表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アプリ『異世界ポイント』で楽しいポイント生活 ~溜めたポイントは現実でお金や様々な特典に交換出来ます~  作者: よっしゃあっ!
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/118

38.救われぬ少女に救いの手を その1


『メインストーリーを開始します』


『メインストーリー3 『救われぬ少女に救いの手を』 

 クリア条件 呪術猿   の討伐、またはモンスターの全滅

 成功報酬 ポイント+50、女神の雫、3,000イェン』



 そのアナウンスと共に、白い光に包まれ、俺たちは森の入り口に立っていた。

 黒い空間に戻らずに、直接ストーリーが始まるのは初めてだな。

 報酬の女神の雫ってのはどんなアイテムなんだ?

 まあ、ひとまず事前に準備は整ってるし、装備やアイテムも特に新しいのは入荷してなかったし構わない。


「……村から離れちまったか」


 見ればすぐ後ろが『壁』になっている以上、もうステージをクリアする以外に村に戻る手段はない。

 メイちゃんが気がかりだが、こうなってはどうにもならない。


「呪術猿……」


 ひとまずコイツを倒せば、メイちゃんの呪いは解ける。

 村の連中の問題はその後だ。

 まずは画面を開いて、マップを確認する。


「……ずいぶん、フィールドが広いな」


 マップの広さは今までで最大だった。

 スプーンのような形状で、俺たちのいる場所から奥の広い空間までの一本道。

 そして奥の広い空間が、モンスターの存在を示す赤いアイコンで真っ赤に染まっている。

 

「何があるかは分からない。雲母、バフを頼む」

「きゅー」


 俺たちは雲母にバフを掛けてもらい、森の中を慎重に進む。

 すると、道の脇に宝箱と隠しアイテムを見つけた。

 これまでと違ってずいぶんと分かりやすい。

 

(こういうのってモンスターとの戦闘に集中させるパターンだよな……)


 事前に全部アイテムを回収できるようなステージはたいていモンスターとの戦闘が面倒で、それに集中しなければいけないことが多い。

 手に入れたアイテムは1,500イェンと『古びた手帳』。

 お金はともかく手帳の方はあからさまに怪しいアイテムだ。

 雷蔵たちに周囲を警戒してもらい、手帳の中身を確認してみたが、見たことのない文字がびっしりと書かれていた。

 

(……読めねえな……)


 せめて図面やイラストでもあればまだ予想は立てられたんだが、文字だけだとどうしようもない。

 今回の戦闘で役立つアイテムって訳ではなさそうだ。……多分、だけど。


「さて、そろそろだな。二人とも、気を引き締めろ」

「ウガォゥ」

「きゅー」


 敵のアイコン位置へと近づいてきた。

 細い一本道を抜け、広場のような場所へと出る。

 その瞬間、俺たちのいた場所の左右から順に松明が灯る。

 それは少しずつフィールドを照らし、その全容が明らかになる。


「おいおい、ずいぶんと派手なお出迎えだな」


 そこに居たのは猿のモンスターの集団だった。

 フィールドの中央には剣や斧、盾を構えた筋肉質な戦士の集団。

 左右には太鼓や角笛のような楽器を装備した者たち。

 その後方に、ローブに身を包んだ魔術師然とした猿たち。

 そして魔術師たちの中央、生物の骨で組み立てられた椅子に座る一際、存在感を放つ黒い猿。

 全てを合わせれば、軽く百体は超えるだろう。


『モンスター図鑑が更新されました』


『モンスター図鑑№7 森猿ビリアン・エイプ

 アルタナ全域に生息する猿のモンスター

 知能が高く、個体によって様々なスキルを習得する

 常に集団で行動し、息の合った動きで敵を翻弄する

 極稀に特殊なスキルを有する個体が生まれる

 討伐推奨LV3』


『モンスター図鑑№8 戦士猿ヒーロー・エイプ

 アルタナ全域に生息する猿のモンスター

 森猿の進化系

 優れた身体能力を有し、武器や肉体を強化するスキルを好んで使用する

 常に集団で行動し、息の合った動きで敵を翻弄する

 極稀に特殊なスキルを有する個体が生まれる

 討伐推奨LV8』


『モンスター図鑑№9 魔術猿マジック・エイプ

 アルタナ全域に生息する猿のモンスター

 森猿の進化系

 優れた知力、魔防を有し、魔法系スキルを好んで使用する

 常に集団で行動し、息の合った動きで敵を翻弄する

 極稀に特殊なスキルを有する個体が生まれる

 討伐推奨LV8』



『モンスター図鑑№10 音猿ホーン・エイプ

 アルタナ全域に生息する猿のモンスター

 森猿の進化系

 優れた知力、魔防を有し、支援系スキルを好んで使用する

 彼らによって群れの猿は更に強化される厄介な存在

 極稀に特殊なスキルを有する個体が生まれる

 討伐推奨LV8』



『モンスター図鑑№11 呪術猿カース・エイプ

 魔術猿の進化系

 非常に知能が高く、様々な魔法スキルを体得し、特にデバフ系を好んで使う

 森で出会った人々に呪いを振りまく厄災の象徴

 森猿、戦士猿、魔術猿などを率いるリーダー的存在

 数十頭からなる群れを作り上げる

 極稀に特殊なスキルを有する個体が生まれる

 討伐推奨LV18』



 流れ込んでくる目の前のモンスター共の情報。

 今回はこの猿の大群が相手って訳か。

 EXステージならともかく、通常のステージでこの数は難易度おかしくないか?

 そりゃ呪術猿を除けば、レベルは全体的に低いけど……。


(猿の大群も気になるが……なんだありゃ?)


 呪術猿の後方、そこに怪しげな祭壇のようなものが建てられている。

 祭壇の中央には真っ黒な球体が祭られ、禍々しいオーラを放っている。


「ギッ……キキキ、エ、モノ……エモノダ! オマエ、ぷれいやーダナ!」

「ッ……!?」


 呪術猿は立ち上がると、驚くべきことに人の言葉を発したではないか。

 知能が優れているとはあったが、まさか人の言葉まで話すとは。

 しかもコイツ、プレイヤーと言ったか?

 だが会話が出来るのなら、念のため確認しておこう。


「……会話が出来るなら、聞きたいことがある」


「キキキ、ナ、ンダ?」


「メイという羊人(シープル)の少女に呪いを掛けたのはお前か?」


 ストーリー上、間違いないとは思うが念のためだ。

 図鑑の説明によればコイツは二回も進化している上位種。

 そんな奴が同じ森に何体もいるとは思わないが……。

 すると呪術猿の口がニタリと三日月のように裂けた。


「キキッ、キキキキキ! アノ羊人ノガキ死ンダ? 死ンダナラヨコセ! 羊人ノ毛、イイ服ニナル! 肉食ウ! 呪イカケタ! アレ、我ノモノ!」

「分かった。じゃあ死ね」


 俺は着替えを発動し、武器を短銃に変更。

 喋り続ける呪術猿へ向けて引き金を引く。

 

「ギギャッ!?」


 それは吸い込まれるように呪術猿の眉間を打ち抜き、風穴を開けた。

 コイツが呪いを掛けたって分かったなら十分だ。

 コイツを殺せば、メイちゃんの呪いは解ける。


『経験値を獲得しました』


 頭の中に響くアナウンス。

 しかし、呪術猿は倒れなかった。

 代わりに、奴のそばにいた魔術猿が一体、頭から血を流して倒れた。


「ギッ、ヒッ、ヒッ……サスガ、ぷれいやー、ツ、ヨイ。デモ、我、ニハ意味ナイ。オマエハ、贄。オマエダケジャナイ。羊人、村人、ゼンブ、我ノモノ! モウスグ準備、トトノウ! アノ村ハ滅ビルノダ! キキ、キキキキキキ!」


 ……今のはなんだ? 自分のダメージを味方に押し付けたのか?

 それにしてもコイツ、あの村を滅ぼすつもりだったのか。


「村を滅ぼす、ねえ。気が合うじゃないか。俺もあの村の連中嫌いだよ。大嫌いだ」

「キキ! 意外ダ! ぷれいやー、気ガ合ウ! キキキ!」


 呪術猿は撃たれたことも、仲間が死んだこともまったく気にした様子もなく笑う。

 周りの猿共は憎らし気に俺を睨みつけているのに。


「……気が合うんなら、交渉できないか?」

「交渉……? キキ、ナンダ?」


 意外にも呪術猿は興味を持ったようで、身を乗り出してくる。


「あの子の呪いを解いてくれないか? あの子や、あの村の亜人たちを見逃してくれるんなら、俺もお前たちのことを見逃してやるけど?」

「……」


 呪術猿は一瞬、笑みをひそめてじっと俺を見つめる。

 まるで俺の言葉を吟味するように。

 そして、数秒して、再び口元がゆがむ。


「キキッ! キキキキキ!」


 呪術猿は笑った。

 パンパンと手を叩いて、腹を抱えて笑った。


「面白イ! ぷれいやー、本当ニ面白イ! 今、逃ゲルナラ、オ前ラ、ダケナラ見逃シテヤル! 我、面白イヤツ好キ! キキキキキ!」

「そいつはありがたいな。んで……俺のお願いの答えは?」

「ソッチハ、駄目! 人間、亜人、ゼンブ、殺ス! 呪イ、解カナイ!」

「そっか、じゃあ交渉決裂だな」


 まあ、分かってたけどな。

 そもそもこんな会話、ただの時間稼ぎだ。

 おかげで検証も仕込みも済んだ。


「キキ、残念。ジャア、仕方ナイ」


 俺が武器を構えると、呪術猿も体から濃密な黒いオーラを発生させた。

 呪術猿はすぅっと手を上げ――。


「モノドモ! ぷれいやーヲ殺セエエエエエエエエエエエ!」

「「「「ウッキイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイッッ!」」」」


 号令。

 猿たちが一斉に動き出す。


「来るぞ!」

「ウガァ!」

「きゅー!」


 猿共との戦いが始まった。

 ……しかし一つ気がかりなのは――。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
こっちはパンイチだぞ!猿の分際で鎧とかローブ着てんじゃねえ!!(理不尽な怒り)
女神の雫はおそらく治癒アイテムでメイちゃんの体を元通りにする効果があるのでしょうね。 それにしても思わせぶりな終わり方です。次を読まないではいられないではありませんか。
村滅びたら羊亜人の娘も生きてけないのが辛いとこ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ