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19.チョロすぎて心配になってくるぜ


 NPCの好感度が減少……そういう仕様もあるのか。

 これって上げておかないとまずいよな。

 増援のシャドースネイクを片付けつつ、俺はどうすれば良いか思案する。


(何か良い手段は……あ、アレはそういうことだったのか)


「ゴァゥ!」


 雷蔵がラストのシャドースネイクを仕留めた。

 次の増援が来るまでまだちょっと時間はあるだろう。

 今のうちの俺は同じくオススメとして紹介されていたソレを取り出す。


「えっと、その……メイちゃん、アメ食べる?」


 パンツ一丁の仮面男が木に縛られた少女にアメを渡す。

 犯罪の匂いしかしない。


「なっ!? この状況で何言ってるんですかぁ~。アメ程度でどうにかなるとでもぉ――むぐっ」


 やかましいのでメイちゃんのお口にアメ玉をつっこむ。

 メイちゃんははき出すこともせず、しばらくはそのまま口の中で転がしていたが、やがて顔をほころばせた。


「めぇぇ~、なにこれ、すっごく美味しいですぅ~。これに比べると、ワタシが今まで食べてきたアメはカスやぁ~……」


 とろんとした表情で、夢中でアメを味わっている。

 あまりにも美味しかったのか、ちょっと口調が変わってた。


『NPCの好感度が上昇しました』


 あ、上がった。ちょっろ。


「はぁぁ~、本当に美味しいですぅ~。甘くて、しつこくなくて、甘くて、今まで食べてきた甘味の中で一番美味しいかもしれません~」

「ソレは良かった。……まだいっぱいあるんだけど、食べたい?」


 こちらの意図を理解したのだろう。

 メイちゃんは少しだけ迷う素振りを見せたが、やがて頷いた。


「……し、仕方ないですねぇ~。じゃあ、ちょっとだけ付き合ってあげますよぉ~。逃げませんから、縄もほどいて下さい~」

「分かった。じゃあ、これ。適当に食っててくれ」

「メェェ~♪」


 縄をほどいて、アメの入った袋をメイちゃんに渡す。


『NPCの好感度が上昇しました』

『NPCの好感度が上昇しました』

『NPCの好感度が上昇しました』


 通知が止まらない。チョロい。あまりにチョロすぎる。

 幸せそうにアメをほおばるメイちゃんを見ているとなんとも言えない気持ちになってくる。この子、将来絶対悪い男に騙されるタイプじゃなかろうか?

 ……まあ、逃げないならいいか。俺は考えるのを止めた。


「「「シャァァァ!」」」


 その直後、次の三匹が姿を現す。


「よし、んじゃやるか、雷蔵」

「ゴァウ!」


 俺と雷蔵はシャドースネイクへ攻撃を仕掛けた。

 



 その後、三十匹を倒したところで、シャドースネイクの増援は止まった。

 どうやら、増援は十回、計三十匹までだったようだ。

 雷蔵も最初の数匹は攻撃を食らっていたが、やがて動きになれてきたのか、後半は完全に作業のように討伐をこなしていた。

 慣れてくれば、攻撃力がある分、雷蔵の方が倒す数が多くなったほどだ。

 俺が攪乱し、雷蔵が仕留める。このパターンが確立してからは、完全に楽勝モードだった。

 メイちゃんも感心するように、俺達の動きを眺めていた。


『経験値を獲得しました』

『ササキ リュウジのLVが9から10に上がりました』


 あとシャドースネイクを倒す中で分かったこと。

 それはクリア後だけでなく、プレイ中もレベルアップが可能だということ。

 大量のシャドースネイクを倒したおかげで、俺のレベルは一気に10まで上がった。

 採れた魔石は全て雷蔵にあげた。


「ゴアゥ♪ ゴァゴア~♪」


 大量の魔石を食ったことで、雷蔵の体も一回りほど大きくなり、筋肉もついた。

 進化したのかと思ったが、単純に強くなっただけのようだ。

 俺のレベルアップと同じような仕組みなのだろうか?


「ほぇ~、シャドースネイクの増援、全部倒しちゃうなんてお兄さんたち、本当にお強いですねぇ~」

「そうでもないさ。たぶん、プレイヤーの中では弱い方だよ」

「そうなんですぁ~?」

「ああ」


 メイちゃんは信じられない表情をするが、たぶん間違ってないと思う。

 俺以外のプレイヤーが果たしてどの程度居て、どのくらい前からプレイしているのかは分からないが、それでも相当なレベル差、力量差があるだろう。

 いや、もしくは全てのプレイヤーに同時にリリースされたのかもしれないが、俺はスタートダッシュで大きく後れを取っている。

 なにせ異世界ポイントは現実と時間の流れが大きく違うのだ。

 僅か一日、数時間のズレで、進行度合いがとてつもなく違ってくる。


(まあ、別に俺は急いでプレイする気も他人と競う気もないからなぁ……)


 あくまで俺にとっては副業で、良い金稼ぎになるからやってるだけで、最強になりたいとか、ランキング一位になりたいなんて願望はサラサラない。

 ……まあ、もし仮にポイントが大量に稼げるなら話は別だけど。


「増援も現れないみたいだし、メイちゃんもう少しだけ付き合ってくれるか?」

「ま、まだですかぁ~?」

「頼むよ。この周辺を調べるだけだからさ」

「分かりましたぁ。……ちなみに、またアメとか貰えたりしますぅ?」

「……まだあるから、あとであげるよ」

「わぁ~い、お兄さん大好きですぅ~」


 ……この子、本当にチョロ過ぎて心配。

 その後、念のためメイちゃんには雷蔵を護衛につかせつつ、俺はフィールドをくまなく探索した。

 結果、宝箱を二つ、隠しアイテムを一つ発見できた。

 中身は10,000イエン、敏捷の指輪、盗賊のマント。

 装備品はどちらも俺向きだったので、俺が装備することにした。


「へぇ~、こんなアイテムがあったなんて知りませんでした」

「そういう仕様だからな。それじゃ待たせたな。この森を出よう。あ、あとこれアメね」

「やったぁ~♪ ウンメェ~ですぅ~」


 俺達は森の入り口――マップで緑色の矢印マークがある場所までやってきた。

 森の外はかなり開けた草原で遠くに集落が見える。

 あれがメイちゃんの村なのだろう。


「ここまでくれば大丈夫ですぅ~。それじゃあお礼を――」

「いや、お礼なんていいよ。こっちの都合にも付き合ってもらったし」


 メイちゃんは革袋から硬貨を取り出そうとしたが、俺は断った。

 こっちの都合にかなり付き合って貰ったので申し訳ないくらいだ。

 むしろこっちがお金を支払いたいくらい。


「うふふ、やっぱりぷれいやーって変わってますねぇ~。それじゃあ、お兄さんたち、さようならですぅ~。またお会いすることがあれば、その時には何かお礼をさせてくださいね~」

「ああ、じゃあな」

「ゴァゥ」


 メイちゃんを見送ると、頭の中にアナウンスが響いた。


『おめでとうございます。メインストーリー2 『森の異変』をクリアしました』


 よし、クリア。

 さて、今回の実績はどんな感じだろうか?

 それにLV10に上がったから、職業を選べるはずだ。


 ……変な職業がないことを祈るばかりである。



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― 新着の感想 ―
これ、オススメアイテムの縄の使い方あってたんかな? 飴はあってそうだけど もしかして個人個人に最適なオススメが出る有能仕様で、変態の為の専用オススメだった?
面白い!!
ジョブ:変態仮面よあれ
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