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23.EXステージ2 その2


 援軍が現れた瞬間、俺はまず『不快』と『着替え』を発動させた。


「ッ……シャァァ!?」


 一体のジャイアント・スネイクがその場で動きを止める。

 微かに震えているところを見るに、どうやら『麻痺』に当たったようだ。


「よし、雷蔵! このまま距離を取りつつ後退だ!」

「ゴァゥ」


 こちらに向かってくるジャイアント・スネイクを警戒しながら、俺たちは後退。

 更に『着替え』によって持っていた『盗賊の短剣』と『丸盾』を二丁の短銃へと変更。

 ジャイアント・スネイクたちへ向けて発砲する。


「くらえっ!」

「ッ……ジュラァァ!」

「シャァァァ!」


 合計十二発の弾丸の内、命中したのは僅か三発。

 それでも奴らの動きを牽制するには十分だった。


「――『不快』」


「シャァァ!?」


 更にもう一体のジャイアント・スネイクに不快を当てる。

 他の奴らより動きが遅くなった。こっちは『敏捷-20%』が当たったか。

 出来れば『麻痺』か『苦痛』がよかったが、こればっかりは運だ。

 同時に『着替え』も発動する。

 ドンッ、ドンッ、ドンッ! と続く発砲音。


(……なるほど、こういう使い方もできるのか)


 弾倉も『着替え』の対象になっているらしく、リロードを一瞬で行うことが出来た。

 おまけにパッシブ効果で性能も30%上がっている。

 一回目よりも威力が高い。


「短銃と弾倉が別々で売られていたから、もしやと思って試してみたが大正解だったな」


 再びスキルのCTクールタイムが終わる。

 

「シャァア!?」


 三体目の不快。

 コイツは見た感じの変化がない。

 敏捷以外のステータス減少か、もしくは沈黙だな。


 四体目は運よく『麻痺』を引き当てた。

 少し離れたところを見れば、一体目もまだ『麻痺』から回復していない。

 ということは、『麻痺』の効果は少なくとも二十秒以上。


「よし、十分だ。雷蔵、残った一体に雷撃を!」

「ゴァォオオウ!」


 雷蔵の電撃が迫りくるジャイアント・スネイクの一体に命中する。


「シャァアアアアア!」

「ジュラァアアアアア!」


 敏捷デバフを食らった個体と、もう一匹がこちらへ迫る。

 蛇行ではなく、槍のような直線的な動き。

 当然だが、その動きには差がある。


「まずはお前からだ」

「ッ――シャ……」


 一気に敏捷デバフを食らった個体へ接近。

 紙装備に加えて、派手なパンツの効果で俺の敏捷は更に上がっている。

 首の後ろ――正確には側面部のエラに銃弾を叩き込む。


「速度の遅れを補おうと、動きを変えたのは失敗だったな」


 直線的で軌道もバレバレだ。

 急所にモロに銃弾を受けたジャイアント・スネイクは一瞬で絶命した。


『経験値を獲得しました』


「まずは一体」


 次いで近くで『麻痺』で倒れている個体へも発砲。

 こちらも一撃で絶命した。


『経験値を獲得しました』


 CTが回復し、『不快』、『着替え』を発動。

 雷蔵は二匹を相手に防戦に徹してくれていた。

 俺は武器を『盗賊の短剣』へと変更。


「こっちだジャイアント・スネイク!」

「シャァァ!」


 一体のジャイアント・スネイクが俺に向けて尾を叩きつけようとした。

 しかし、その瞬間、奴の動きが止まった。


「ッ……!?」

「?」


 それは奴自身も予想外だったようで、動揺が目に見えて伝わってきた。

 

(そうか。入ったデバフは『沈黙』か)


 沈黙はスキルを使用不可にするデバフだ。

 尾による攻撃で、ヤツはスキルを使おうとしたのだろう。

 それが発動しなくて混乱したってところか。


「じゃあ、遠慮なく倒させてもらうぞ」


 この隙を見逃す手はない。

 俺は一気に接近し、エラへとナイフを突き刺す。


『経験値を獲得しました』


「ゴアォウ!」


 敵が一体に減ったことで、雷蔵も一気に攻めに転じた。

 丸太のような太い首が刎ねられる。


『経験値を獲得しました』


 よし、これで残るは一体。

 最初に麻痺を食らった個体だけだ。

 そちらを見れば、ようやく麻痺から回復したようでこちらへ向かってきている。


(……麻痺の効果はおよそ一分ってところか)


 おそらく他のデバフも効果時間は一分程度なのだろう。

 不快CTは五秒、重ね掛けも可能ということが分かった。


「くっそ、無駄に強いな変質者」


 認めよう。俺が取得しようとしていた『軽業師』よりも、この職業は強力だ。

 ジャイアント・スネイク五体が相手でも十分に戦える。


「雷蔵、コイツはすぐに倒さないでくれ。念のためデバフの効果を検証したい」

「ゴァウ」

「……シャァァ」


 俺と雷蔵の意図が伝わったのか、ジャイアント・スネイクは怯えたような仕草をする。


「悪いが付き合って貰うぞ」


 それからしばらくの間、俺はスキルの効果を検証した。


『経験値を獲得しました』


『ササキ リュウジのLVが10から11に上がりました』


 レベルアップを告げるアナウンスが響いた。




 それから一分ほど、俺と雷蔵が息を整えていると、増援のジャイアント・スネイクが出現する。数は五体。


「よし、スキルの検証は十分に済んだ。雷蔵、さっきと同じ戦術で行くぞ」

「ゴァオゥ!」


 速攻で『不快』を発動。

 今度は『苦痛』が発動した。

 距離を取りつつ、一体、また一体と『不快』でデバフ状態にしてゆく。


(苦痛、毒、ステータス減少、沈黙……よし、理解した)


 それぞれを受けた際のジャイアント・スネイクの動きの変化が分かった。

 これでどのデバフを受けたかをすぐに察知できる。


「今度はこっちの武器の練習だ」


 交換したのは『獣使いの鞭』。

『盗賊の短剣』が近距離、『短銃』が遠距離だとすれば、鞭は中距離用の武器ってところか。


(両手に鞭を持った変態仮面パンツマン……)


 どこからどう見ても変質者です。畜生が。

 やるせない怒りを胸に、俺はジャイアント・スネイクへと鞭を叩き込む。


「シャァァアアアアアアア!?」


 ジャイアント・スネイクは苦痛に身をよじる。

 どうやら鞭での攻撃は意外と効果があるようだ。

 いや、そもそも鞭は昔から拷問で使用されてきたほどの凶悪な武器だ。

 その要点は致命傷を与える事よりも、『痛み』を与えることに適している。

 だが痛みだけでは動きを止めることしかできない。


「ふむ……よりダメージを与えるなら――こんな感じかっ」


 持ち方と振り方を変えてみる。

 パァン! と空気が弾ける音。

 激しいうねりを伴って、音速を超えた鞭の先端がジャイアント・スネイクへと叩き込まれる。


「ジュラァァアアアアアアアアアア!?」


 先ほどよりも激しい悲鳴。

 痛みだけでなく、今度は明確なダメージとして伝わったようだ。

 なるほど、腕だけじゃなく手首の使い方が大事なんだな。


「ふはははは! ほらほらぁ! もっといい声でお泣き!」

「シャァァ! シャァァァアア~~!?」


 ジャイアント・スネークは痛い、痛いと泣き叫ぶ。

 気分はまるで女王様。背筋がなんかぞくぞくする。

 ……はっ、何を考えているんだ俺は。何を口走っている?

 庇うように別の個体が俺に襲い掛かってこようとするが、その瞬間、俺は『着替え』を発動させ、片方の鞭を短銃へと変更する。

 闇雲に突っ込んでくるだけじゃただの的だ。


「そんなにお口を開けて、なんてはしたない子だ。たっぷり食らいな!」

「ッ……シャァァァァ!?」


 大きく開いた口内へと六連発の弾丸をプレゼントだ。

 内側から銃弾を浴びたジャイアント・スネイクはたまらず絶命した。

 やっぱ外側に比べて内側からの攻撃はダメージがデカいな。


「――『不快』」


 CTが終わるとともに、即座に別個体へ『不快』を発動。

『毒』状態になった個体が身悶えしている。


「ゴアォォオオオオウ!」


 雷蔵も電撃を食らわせ、動きを鈍らせた瞬間に斬撃で首を落とす。

 どうやら雷蔵もジャイアント・スネイクたちの動きに慣れてきたようだ。


「よくやった、雷蔵。残りも一気に片付けるぞ!」

「ゴァオ!」


 残り三体となったジャイアント・スネイクを俺たちは危なげなく片付けた。

 

『経験値を獲得しました』

『ササキ リュウジのLVが11から12に上がりました』


「ふぅー、三回目の増援も問題なく倒せたな……」


 鞭の動かし方もだいたい理解できた。

 増援二回でレベルが二つも上がるとはな。


「……認めたくないが、『変質者』の恩恵はデカいな」


 ステータスを確認して驚いた。

 最初のころに比べて明らかに数値の伸びがいいのだ。

 変質者は攻撃、知力、魔防、敏捷に高成長補正と記載されていたから、その影響だろう。

 地力が伸びれば、その分『紙装備』の伸びも大きくなる。


「……残る問題は体力だな」

「ゴァゥ……」


 俺も雷蔵も息が上がっていた。

 増援が果たしてあと何回続くか分からない。

 少しでも体力を温存しなければ。


「雷蔵、次の増援は四体倒したら、残る一体をわざと残すぞ。出来るだけ瀕死の状態で、だ」

「ゴァ」


 雷蔵も「了解だ」と頷く。

 五体のジャイアント・スネイクを倒せば増援は現れる。

 なら、逆を言えば一体でも残っていれば、増援は現れないのだ。

 たとえその一体が瀕死の状態であってもな。

 これに関しちゃ、ゲーム仕様に感謝だな。


「さて、そろそろだ。雷蔵、やるぞ」

「ゴアゥ!」


 増援のジャイアント・スネイクが現れる。

 四度目の増援。戦いはまだまだ続く。



……そろそろタグ詐欺になりそうだから、タグに『主人公は変態』を追加した方がいいかもしれないですね

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― 新着の感想 ―
ありきたりな感想ですみませんが、変質者は強いですね。 でも職業「変質者」なのですから「主人公は変態」と言うのはちょっと違うような気がしますが・・・
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