103.EXステージ6 その1
『おめでとうございます。メインストーリー6『PVP』をクリアしました』
『活動実績を算出……完了』
『隠しアイテム回収率100%達成』
『実績 勝利条件の変更を4回連続達成』
『実績 カードが10体以上、忠誠度が最良になるを達成』
『ステージの完全クリアを達成しました。追加報酬及びEXシナリオが解放されました』
『成功報酬 ポイント+60、虹の鉱石、5,000イェンを獲得しました』
『追加報酬 ポイント+100、復活の欠片×3、青の鉱石を獲得しました』
『ポイント交換が拡張しました』
『ショップが拡張されました』
『メインストーリー6EXシナリオに挑戦しますか?』
黒い空間でいつものアナウンスが流れる。
「復活の欠片……?」
いったいどんなアイテムだろうか?
・復活の欠片 カードが死亡した場合、復活させることが出来る
状態『瀕死』、『衰弱』、『疲労(大)』が付与される
「これは……カードの復活アイテムか!」
ついに手に入ったぞ、雷蔵たちの蘇生手段が。
三個だから最大三回か。
状態デバフが付くのは、まあしょうがないが、蘇生手段が手に入ったのはデカい。
勿論、使わないに越したことはないが、保険としては最高のアイテムだ。
「『復活の欠片』ってことは、その上位版のアイテムもあるってことだろうか?」
今後、ストーリーを進めていけば手に入るかもしれないな。
「今回の隠しアイテムは微妙だったな……」
今回のステージの隠しアイテムは『20,000イェン』と『丈夫な盾』。
かなり微妙な内容だが、仕方ないか。
実績としては必要だったし。
「さて、待機室に行くか」
EXステージに挑戦する前に、まずは他の確認だ。
俺は扉を開けて、待機室へと入った。
「りゅーう~~~~~!」
「おごっふ!?」
待機室に入った瞬間、セイランのタックルをくらった。
「なんで、あたしをおいだしたの!? ひどいよ!」
「あ、いや……ごめんな。ちょっと絵面が酷くて……」
「む~~~~!」
まあセイランにしてみたら、急に追い出されたと思うか。
ほっぺをリスみたいに膨らませて、大変ご立腹だ。
「急な事態で説明する暇がなかったんだ。許してくれ」
「……りゅーうのせかいのケーキ、たべたい」
「分かった。次に世界扉開いたら、ご馳走するよ」
「……らーめんもたべてみたい」
「オススメのお店に連れてってやるよ」
「……どうぶつえんってのもみたい」
「はいはい。一緒にパンダ見ような?」
「じゃあ、ゆるす!」
むふーと、上機嫌になるセイラン。
……ケーキとラーメンはいいが、動物園か。
俺もしばらく行ってないな。
変装スキルがあれば、問題ないだろうし仕方ないか。
うーむ、どうしてもセイランには甘くなっちゃうなぁ……。
『ノンノンデニッシュがフレンドを承認しました』
『ノンノンデニッシュからメッセージが届きました』
お、さっそく来たか。
ノンノンデニッシュさんからのメッセージを確認する。
内容は、先ほどの会話に関する確認と、今後について。
あとノンノンデニッシュさんの本名や住所も送られてきた。
「……本名は犬飼陽一郎って言うのか……」
住所はそれなりに離れているな。
でも小雨の『空間移動』があれば一瞬だ。
大河さんとのスキル検証の結果を考えれば、まず間違いなく使用できる。
「そういえば息子さん、いったいどんな難病なんだろうか……?」
あの口ぶりだと、まさか癌とか?
だとすれば可能な限り早い方が良いだろうが、『女神の雫』は一日一個しか手に入らない超貴重アイテムだ。
攻略のことも考えれば、ストックは欲しい。
その辺も考慮して、ノンノンデニッシュさんと会う日にちを決めよう。
メッセージをやり取りし、ひとまずは一週間後ということになった。
条件も色々と提示したが、ノンノンデニッシュさんは全て受け入れてくれた。
「おわった?」
「ウッキィ?」
「ああ」
ノンノンデニッシュさんとのやり取りの間、セイランはずっと膝の上に乗っかっていた。
ついでに夜空も、いつの間にか後ろにくっ付いていた。
君らくっ付くの好きね。
(ステージのマーカーポイントにあったのは騎士団への魔法陣だったのか……)
ノンノンデニッシュさんからのメッセージで、シュリアさんが向かっていた場所に何があったのかも判明した。
騎士団の増援を呼ぶための魔法陣が仕掛けられていたらしい。
作動すれば数百人の騎士団が押し寄せて来たんだとか。
そんなの事前に発動させとけばいいじゃんと思ったが、ノンノンデニッシュさん側のサブクエストの都合で、それが出来なかったらしい。
ついでに言えば、今回の戦闘はノンノンデニッシュさんにとってEXステージだったらしく、カードの使用も三枚までという制限が課せられていたそうだ。
(なるほど、向こうは向こうでEXステージっていう縛りがあったわけか……)
イベントムービーで、ノンノンデニッシュさんに『個人騎士団』なんて二つ名がついてた割に、使ってくるカードが妙に少なかったのもそれが理由らしい。
ノンノンデニッシュさんには『上下一心』という、パーティーの上限人数の制限を解除するスキルもあったらしく、本来は一人で百体以上のカードを従えて、圧倒的物量で制圧するのが基本戦法だったそうだ。
(もし本来の戦法が発揮できていれば、あんな簡単に倒せなかっただろうな)
てか、俺も欲しいな『上下一心』。
でもこれ『ドM豚野郎』になった時に手に入ったスキルだそうだ。
ちくしょう。
「――さて、ショップやアイテムの確認も済んだし、EXステージに挑戦するか」
「ウガォゥ♪」
「ウッキキー♪」
雷蔵たちはまだまだ元気が有り余ってるようで、やる気十分のようだ。
俺としても気力、体力共に問題ない。
それじゃあ、やるとするか。
『メインストーリー6EXシナリオに挑戦しますか?』
イエスを選択する。
『EXシナリオを解放します』
『メインストーリー6 EX『氷狼の襲撃』
クリア条件 モンスターを全て撃破する
成功報酬 ポイント+500、終末の楽譜G、50,000イェン』
視界が暗転し、俺たちはノンノンデニッシュさんと戦った遺跡へと戻って来た。
周囲の景色は同じだ。
違うとすれば、隠しダンジョンの扉が閉じていることくらいか。
(今回はモンスターの全滅か。それに『氷狼の襲撃』……)
周囲を警戒しながらフィールドの中央に進むと、不意に冷たい風が吹いた。
感じる視線と、背筋が凍るほどの威圧感。
「さっそくお出ましか……」
遺跡の一際高い建物。
その屋上に一匹の白銀の狼が居た。
『モンスター図鑑が更新しました』
『モンスター図鑑№19 ウェザー・フェンリル
アルタナのどこかに生息するといわれている希少モンスター
強力な氷魔法を操り、周囲を一面銀世界へと変えてしまう
美しい白銀の毛は物理、魔法共に高い耐性を誇る
知能も他のモンスターとは一線を画し、デバフや様々なスキルへの耐性も高い
目撃例が極端に少なく、その生息地、生態も謎に包まれている
討伐推奨LV50』
ウェザー・フェンリルか。
レベルは終末世界を除けば、これまでで最高クラス。
そして屍狼と同じ狼タイプのモンスター。
「……なるほど、『時間停止』が通用しないってことか」
それにデバフ耐性も持ってるし、周囲を寒くする氷魔法。
……明らかに俺と相性が悪いモンスターをぶつけて来たな。
だが今回はカードもアイテムの使用制限もない。
全戦力を惜しみなく投入できる。
「さあ、気を引き締めろよ皆。戦闘開始だ!」
「ウガオオオウ!」
「きゅー!」
「ウッキー!」
『ボー!』
「うん!」
「ワォォォオオオオオオオオオオオンッ!」
EXステージ6――ウェザー・フェンリルとの戦闘が始まった。




