のスケジュールを確認する。

 職場に行ってから確認も出来るけど、何となく見ちゃうんだよな。

 ……特に大事な仕事は入ってないな。

 後からやっても十分に間に合うのばかり。


「……休もうかなぁ」


 自然とそんな言葉が口から出た。

 勿論、仕事なんていつも行きたくないと思ってる。

 でも今はその思いが一際強くなっている。


(考えてみれば、もう一億あるんだよな……)


 異世界ポイントのポイントは現在11,000ポイントを超えている。

 つまり一億一千万だ。

 億万長者の仲間入りだ。

 ぶっちゃけファイアしても問題ないかもしれない。

 これを元手に株なり投資なりで資金を上手く転がせば一生食うには困らないだろう。


「異世界ポイントを始めてまだ一週間も経ってないのに一億か……とんでもないな」


 ちょっと前までは残り数千円で給料日までどう過ごそうかすら困っていたというのに。

 明細貰うまで、昨日が給料日だということすらすっかり頭から抜けていた。

 今の俺は焼肉だろうが回転寿司だろうが、好きなもんを好きなだけ食うことが出来るのだ。うははは。


「……やっぱ、辞めちゃおうかな仕事……」


 低下する仕事へのモチベーション。

 異世界ポイントにどっぷり浸かるのは危険だと思いつつも、異世界ポイントがあれば仕事なんてしなくていいとも考えてしまう。

 そりゃそうだ。だって一億あるんだから。


「……考えてみれば今の仕事に固執する理由はないな……」


 貯金もなかったからこそ、今の仕事を失うリスクを恐れていた。

 でも今は違う。

 仮に一千万くらいポイント交換で現金化しておけば、数年は生活に困らないし、いつでも再就職出来る。

 というか、デイリークエストだけでも一日10ポイント。10万円が手に入るのだ。

 一年で3,650万だ。うわーぉ、大金。


 無論、突然現れたアプリだ。

 いずれどこかで突然消えるなんて可能性もある。

 だがそれは現実だって同じこと。

 急に会社が潰れることだって、交通事故に遭って死ぬことだってない訳じゃない。

 なら今の自分にとって有益な方を選ぶべきだろう。


「……とりあえず今日は休むか」


 仕事のモチベ低下もそうだが、休みたい理由はもう一つある。

 というか、こっちが大きな理由だ。


 ――小雨のスキル『世界扉』の検証。


 世界扉のCTは現実時間で12時間。

 半日に一回だ。

 世界扉使用中の現実と異世界ポイントの時間の流れがまだ不確定な以上、仕事中に検証するのは危険だ。

 かといって仕事が終わって、家に帰ってからだと一回しか試すことが出来ない。

 それだと勿体ない。

 

「よし、さっそく上司に連絡するか。あー……げほっ、げほっ」


 ふぅーっと息を吐いて、げほっ、げほっと咳き込む。

 うーん、体調が悪いなー。

 プルルル……プルルル……ガチャ。


「げほっ……あの、高橋主任すいません。ちょっと体調を崩したみたいで……ええ、昨日の夜から急に……。はい、これから病院に……。はい、井口への引継ぎは特にないです。……はい、はい、そうして頂けると。げほ、げほっ……すいません、喉がちょっと。ええ、ありがとうございます。よろしくお願いします。病院に行ったらもう一度、連絡します、はい……」


 ピッ。

 スマホを切る。

 よし、任務完了。

 普段の勤務態度のおかげで、全く疑われなかったぜ。

 しかも『コロナかインフルかもしれないし、しっかり休んでから出社しろ』って言われちゃった。

 あざまーっす。

 うちの会社、給料が上がらないけど、こうしてちゃんと有給とか取れるところは美点だな。

 しかも病院の診断書とかも、別に提出しなくていいし。


「あー、仕事行かなくていいって思うと、なんか心がすっごく軽くなってきたな」


 体が軽い。もう何も怖くない。

 我ながら屑。

 でも良いじゃないか。文句言いつつもずっと真面目に働いてきたんだしさぁ!

 たまにはずる休みしたってさあ!


「さーて、とりあえずデイリークエストを消化するか」


『世界扉』のCTが終わるまでまだ四時間近くある。

 それまで他のイベントをこなして時間を潰そう。

 俺はさっそく異世界ポイントを起動させた。




 黒い空間から待機室へ向かう。

 扉を開け中に入ると、セイランを見つけた。


「りゅーぅ、おはよう♪」

「お、セイラン。もう体は大丈夫なのか?」


 セイランは俺の胴体目掛けて突進してきた。

 おおぅ、ちょっと力が付いたか? 凄い勢いだ。

 ご機嫌なのか、長い耳がピコピコと揺れている。


「うん! もうだいじょうぶだよ!」


 発声や発音も前よりもずっと滑らかになっている。

 いい傾向だな。


「雷蔵たちは?」

「あっち」


 セイランが指さす方向にあったのは訓練場だ。

 そちらに視線を向けると、雷が地面から空へと駆け上がった。


「おー、やってんなー」


 さっそく訓練場に向かう。

 訓練場は大きめのジムと吹き抜けの闘技場を併設したような施設だ。

 現実のジムにありそうな筋トレ器材も一式揃っている。

 ちなみに増設施設が拡張すればプールも作ることが可能らしい。

 雷蔵たちは闘技場の方に居た。

 

「ウガァォオオオ!」


「ウ、ウッキィィィ~~~!」

「ウキァァアアア!?」

「ウギャアアアアアア~~~!」


 雷蔵の相手は、夜空、月光、月影の三人。

 数の上では夜空たちの方が有利だが、戦況は雷蔵が圧倒的に優位だった。


「やっぱ雷神形態は凄まじいな……」


 雷神形態になった雷蔵は、三人の猛攻をものともしない。

 ステータスの差もあるが、雷神形態はデバフ無効が大きいのだろう。

 夜空の強みの一つである呪いやデバフが一切機能しないのだから。


「ウガォォオオオオオオオオオオオ!」


 雷蔵が『紫電一閃』を刀に纏わせ、一気に振り抜く。

 闘技場の大地が裂け、雷が天に上る。

 流石に直撃はしないように軌道は逸らしていたが、その余波だけで夜空たちは闘技場の端まで吹き飛ばされた。

 

「ウガォーウ♪」


 雷蔵は俺に気付いたのか手を振ってくる。

 いいところを見せることが出来たと思っているのだろう。ご機嫌だ。

 俺も軽く手を振る。


「! ……ウッキィィ」


 一方で夜空は負けてしょんぼりしていた。

 そんなに気に病む必要はないと思うが……まあ、後で慰めてやるか。

 月光と月影は完全に気絶していた。

 余波とはいえ、雷蔵の攻撃を食らっても気を失わずに済んでる辺り、やはり夜空と二匹の力の差は大きいみたいだ。まあ、これからどんどん強くなればいい。


「そういえば、セイラン、朝食は食ったか?」

「んーん、これから」

「そっか。じゃあ、皆で一緒に食べるか」

「たべる! みんな、よんでくるね!」


 現実世界ではもう済ませて来たけど、こっちで食う分には構わないだろう。

 雲母は宿泊場で、小雨は池でそれぞれまだ寝ていたらしく、セイランに引きずられて、連れてこられていた。

 皆で朝食を食ったらデイリークエストに挑戦だ。

 

(今回はこの武器を使ってみるか)


 パルゴスを倒した時に手に入れた武器『ソウルイーター』。

 まだ魂のストックも少なく特殊効果も無かったため、呪い人形たちとの戦いでは使いどころがなかった。

 なので今回のデイリークエストで性能を検証しつつ、ストックを貯めるとしよう。

 火曜日は月曜日と同じ討伐クエストだから丁度いい。



『デイリークエストを開始します』


『デイリークエスト 討伐

 クリア条件 モンスターを全滅させる

 成功報酬 ポイント+10、ランダム装備品』


 さあ、やるか……。


「はいっ!」


 イエスを選択しようとする直前、セイランが手を上げた。


「どうした、セイラン?」

「モンスターたおしにいくんだよね? あたしもいく!」

「え?」

「ぜったいいく! ぜったいだかんね!」


 むーっと、力強くセイランはそう宣言する。

 ……寂しいの?

 いや、ひょっとして何かスキルが使えるようになったのか?



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― 新着の感想 ―
あ~あ遂にズル休み、もう戻れないぞ☆(登校拒否経験者談) 連れ戻してくれる知人は・・後輩ちゃん?うんメリットねぇな。
つまらないことを言うようですみませんが・・・ 異世界ポイントがたくさんあると言ってもまだきちんと受け取っているわけではないので安易に会社を辞めない方がいいです。とはいえ今の仕事に固執する理由もないと…
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