22.EXステージ2 その1
『EXシナリオを解放します』
『メインストーリー2 EX『森の異変 蜿蜿長蛇』
クリア条件 モンスターの全滅
成功報酬 ポイント+200、盗賊頭の短刀、50,000イェン』
視界が暗転し、俺は再び森の中にいた。
「……場所は同じだな」
フィールドマップで確認したが、先ほどと同じで間違いない。
まずはカードを取り出し、雷蔵を召喚した。
「雷蔵、悪いな。すぐに呼び出して」
「ゴァォ、ゴァウ」
雷蔵は気にするなとばかりに、笑みを浮かべる。
「今回はモンスターとの戦闘だ。周囲に注意してくれ」
「ゴァウ」
雷蔵と共に周囲を警戒する。
今回のクリアポイントは200。
前回の倍だ。それ相応の難易度と考えるべきだろうな。
「シナリオのタイトルは『森の異変 蜿蜿長蛇』か……」
蜿蜿長蛇って部分から察するにまた蛇、か?
それにこの意味から察するに……。
「シャァァ……」
そう考えていると、森の奥からモンスターが現れた。
やはり蛇のモンスターか。
灰色の鱗に、赤い瞳が爛々と輝いている。
だがなによりも驚くのがその大きさだ。
シャドー・スネイクの数倍はデカい。
まるで電柱が動いているみたいだ。
『モンスター図鑑が更新されました』
『モンスター図鑑№4ジャイアント・スネイク
グランバルの森に生息する中級モンスター。
シャドー・スネイクの進化系。
視力、聴覚は低いが、非常に優れた皮膚感覚とピット器官を有している
体長は最大で10メートルまで成長する。
牙には強力な麻痺毒があり、これを獲物に注入し動きを麻痺させ絞め殺す。
極稀に特殊なスキルを有する個体が生まれる
討伐推奨LV8』
なるほど、シャドー・スネイクの進化系か。
それでも討伐推奨LVは狂鎧大猪よりも低い。
だがこれはEXシナリオだ。油断はできない。
「シャァァァァアアアアアアア!」
ジャイアント・スネイクが襲いかかってきた。
確かに動きもシャドースネイクに似ている。
だがスピードはシャドー・スネイクよりは遅い。
「雷蔵! 雷撃!」
「ゴァァオオウ!」
雷蔵の口から強力な電撃が放たれる。
青白い光の閃光は一瞬の下に、ジャイアント・スネイクへと命中した。
「ジャァァ……」
ジャイアント・スネイクはうっとうしそうに体をくねくねとねじる。
……効果は薄そうだな。
あの長い体や、尻尾がアースの役割を果たしているのかもしれない。
「スタンすれば楽に倒せると思ったが、問題ない」
食らったことでデバフの防御-10%は付与されたはずだ。
「次は俺の番だ! 食らえ『不快』!」
俺はジャイアント・スネイクに向けて『不快』を放つ。
雷蔵の『雷撃』と違い、俺の『不快』は見た対象にランダムなデバフを一つ付与するスキルだ。
デバフの種類は『攻撃・知力-10%』、『防御・魔防-10%』、『敏捷-2
0%』、『毒』、『麻痺』、『沈黙』、『苦痛』の全八種類。
どれが当たるかは分からない。
「ッ……シャ、シャァァァ……」
ジャイアント・スネイクの動きが弱まった。
苦しそうに悶えているところを見るに『苦痛』のデバフか?
「ゴァオウ!」
動きが鈍った隙に、雷蔵が接近し、斬撃を叩き込む。
「シャァァ……」
首を落とされ、ジャイアント・スネイクは絶命した。
『経験値を獲得しました』
モンスターを倒したことを告げるアナウンス。
「やけにあっさりと倒せたな」
「ゴアゥ」
雷蔵のもとへ駆け寄り、ジャイアント・スネイクの死体を確認する。
切り落とした部分から魔石が出てきた。
『ジャイアント・スネイクの魔石を獲得しました』
よし、魔石ゲット。
「雷蔵、食っていいぞ」
「ゴア♪」
雷蔵は嬉しそうに魔石をピーナッツのようにかみ砕く。
俺はジャイアント・スネイクの死体を検める。
「……なるほど、体の構造もシャドー・スネイクそっくりだな」
首の部分にエラのような器官がある。
違うのは、上あごの部分から生えた毒牙だな。
この構造的にヤマカガシみたいに毒を飛ばすことはなさそうだ。
「雷蔵、コイツはこの牙から獲物に毒を注入するタイプだ。絶対に噛まれないように注意してくれ」
「ゴァウ……?」
雷蔵は首をかしげている。
モンスターは倒したのに、なぜそんなことを忠告するのかという表情だ。
「忘れたか? コイツはシャドー・スネイクの進化系だ。つまり、その特性も引き継いでいる可能性が高い」
「……!」
俺が何を言いたいか、雷蔵も気付いたようだ。
同時に複数の睨みつけるような視線を感じた。
茂みの奥からだ。
「……倒してから1分か。そこもシャドー・スネイクと同じだな」
「「「「「――シャァァァ」」」」」
背筋のざわめきと共に、森の奥から五体のジャイアント・スネイクが姿を現した。
そう、増援だ。
シャドー・スネイクの上位互換ならば、当然、増援もあると思っていた。
シャドー・スネイクは三体だったが、こちらは五体。
出てくる数も上ってことか。
「……なるほどね。出てくる援軍全部、倒し尽くせってことか」
蜿蜿長蛇……これは蛇や竜がうねりながら進む様を示す言葉だ。
長く長く続くという意味でもある。
「……こりゃ、狂鎧大猪の比じゃねえな」
シャドースネイクは三十匹で打ち止めだったが、果たしてコイツらはどれだけ出てくるのか。
倍か、下手をすればそれ以上か……。
「雷蔵、気合を入れろよ。こっからが本番だ」
「ウガォォウ!」
望むところだとばかりに、雷蔵が吼える。
本当に頼もしいね。
それじゃあ、戦うとするか。
終わりの分からないデスマーチに、俺と雷蔵は挑むこととなった。