3.チュートリアル その1
光が収まると、目の前には広大な大自然が広がっていた。
「うぉ、すげーなこりゃ……」
夢の中でこれほどのリアリティを感じたのは久々だ。
見渡す限り一面の森。
それもアマゾンとか、テレビで見るようなザ・秘境って感じの大森林。
「そういやアルダンでもこういうフィールドあったなぁ……」
メインストーリーの序盤にこういう感じの森があった。
主人公が突然目覚めると、森の中に居てモンスターに襲われるのだ。
それを偶然、遭遇した仲間(初期配布)と共に倒す。
まさにチュートリアルって感じの内容。
初期配布の仲間だと結構、そこそこ苦労するんだけど、一回クリアすると手持ちのキャラを選択できるから、二回目からはくっそ楽にクリア出来た。
懐かしいなぁ。最初の頃は、初期配布くっそつかえねぇとか、所詮は無料配布の敗北者じゃけえとかトラさんとさんざん弄り倒した。
一周年イベントで、無事強化アイテムでSSR並の性能にはなったけど、使うには愛が必要なキャラ達だった。
いや、対戦環境によっては新キャラの対策メタになったりもしたんだけど。
そんな風に懐かしんでいると、ピロンと変な音が聞こえた。
「なんだ?」
すると目の前に半透明の板が出現した。
『チュートリアルを開始します
クリア条件 モンスターの全滅、もしくは脱出ポイントに到達する
成功報酬 ポイント+10、護身用のナイフ』
半透明の板には日本語でそう表示されていた。
「へぇー、すっごいゲーム感丸出しだな。脱出ポイントってどこだ?」
右端にある四角いアイコンをタップすると、画面が切り替わり、地図のような画面が出現した。
全体を俯瞰して、すげーざっくりと描いた感じのやつ。
地図の左下には緑色の丸いアイコン、少し離れたところに赤色の丸。
そして地図の右上に緑色の四角いアイコンと矢印。
体を動かすと、それに併せて緑色のアイコンが動く。
つまり地図の左下の緑が俺、右上の矢印のところが脱出ポイントだろうか。
「ここに移動すれば良いってことか。あ、でもモンスターを全滅させるか、脱出ポイントまでたどり着くって書いてたな。てことは、モンスターも居るのか?」
地図に表示されている赤い丸がこっちに近づいてくる。
その方向へ目を向ければ、茂みから何かが出てきた。
「ギャヒヒ……」
緑色の肌をした小人のようなモンスターだ。
鼻と耳がとんがってて牙がギザギザ。装備は腰布と錆びたナイフだけ。
「おぉ、ゴブリンだ」
夢だけどめっちゃリアリティがあるな。
まるで本当に生きているかのようだ。
「とりあえずモンスターについての情報はっと……」
半透明の板を操作してどこかにモンスターについての情報が載ってないか調べてみたが、特になし。
これ、あれかな? クリアか倒した後に情報が表示されるタイプかな?
「とりあえずアレを倒すか、逃げてゴールまでたどり着けば良いのか」
うーん、確かにゲームのチュートリアルって感じがする。
「さて、どっちにするか……」
ゴブリンはとても弱そうだ。
そこら辺の石でも叩きつければ倒せる気がする。
でも走って逃げることも出来る気がする。
どちらを選ぶか? いや、でもそれよりもだ。
夢とは言え、チュートリアルとは言え、これはゲームだ。
だとすれば、まずやるべきことは一つだろう。
「――まず服を脱ぎます」
カチャカチャと、ベルトを外し、俺はズボンを脱いだ。
「……ギャ、ギャヒィ!?」
ゴブリンはとても驚いていた。
さあ、チュートリアルを始めようか。