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アプリ『異世界ポイント』で楽しいポイント生活 ~溜めたポイントは現実でお金や様々な特典に交換出来ます~  作者: よっしゃあっ!
第三章

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52/118

52.信じられぬモノを見た


 驚愕、お隣さんがエロ漫画家だった。


「女性でもそういう作品を描くんですね」

「意外と多いですよ。それに昔から性描写に関しては、男性作家よりも女性が描いた作品の方が生々しいのが多いって個人的には思います。読者の心を抉るようなの結構ありますし」


 ……そうなんだ。


「前戯や○輪の描き方とかも結構個性出るんですよね。本番よりそっちに力入れてる人も居ますし」

「そ、そうですか」

「あ、これ、私の名刺です。どうぞ」

「あぁ、はい。どうも……」


 大河さんから名刺をもらう。


『漫画家 虎にバニー

      Y(旧トォオッター  @……

      メールアドレス ………@……』


「……ず、ずいぶんと個性的なペンネームですね」


 反射的に変って言わなかった自分を褒めてあげたい。

 某朝ドラのタイトルを彷彿とさせるけど、これ、怒られないの?


「作家やイラストレーターさんだともっと個性的な方も多いですよ。叫び声だったり、文章みたいなペンネームの人も居ますし」

「……何故、そんなペンネームに?」

「さあ? 割と理由を聞いても『なんとなく』っていう人が多いんですよね」


 い、意味が分からない。作家にとってペンネームって大事なんじゃないの?

 あ、裏に作品名も印刷されてる。

 どれどれ……。


著作

・『奥様、ごっつぁんです1~4巻』40万部突破、OVA全4巻

・『今日も私はノーと言えない全30話』60万DL突破

・『夫婦のヒミツの交流界。財閥令息の名刀マサムネに貫かれた私』OVA1巻

・『異世界転生した僕は勇者にならずに、キッチンカーでモフモフ達と旅に出ます』コミカライズ全4巻 30万部突破


 お、おぉう……。

 中々に個性的なラインナップが並んでいらっしゃる。

 でもこれ、かなり売れっ子な感じがする。


「最後の作品はなんか毛色が違いますね」

「あ、はい。ちょうど、前の作品が終わったときに、ラノベのコミカライズやりませんかって依頼を頂きまして。割と売れてたんですが、4巻で打ち切りになってしまいまして……」

「へぇー、私はマンガはあまり明るくないですが、30万部って結構な数字じゃないんですか?」

「はい。実はコレ、原作が先に打ち切られちゃってて……。コミカライズだけでも続けたかったんですけど、原作者が本の続き出せないなら、もう続き書きたくないって言われちゃいまして……」

「それは……残念でしたね」

「まあ、仕方ないです。……あ、その、興味があるのでしたら、後で献本差し上げます」

「あ、ありがとうございます……」


 個人的には一番上の『奥様、ごっつぁんです』が一番気になる。

 どういう内容なんだろう?

 後で検索してみよう。


「漫画家ならずっと家に引きこもってても文句言われないし、好きなことだけやってお金貰えるんだから最高じゃないかって思ってたんですが……現実は全然違いました」

「違ったんですか?」


 あれかな?

 自分の描きたいものと、読者が求めているものが違うとか?


「お金があっても、結局、お金だけじゃ生活は出来なかったんです。掃除、洗濯、ゴミ出し、ご飯の準備。全部、自分でやらなきゃいけないんです。地獄ですよ」


 そっちかい。


「前は担当さんが全部やってくれてたんですが、つい最近、ガチ切れされて。『お前はもっと自立した生活をしないと駄目になる』って言われて、やってくれなくなりました」

「それは担当さんが正しいと思います。でも今は家事代行サービスとかもあるじゃないですか」

「……知らない人を部屋に入れるとか無理です。怖いです。ウー○ーとか、ア○ゾンももっぱら置き配です」

「……」

「まあ貯金は割とあったので、本業の方は少しお休みして、まずは人間らしい生活をしようと思い、自分でコンビニに行ったり、人が居ない時間帯に散歩したりとリハビリを続けていたんです」

「リハビリ……」

「趣味のアルダンだけが心の支えでした……」


 遠い目をする大河さんを見て確信した。

 この人、駄目人間だ。

 ちゃんと働いて、おそらくは俺より稼いでるけど、それはそれとして駄目人間だ。

 間違いない。


「それで三日前、アルダンの協力戦を終えたら、変なアプリがあるのを見つけて」


 あ、俺と同じだ。


「それで気になって開いてみたら、チュートリアルが始まって、これはとんでもないアプリやーって大興奮でした」

「確かにとんでもないアプリですよね」


 リアルVRMMORPGだもんな。

 全てのゲーマーの夢と言って良い。

 おまけにRMTが出来るし。俺にとってはこっちが嬉しい。


「大河さんのスタート地点はキザルト草原でしたっけ?」

「あ、はい。チュートリアルはウォーバニーっていう二足歩行のウサギを倒すか、脱出地点までたどり着くかって内容でした」

「ほほぅ」


 ゴブリンかウサギかって違いはあるけど、チュートリアルの内容はほぼ同じだな。


「で、こんなトンデモゲームなんだし、絶対何か隠し要素があると思い、ウサギさんたちを餌付けしたり、調教したりで言うこと聞かせたり、隠しアイテムないか色々探したり、チュートリアルだけで二時間くらい頑張りましたね」

「俺もです」


 全く同じだ。

 同好の士が居て嬉しい。

 ん? てか、今、ウサギを調教したりって言ったこの人?

 サラッととんでもないこと言ってない?


「その甲斐あって、ウォーバニーちゃんも仲間に出来たんですよね。で、そこからメインストーリーが始まって、完全クリアしたらEXシナリオが始まって、それを繰り返してるうちに、LV10になって職業が選択できるようになったんですよね」

「ふむふむ」

 

 俺がゴブリンを仲間にしたように、大河さんはウォーバニーを仲間にしたのか。


「最初に選べた職業が『獣使い』、『調教師』、『冒険家』、『メイド』、『見習い女王様』だったんです。それで私は『メイド』と『見習い女王様』を選んだんです」

「え、ちょっと待って下さい。職業を二つ選べたんですか?」

「はい。二回目のEXの報酬が『双生の宝珠』ってアイテムで、職業が二つ選べるって効果だったんです」


 う、羨ましぃー……。

 そんなんチートアイテムじゃん。


「それでメイドと見習い女王様を?」

「はい。スキルと職業特性が良かったので」

「なるほど……」


 あれ? でも最初に職業は『SMバニーメイド女王様』って言ってなかったけ?


「メイドは武器の使用制限無し、見習い女王様は攻撃に『忠誠』を付与できて、モンスターを一定確率でテイム出来るんです。他にも色々ありますけど、この二つの職業シナジーが凄くて」


「確かにそれは便利ですね」


 どんな武器でも使用できて、しかも一定確率でテイム可能って凄い。

 俺の『変質者』は短刀、鞭、銃関係しか装備できないし、その制限がないのは大きいな。


「で、その後、LV30になったときに上位職へクラスチェンジする際に、『バニーメイド』と『SM女王様』になったんですが、7回目のEXステージをクリアした時に『混成の宝珠』ってアイテムを手に入れてまして、二つの職業を一つに出来たんです」

「二つの職業を一つに?」

「はい。そうすると、よりレアで強力な職業になると説明書きにあったので、迷わず二つを一緒にしたんです」


 なるほど、それでSMバニーメイド女王様が誕生したという訳か。

 というか、LV30で上位職になれるんだな。

 ……『変質者』の上位職ってなんだろう?


「あ、佐々木さんって今レベル何なんですか?」

「22ですね」

「22……!?」


 大河さんは目を丸くする。


「あの強さでまだそのくらいのレベルなんですか。……信じられない。てっきりLV40は超えてると思ってました」

「そうですか? 割と一方的にやられてましたよね?」


 マジで消えたと思ったら、一瞬で鎖に拘束されてたもん。

 あれは本当にレベルが違う強さだと思った。


「でも反応してましたよね? 私が最初に使ったアレって初見殺し特化の攻撃なので、普通なら反応なんて絶対出来ないんですよ?」


 そうだったんだ。

 どんなスキル使ったんだろ?

 

「ちなみにメインストーリーは?」

「まだ3です」

「3……!?」


 再び驚愕する大河さん。


「いやいやいや、佐々木さん、LV22って、普通メインストーリー10~15くらいの強さですよ。私でもメインストーリー3の頃ってLV10くらいだったのに、どんな修羅場くぐり抜けてきたんですか」

「えーっとですね……」


 俺は大河さんにこれまでのプレイ内容をかいつまんで説明した。


「……あの蛇のクエストクリアしたんですか……? 会長でも無理だったのに」

「会長?」

「亜人解放戦線のリーダーです。『絶頂会長』って名前で、私のアルダン仲間です」

「アルダンの『絶頂会長』……? ひょっとして前回の頂点トーナメントで優勝してた?」

「あ、ですです。佐々木さんもアルダンやってるんですよね。……ちなみにアカウント名って?」

「『リュウ』ですよ。『異世界ポイント』と同じプレイヤーネームです」

「ッ……! マジかや……! うぇ……ふひっ」


 大河さんは俺の手を取ると、ぐいっと身を乗り出してくる。


「わ、私も同じです! プレイヤー名『トラ』です! ひょっとしたら、ひょっとしてと思ってたけど、本当に佐々木さんが『リュウ』さんだったんですね! うわぁ、こんな展開あります!? 信じられないっ」

「ですね。私も驚きました。大河さんがトラさんだったんですね」


 びっくりだな。単なる偶然だと思ってたけど、まさかの同一人物だったなんて。

 ……てことは、俺はずっと大河さんとアルダンをやっていたのか。

 色々とリアルの愚痴を言ってたし、今思い返せばちょっと恥ずかしいな。

 大河さんは倒れ込むように席に着くと、放心状態になる。


「こ、こひっ…………こんなんもう運命やろ。へっ、へへ……へへへ」


 なんかブツブツ呟いてるけど、よく聞こえない。

 あ、ちょっとトイレ行きたくなってきた。


「すいません、ちょっとお手洗いに」


 放心状態の大河さんを残し、俺はトイレに向かった。

 


 

「……いやー世間って狭いなー」


 お隣さんがトラさんで、アルダン仲間で、『異世界ポイント』のプレイヤーでエロ漫画家だったなんて。

 ちょっと偶然にしても出来すぎてると思う。


「あ、そういえばトォオッターもやってるって言ってたな」


 フォロワーどれくらい居るんだろう。

 スマホを取り出し、ちらっと覗いてみる。

 お、結構フォロワー多いな。

 固定がさっき話してたコミカライズの宣伝だな。

 その下が――。






虎にバニー@キッチンカー全4巻発売中 4分前

『今日オフ会なんなんだけど、クッソワロタwww

 これやべぇっすわ。相手、ガチのイケメン

 しかも社会人でめっちゃ礼儀正しいのよ

 ワイと全然違う。ワイ、無職~。現在、連載ゼロの無職だも~ん

 あ~~良い匂いするぅ~~~(すぅー、はぁ~~~

 ちな、実はもう裸も見てるんですよ。ラキスケで(ひゃっふぅ

 いやぁ腹筋割れてたし、二の腕も中々にエッチでしたなぁ~

 顔も整ってるし、ガチ仕事出来る人って感じの雰囲気っすわ

 えっち~~~。もう独身貴族えっち過ぎるよ~~~

 えっち過ぎて捕まるんじゃないかって心配になっちゃうわけです

 てか、もうこれデートですよ完全に(おっふぉう!

 だってちゃんと喫茶店行くまでに車道側歩いてくれるんっすよ!

 ワイのクソダサ私服もちゃんと褒めてくれたんれす~~(泣

 しかもしかもしかも!

 なんと別のゲームでもフレンドだったんっすよ~~(ニッチャァ

 お互い他人だと思ってたのにこれもうディスティニーっすわ

 もうこれワンチャンありますわ。虎にバニー先生一世一代の大勝負っすわ

 てか、結ばれるしかない。結ばれよう

 というわけで、みんな!

 これからは虎にバニー先生は、今後虎にバニー先生(既婚)になるかもしれないっす

 がぉ~~~~~~~~

 はぁい! 現場からは以上でぇす』



『先生相変わらずの怪文書ですねw』  2分前

『ババア見栄はるな』         1分前

『商業作家の姿か……これが?』    1分前

『信じられぬモノを見た(何度目』   1分前

『生き恥』              40秒

『おい編集、さっさとこれ回収しろよ』 30秒

『www 相変わらず壊れてるw』   10秒

『先生、もう誰も信じてませんよ……』 10秒

『キッチンカー続きまだ?』       5秒

『また先生の脳内妄想が爆発してるw』  3秒




「…………」


 ……どうしよう。

 もうお会計済ませて、帰りたくなってきた。



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― 新着の感想 ―
主人公をチラ見するたび、この怪文書が公開されてたのかな? 元からイケメンだった(らしい)主人公は、いつからお隣さんに狙われて……態度と雰囲気から、第1話の前からだ……(震え声)
更新お疲れ様です。 冗談半分で「美味しく頂いてしまえ」と前回書きましたが、それ以前に先方がヤる気満々だった件についてww 冷静に考えたなら……私生活はアレの極みですがそれ以外はわりと馬が合うみたいだ…
生活力皆無だけど性格はいいし 美人ならいいんやない?
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