72.使えない武器に限って強いのがある
『モンスター図鑑が更新されました』
『モンスター図鑑№15 魔法猩々
魔術猿の希少上位種
本来、魔術猿の進化先は呪術猿だが、極稀にこちらに進化する個体が居る
マジカルアイテムを保有することが進化条件と言われている
非常に知能が高く、様々な魔法スキルを習得できる
森猿、戦士猿、魔術猿などを率いるリーダー的存在
魔法猩々が率いる群は呪術猿が率いる群れよりも遥かに優れた群れとなる
森の豊穣をもたらすと伝えられている
討伐推奨LV25』
『モンスター図鑑№16 重戦士猿
戦士猿の進化系
身体能力が更に向上し、防御系のスキルを有し、群れの壁役となる
常に集団で行動し、息の合った動きで敵を翻弄する
騎士猿と共に群れの双璧をなす存在
極稀に特殊なスキルを有する個体が生まれる
討伐推奨LV18』
『モンスター図鑑№17 騎士猿
戦士猿の進化系
身体能力がさらに向上し、攻撃系スキルを有し、群れの攻撃役となる
常に集団で行動し、息の合った動きで敵を翻弄する
重戦士猿と共に群れの双璧をなす存在
極稀に特殊なスキルを有する個体が生まれる
討伐推奨LV18』
『名前 夜空 LV19
種族 魔法猩々
戦闘力 ☆☆☆☆+
スキル ひっかき、投擲、睡眠、呪い、指揮
火魔法、風魔法、多重詠唱
忠誠度 最良』
『名前 なし LV17
種族 重戦士猿
戦闘力 ☆☆☆+
スキル ひっかき、投擲、防衛、鉄腕、防御指揮
重戦士の誓い、守勢
忠誠度 良』
『名前 なし LV17
種族 騎士猿
戦闘力 ☆☆☆+
スキル ひっかき、投擲、剣技、猛攻、攻撃指揮
騎士の誓い、攻勢
忠誠度 良』
これが進化した夜空と二体の猿たちの情報だ。
夜空は魔術猿だった時に比べて、戦闘力の星が増え、新たに三つのスキルを覚えていた。
代わりに元々あった火弾が消えている。
どういうことかと思ってみたが、スキルの説明を見て納得した。
・火魔法 アクティブ 炎系の魔法を使用できる
火弾、炎壁、火縄、燃撃、業火は統合され
上記の5つを使用できる
CT5~30秒
「スキルが統合されたってことか」
説明から見ても、完全に火弾の上位互換。
実質的に炎系の魔法スキルを五つ使えるに等しい。
風魔法も似たような感じだが、何よりも特筆すべきは最後の多重詠唱だ。
・多重詠唱 アクティブ 二つの魔法スキルを同時に使用できる
CT5秒
使用したスキルは通常と同様のCTが発生
魔法スキル限定とはいえ、同時に二つのスキルを使用することが出来るのだ。
睡眠や呪いは魔法スキルではないので、火魔法、風魔法の二つだけになるが、それぞれ五つのスキルを内包しているので、組み合わせ次第では、単体の時よりも遥かに強力な効果を発揮するだろう。
「てか、魔法猩々って……」
なんか魔法少女みたいな名前だな。
まあ、強いからいいけど。
雷蔵と並んでメインアタッカーの仲間入りだ。
重戦士猿と騎士猿もパーティーメンバーに加えても問題なさそうだ。
名前も後で考えておこう。
連携や陣形についても要検討だな。
「強力な武器も手に入ったな」
嘆きの短刀、死神の鎌、竜騎士の槍、ファントムバレット、サブマシンガン、飛竜の牙。
おそらくこの辺は、レインボー・マジカルステッキと同じレア武器だろう。
俺が装備できるのは嘆きの短刀、ファントムバレット、サブマシンガンの三つだけだけどどれも強力な武器だ。
嘆きの短刀は攻撃+20、クリティカル率+40%、攻撃成功時、対象の被ダメージ+15%のデバフを与える。
ファントムバレットは短銃よりもややサイズの大きい銃で、遠距離攻撃+15、攻撃範囲12メートル、弾は6発。更に銃弾に『浄化』の属性を付与する。
『浄化』は幽霊系、アンデッド系、呪術系のモンスターへの特効ダメージを与えるバフだ。
それ以外のモンスターには数値通りの効果しかない。
それでも短銃よりも攻撃値も射程も高いので非常に有用な武器だ。
サブマシンガンは遠距離攻撃+7、攻撃範囲8メートルで短銃よりも攻撃値や射程は低いが、連射性能が桁違いだ。ショップに専用の弾倉も入荷していた。
説明によると毎分100発撃てるらしい。
現実のサブマシンガンは射程も有効射程も全然違うらしいけど、まあそこはあくまでゲーム内の遠距離武器ってことなんだろう。ここ大事。
こちらも試してみるのが楽しみだ。
死神の鎌は軽業師専用の武器で、攻撃+30、攻撃成功時に5%で即死発生。
控えめに言ってヤバい。
現状、使用できる奴が居ないのが悔やまれる。
「なんで使えない武器に限って強いんだよぉ……」
軽業師選んでればこれ使えたんだよなぁ……。
まあ、過ぎたことを悔やんでも仕方ないか。
竜騎士の槍は攻撃+20、攻撃スキル使用時攻撃+20%。
飛竜の牙はデカい剣で、攻撃+15、防御+10、防御スキル使用時被ダメージ-20%。
この二つは重戦士猿と騎士猿にぴったりなので、彼らに装備させた。
残りの大量の武器は猿たちへそれぞれ装備だ。
「ドラムやほら貝とか音猿の装備も手に入ったのは嬉しいな」
楽器系の武器は攻撃性能は皆無だが、代わりにスキルのような特殊効果がある。
特定デバフ無効や、ダメージの減少、回復など様々だ。
実際、呪術猿との戦いでは音猿のせいで『不快』が全く機能しなかった。
敵だと厄介だが、味方だと心強い。
「手に入れた武器を、猿たちに装備させるだけで結構な時間がかかったな」
まあ量が量だし仕方ないか。
あ、そうだ。
頑張った部隊にはご褒美の約束だったな。
どの部隊も頑張ったし、今回は全員に支給するしかないか。
後でオープンワールドに入ったら、タイミングを見て、ご褒美を上げよう。
「さて、デイリーダンジョンとメインストーリーとどっちをやるか」
デイリーって名がついてるけど、終末世界の方は実質ただの高難易度ミッションだし、あれを毎日やるって辛いんだよな……。
でも一日一回しかできないし、カードの強化素材も欲しい。
そういえばメインストーリーの方はどんな感じなんだっけ?
画面のメインストーリーの項目に触れる。
『メインストーリー5を開始するには、以下の条件を満たしてください』
『サブクエスト
アポリスの町でコンコォーン・コロロ、ニャンマルと再会する』
「おや……?」
コロロさんとニャンマルさんって、あの時の二人か。
メイちゃんと共に保護した特定NPCの亜人たち。
どうして彼女たちがアポリスの町に居るんだろう?
キザルト草原にある亜人の国に居るはずなんじゃ?
「ちょっと気になるな……。大河さん、ログインしてるかな?」
彼女たちのことは大河さんに任せたはずだ。
フレンドの方を見れば、大河さんはまだログインしていなかった。
すぐ隣だし、一旦ログアウトして確認しに行くか?
あ、いや、大河さん留守だったな。
帰宅した時に担当さんっぽい人になんか連行されるのが遠めに見えた。
またSNSで暴走でもしたのだろうか?
……一応、メッセージだけ送っておくか。
「先にこっちをやるか」
『サブクエストを開始します』
『クリア条件 アポリスの町でコンコォーン・コロロ、ニャンマルと再会する
成功報酬 青い石、2,000イェン』
俺の体は白い光に包まれた。