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48/80

48.バニーは良いものだ。そうは思わんかね?


 クリア通知のアナウンス。

 一気に疲労感が押し寄せてくる。

 だが同時に達成感もあった。


「やった……!」


 今回もEXステージをクリアすることが出来た。

 その事実に心が震える。

 ……人間の尊厳はクリアするたびに落ちてる気がするけど。

 なんだよ、全身黒タイツって。

 コ〇ンの犯人じゃねーんだぞ。


「きゅー♪」


 顔の黒海苔をはがすと、雲母がお疲れ様と、ほっぺをなめてくる。

 うーん、可愛い。

 ていうか、なんかほっとした感情が伝わってくる。

 ……ひょっとして黒海苔姿で顔が見えないのが嫌だったのだろうか?


「黒い空間に戻らないってことはまだイベントが残ってるのか?」


 ともかく雷蔵と合流するか。

 その後にメイちゃんたちの元へ向かおう。

 俺は収納から発煙筒を取り出し、煙を上げた。

 クリア出来たら、一本上げる。こちらに合流しろの合図だ。

 最初にそう打ち合わせで決めていたからだ。

 ややあって、森の方からも煙が一本上がった。

 了解、の合図だ。


「……ん?」


 カッと森から何かが光った。

 ややあってから、激しい轟音と共に雷が空へと上がるように発生した。


「な、なんだ!?」


 今のはまさか雷蔵の雷撃か?

 だが、その規模が今までとは桁違いだ。

 いったい何があった?


「……まさか」


 しばらくして、雷蔵が森から現れる。

 だが、その姿は以前とは別物だった。

 肉体は大きく成長し、額の側面からは二本の短い角が生えている。

 全身を覆っていた黒海苔は剥がれ、わずかに下半身を隠すのみ。

 何より特筆すべきは背中に浮かぶ八つの雷太鼓だ。

 その姿はさながら――『雷神』。


『モンスター図鑑が更新されました』


『モンスター図鑑№12 ライジング・ゴブリン

 アルタナに生息する上級モンスター

 ゴブリンの希少上位種であり、別格の存在

 知能、身体能力も高く、あらゆる武器を使いこなす

 雷の化身と称されるほどの、強力な雷スキルを使用する

 討伐推奨LV30』

 

 

「雷蔵……お前、進化したのか?」

「ウガァ♪」


 雷蔵は嬉しそうに頷いた。

 近くで見ると、マジでデカい。

 二メートル以上ある。

 圧が凄い。大胸筋が叫んでる。


「雷蔵、一旦カードに戻ってくれるか。どう進化したのか確認したい」

「ウガ」


 同意も取ったので、雷蔵を一旦カードへ戻す。


『名前 雷蔵 LV20

 種族 ライジング・ゴブリン

 状態 装備破損

 戦闘力 ☆☆☆☆☆+

 スキル 防衛、鉄腕、雷撃、雷閃

     雷神形態、紫電一閃、反雷壁

 忠誠度 最良』


 うぉっ、なんかすごそうなスキルが三つも増えてる。

 戦闘力も星三つだったのが、星五つ。

 それぞれのスキルはどんな感じなんだ?


・雷神形態 アクティブ 全ステータス+50%

            保有スキルの効果強化(大)、デバフ無効

            効果時間300秒

            各ステージ最大3回まで


・紫電一閃 アクティブ 雷撃による強力な単体攻撃を放つ

            雷撃は武器に纏わせることもできる

            命中した対象を80%でスタン

            防御、敏捷-20%、CT60秒


・反雷壁  アクティブ 物理・魔法ダメージ-40%

            物理ダメージの25%を、雷を付与して反射。

            40%で相手をスタン

            効果時間60秒、CT80秒


 どのスキルもかなり強力なスキルだった。

 特に雷神形態が凄い。なんだよ全ステータス+50%にデバフ無効って……。

 これ、正面からの戦いだと、俺より強いんじゃなかろうか?

 あと進化して機嫌がいいのか、黒海苔が剥がれたからか、忠誠度が『最良』に戻っていた。良かった。


「討伐推奨はLV30だけど、雷蔵自身はLV20なのか……」


 討伐推奨レベルはプレイヤーにとってのレベルで、モンスターのレベルとは違うってことなんだろうな。

 確認が済んだので、俺は再び雷蔵を召喚する。


「雷蔵、今後もますます頼りにさせてもらうぞ」

「ウガオゥ」


 雷蔵も任されよと元気よく返事をする。


「あ、新しい装備は、後でちゃんと買ってやるからな。今は前の装備で許してくれ」

「ウガァ♪」

 

 黒海苔から装備を変更すると、雷蔵はめちゃくちゃ嬉しそうだった。

 ……どんだけ黒海苔嫌いだったんだよ。

 俺も黒海苔を装備から外し、元の姿に戻る。

 パンツマン、再来。こんな姿が元の姿って嫌だー! 黒海苔マンも嫌だったけどさ!

 

「それじゃ、メイちゃんたちのところに戻るか」

「ウガァ」

「きゅー」


 雷蔵たちを再びカードに戻し、俺はメイちゃんたちの元へ向かった。

 

 

 

 

 移動中はとくにトラブルはなかった。

 村人たちの憔悴しきった姿はあちこちに見られた。

 生存できたとはいえ、今後の復興は相当大変なものになるだろう。


「おや……?」


 メイちゃんたちの元へ向かうと、知らない亜人が何名か増えていた。

 その中には、市場で見かけたあの蜥蜴の亜人たちもいる。


(コロロさんたちと話し合っている……?)


 ひょっとして周囲の村や町から応援に駆け付けたのだろうか?

 だが、その中に一人だけ妙に異彩を放つ奴がいた。


「……あれってバニースーツだよな?」


 何故かバニースーツを着ている奴がいたのだ。

 頭にはうさ耳のカチューシャ、足は網タイツ。

 顔にはSMクラブの女王様がつけているようなドミノマスク。


(うわぁ、エロいなぁ。それにデカい……)


 距離が離れていても分かる。

 あのバニーさん、相当な巨乳だ。

 なんで公衆の面前であんなアホな格好してるんだ?

 ひょっとして変態さんなのだろうか?

 でもなんかどこかで見たことあるような……。


「あ、お兄さんだ~。お~い、こっちですぅ~」


 こちらに気付いたメイちゃんが手を振ってくる。

 俺も手を振ると、他の亜人やバニーさんもこちらに視線を向けた。

 その瞬間、空気が変わった。

 

「なっ、なんだあの怪しい変態は!?」

「怪しいを絵に描いたような男だ!」

「敵か!? 乳首に星まで付いてる! どう見ても敵だ!」


 警戒し、何やら武器を構えたではないか。

 ひょっとして俺のこと、敵だと思ってる?

 いやいや、待ってくれ。

 俺のどこがそんなに怪しい――いや、怪しさの塊だわ。

 そりゃ、警戒するわ。誰だってそうする。俺だってそうする。畜生。


「ま、待ってくれ! 俺は――」


 とりあえず弁解しようと声を上げようとした。


 その瞬間――バニーさんが消えた(・・・)


「え……?」


 地面を蹴る足音。

 そしてこちらに迫る気配。

 

「ッ――!?」


 気付いた時には、俺の体には無数の鎖が絡みついていた。

 馬鹿な、早すぎる!?

 全く反応出来なかったぞ?


「……悪いですが、拘束させて貰いました。あ、アナタが悪いんですよ。そんな怪しすぎる見た目をしてるから……」


 声の方を見ればあのバニーさんが居た。

 怪しいってアンタに言われたくないよ!

 俺から見ればアンタも十分、怪しい格好だよ!

 

(ていうか、なんだあのでけー武器は!?)


 バニーガールが持っていたのは二メートルはあろうかというバカでかい斧だった。

 しかもただの斧じゃない。

 斧の柄の先端からは鎖が伸びていた。

 どうやら、あの鎖で俺を拘束したらしい。

 よく見れば、足元に棘付きの鉄球まで付いているではないか。

 どうりで重いと思った。こんな武器使うなんて、どこの岩柱だよ。


(ていうか、ちょっと待て。今の声、どこかで聞いたような気が…)


 どこだ? 思い出せ……思い出せ……あっ。

 バニーさんがこちらに近づいてくる。

 改めて近くで見ると、かなりきわどい格好だ。

 股の部分なんてハイレグみたいになってて、鼠径部が丸見えになっている。

 そして近くで見て、確信する。

 背格好や輪郭、そしてマスクの下に見えるその瞳。

 間違いない。彼女は――。


「さ、さあ答えてください。アナタはいったい――」


「あの……ひょっとしてアナタは大河さん(・・・・)じゃないですか?」


「…………ふぇ? えぇっ!?」


 バニーさんは一瞬、ぽかんとした後、盛大に後ずさった。

 その反応に俺は確信する。

 間違いない。彼女は俺の隣に住む隣人――大河茜さんだ。


「あ、ああアナタ、な、ななな、なんで私のリアルネーム知って?」


「いや、俺ですよ、俺。ああ、このマスクじゃ分からないか。隣に住んでる佐々木竜司です」


「え、さ、佐々木、さん……? え、嘘、ほんとに……?」


「はい」


「…………」


 バニーさん改め、大河さんはしばし呆然とした後――。


「す、すみませんでしたあああああああああああああああああああ!!」


 盛大に土下座をしたのだった。

 いや、どういう状況だよ、これ?



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― 新着の感想 ―
あーあ、出会っちまったか
こんにちは。 お隣さんはまさかのスケベバニーww 色んな意味で公私共に相性抜群かもしれない(笑)
縛られた変態パンツマンに土下座するクソデカゴツ斧もった際どバニーガール …は??? 多分これ文字にしちゃだめだ
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