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71.猿たちの派遣結果を確認してみた


 目が覚めた。

 異世界ポイントをログアウトした後、俺はすぐに床に就いた。

 一気に眠気が押し寄せてきて、気づけばもう朝だ。


「あ~~~、仕事行きたくねぇ~……」


 起きて早々の台詞がこれだよ。

 だるい。眠い。休みたい。

 そんな風に思っていても、決まった時間には目が覚めるのがホントやだ。

 染みついてやがる……体に……仕事のリズムが……!


「……派遣の方は大丈夫かな?」


 確認しようか迷ったが、朝から異世界ポイントを起動すると、仕事のリズムが狂いそうなんだよな。

 まあ、無茶はしないようにって、夜空には伝えてあるし問題ないとは思う。

 帰ってきてから確認しよう。

 というわけで、朝食を食べて、身支度を整えて部屋を出る。

 

「……あっ」


 お隣さん、もとい大河さんが居た。

 コンビニの袋を持っているところを見るに、買い物の帰りなのだろう。


「お、おはようございます……」

「おはようございます。昨日はご迷惑をおかけしました」

「そ、そそそ、そんなことないです。むしろ、なんもなくて良かったです、はいっ」


 大河さんは顔の前でパタパタと手を振る。


「献本ありがとうございます。キッチンカーのやつ、面白かったですよ」

「あ、ありがとうございます。楽しんで貰えたなら嬉しいです! うぇへへ……」

「新作も楽しみにしてますね」

「ッ……はい! ま、任せてください! それではっ!」


 ひゅ、ばたん、ガチャッ。

 大河さんは、あっという間に部屋の中へ消えていった。

 ふぉぉ~~~~! って感じの奇声が聞こえきたがきっと気のせいだろう。

 俺は何も聞かなかった。きっとそうだ。

 新作、楽しみだな。




 会社に着くと、井口が居た。


(いつもならギリギリに来るのに珍しいな――って、え?)


 俺は目を疑った。

 俺の机の上には、井口が準備したであろう書類が置かれていたのだ。

 今日、取引先に提出する資料だ。


(し、仕事の準備をしている、だと……?)

 

 馬鹿な!

 いつもなら時間ギリギリに来て、俺に自分の仕事の準備までをさせてるあの井口が?

 残業嫌いって、いつも俺に仕事を押し付けてたあの井口が?

 あり得ない事態だ……。


(俺、いつの間にか終末世界にログインしてた?)


 いやいや、何を考えてるんだ俺。混乱するな。

 ふんふんと機嫌よく仕事の準備を進める井口を俺は呆然と見つめる。

 そういえば先週の金曜も仕事を早く終わらせてたし、コイツ頭でも打ったのか?

 呆然とする俺に気付いたのか、井口が顔を上げる。


「おはよう。今日はずいぶんと早いな」

「あ、先輩。おはようござ――っ」


 その顔が一瞬、ぽかんとなったかと思うと、ばっと目を逸らした。

 なんじゃい? 失礼な奴だな。

 ややあって、井口はもう一度顔を上げる。

 心なしか少し顔が赤いようにも見える。


「お、おはようございます。せ、先輩なんか変わりました?」

「そうか? 別にいつもと変わんねーだろ」

「いやいやいや、変わりましたよ。なんか纏ってる雰囲気というか、キラキラした感じが凄い出てるような……。うぅ、聞きたいこと色々あったのに、なんか全部吹き飛んじゃいました…」

「……?」


 よく分かんないけど、褒めてるんだよな?

 あ、ひょっとしてあれか?

 異世界ポイントの才能交換の影響か?

 容姿、頭脳、運動機能、身体機能、そして運。

 昨日のステ振りで三回目になったんだ。

 そろそろ目に見えた効果が出るんじゃないかと思っていたけど、井口の反応だけじゃ、いまいちピンとこないな。


「佐々木さん、おはようございます」

「係長、おはようございます」

「おう、おはよう」


 他の同僚もぞくぞく出社してくる。

 仕事の準備をしていると、同僚のひそひそ声が聞こえてきた。


「……ねえ、今日の佐々木さん、なんか雰囲気違わない?」

「分かる。かっこいいよね」

「どうしたんだろう?」


 ……ほうほう、なるほど。聞こえてますよお三方。

 身体機能強化の影響だな。ひそひそ話でもしっかり聞こえる。

 やはり三回も強化すれば、影響は確実にあるようだ。

 うーむ、悪くない。悪くない気分だ。

 ようやく効果を実感できた。


(あれ? でも大河さんは特に反応変わってないよな……?)


 異世界ポイントのプレイヤー同士は例外ってことかな?

 それはそれでちょっと残念だな。

 どうせなら気になってる相手からモテたい。

 そんな風に思いながら、井口の作った書類を確認する。

 

(……よく出来てるな)


 朝一で作ったにしては上出来すぎる。

 これならそのまま取引先に持っていく資料に使えそうだ。


「……井口」

「は、はいっ。なんですか、先輩!」


 いちいち大げさなリアクションすんな面倒くさい。


「今日の商談、お前やってみるか?」

「……え?」

「資料もよく出来てるし、これなら向こうも納得するだろ。勿論、俺もサポートするから、やってみないか?」

「ッ~~~~! はい、やってみたいです!」

「そ、そうか。じゃあ、任せたぞ」

「はいっ!」


 すっごい顔を近づけてくる井口に、俺は思わずのけぞってしまう。

 ……本当にコイツ、どうしたんだろう? 知らない間に転生とかしてないよね?

 その後、取引先との商談は成功し、井口は大喜びしていた。

 毎回、こんな風に仕事してくれれば俺も楽なんだけどなぁ。


「せ、先輩、今日こそは私と食事に――」

「あ、悪い。用事あるんだ」

「そ、そんなぁ~……」


 しつこく誘ってくる井口を振り切って、俺は帰路に就く。

 早く帰って、夜空たちの確認をしなければ。

 


 

 着替えて、夕食とシャワーを済ませると早速異世界ポイントを起動させる。


「さて、どうなってるかな……?」


 派遣の項目に触れる。

 画面が変化し、それぞれの部隊が表示される。


『派遣を終了しますか?』


 アナウンスが流れるので、イエスを選択。


『派遣が完了しました』

『各部隊の成果を報告します』


『第一部隊』

 リーダー  魔術猿LV8→16

 サブリーダー戦士猿LV8→15

 その他   魔術猿LV8→14、戦士猿LV8→12、戦士猿LV8→12、音猿LV8→11、森猿→戦士猿LV9、森猿→戦士猿LV9、森猿→魔術猿LV10、森猿LV3→7


入手アイテム

 よく斬れる剣×5、護身用のナイフ×3、初心者の弓×8、初心者の槍×6、初級魔術師の杖×3、初心者の鞭×4、石のヌンチャク×1、石のハンマー×1、戦士の剣×2、風切りのナイフ×2、ほら貝×1、ヨーヨー×1、サブマシンガン×1、嘆きの短刀×1


『第二部隊』

 リーダー   魔術猿LV8→14

 サブリーダー 戦士猿LV8→13

 その他    魔術猿LV8→11、魔術猿LV8→11、戦士猿LV8→10、音猿LV8→12、森猿→戦士猿LV8、森猿→戦士猿LV8、森猿→戦士猿LV8、森猿LV3→7


 入手アイテム

 護身用のナイフ×10、初心者の剣×8、短銃×2、木製のヌンチャク×2、初心者の槍×7、石のハンマー×1、戦士の剣×6、ドラム×2、死神の鎌×1、


『第三部隊』

 リーダー   戦士猿LV8→騎士猿LV17

 サブリーダー 音猿LV8→LV12

 その他    魔術猿LV8→13、戦士猿LV8→15、戦士猿LV8→15、音猿LV8→13、森猿→戦士猿LV9、森猿→魔術猿LV9、森猿→音猿LV9、森猿LV3→7


 入手アイテム

 護身用のナイフ×12、木製のヌンチャク×6、初心者の弓×3、初心者の槍×2、初心者の鞭×4、ドラム×2、ほら貝×4、暁のドラム×1、竜騎士の槍×1、ファントムバレット×1



・第四部隊

 リーダー   戦士猿LV8→重戦士猿LV17

 サブリーダー 音猿LV8→LV13

 その他    魔術猿LV8→10、戦士猿LV8→11、戦士猿LV8→10、音猿LV8→11、森猿→戦士猿LV9,森猿→音猿LV9、森猿→魔術猿LV9、森猿LV3→6


 入手アイテム

 護身用のナイフ×8、護身用の槍×4、初心者の弓×3、よく斬れる剣×3、こん棒×5、鉄パイプ×2、初心者の鞭×2、錆びた刀×1、木製のハンマー×2、初心者の鎌×3、いい音色のドラム×1、いい音色のハープ×1、飛竜の牙×1


 監督役 夜空 魔術猿→魔法猩々LV19

 


 おお、凄い。

 猿たちが軒並みレベルアップしてる。

 森猿はほぼ全員が上位種に進化し、リーダーも進化してる個体が居る。

 それに凄いアイテムの量だ。

 数から計算するにどの部隊も12~13回くらい周回したみたいだな。

 確認が大変だな。嬉しい悲鳴だけど。

 ……ん? ていうか、ちょっと待って。


「夜空まで進化してる!?」


 なんか夜空の種族が魔術猿から魔法猩々になってた。

 マジか。なんで?


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― 新着の感想 ―
魔法少女う
絶対それ言いたかっただけだろ笑
世代交代を経ていないので進化じゃなくて変態ってのは伏線だったりする?
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