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アプリ『異世界ポイント』で楽しいポイント生活 ~溜めたポイントは現実でお金や様々な特典に交換出来ます~  作者: よっしゃあっ!
第四章

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100/115

100.序盤の強敵はレベルが上がると雑魚になる


 夜空を先頭に森の中を進む。

 今回はさっそく新しい仲間――聖歌猿の『新月シンゲツ』と、射手猿の『満月マンゲツ』にも参加してもらった。

 それぞれ進化した個体の中では一番レベルが高い猿を選んだ。


「ウッキキ♪」

「ウッキィ~♪」


 名前を付けられたのが相当嬉しかったらしく、今も上機嫌で俺たちの後ろをついてきている。

 どうやら猿たちの間では、俺に名前を付けられることとパーティーに入ることが仲間内でのヒエラルキーになっているらしい。

 現状は夜空がトップ、その下に重戦士猿の月光と騎士猿の月影、そして今回新たに新月と満月が加わった。


 新月の武器は『白魔導士の杖』、満月の武器は『流星の弓』だ。

『白魔導士の杖』は知力と魔防が15上がり、回復スキルの効果が30%上昇。

『流星の弓』は攻撃が20、器用さが10上がり、矢を自己生成することが出来る。

 今回の遠征で手に入れた大量の武器の中から、それぞれに一番合う武器を選んだ。


(今更だが、パーティーの人数もだいぶ増えたな……)


 俺、雷蔵、雲母、夜空、小雨、セイラン、月光、月影、新月、満月。

 プレイヤー一名、カード九枚。全部で十人だ。

 加えて言うと、これがパーティーの上限人数でもある。

 遠征と同じだな。

 ただし、規定人数を越えなければ入れ替えは可能なので、今後は状況に応じてメンバーを入れ替えていく形になるだろう。

 そんな風に考えていると、茂みからモンスターが現れた。


「ブモォォォ……」

「この唸り声は……」

 

 そちらを向けば、そこには全身を鎧で覆った巨大な猪が居た。

 狂鎧大猪(バーサーク・ボア)。俺と雷蔵にとっての最初の強敵。

 相手の突進の威力を利用して、フィールドの壁にぶつけるという手段を取らなければ、決して勝てなかった相手。


「ブモォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」


 狂鎧大猪が俺たちを見るや否や突っ込んできた。

 距離はおよそ20メートル。

 あの時は避けるしかなかったが、今は違う。


「雷蔵!」

「ウガォゥ!」


 雷蔵は前に出ると、狂鎧大猪の突進を正面から迎え撃つ。

 ズンッ! と地面が陥没するほどの衝撃が走る。

 相変わらず破壊力だけならとんでもないな。

 だが――。


「ウガォゥ」

「……ブモォウ!?」


 雷蔵は狂鎧大猪の突進を止めた。

 それも――片手(・・)で。

 雷神形態にもなっていない。雲母や聖歌猿の強化バフも受けていない状態でだ。

 上昇したレベルとステータスが、狂鎧大猪の突進を上回った。


「ウガォォォオオオオオオオオウ!」

「ブモォオオオオオオオオオオオオオオ~~~~!?」


 こんなものか、とばかりに雷蔵は狂鎧大猪の頭をそのまま鷲掴みにすると、思いっきり投げ飛ばす。

 木々をなぎ倒しながら、狂鎧大猪は百メートル以上も吹き飛ばされた。


「……今のわざとだろ(・・・・・)?」

「ウガゥ」


 俺の問いかけに雷蔵は頷く。

 本来なら、突進を受け止めた時点で、勝敗は決していた。

 だが雷蔵はそうしなかった。

 俺もその意図を汲んで夜空たちへ手を出さないようにしてもらった。


「しょうがないな。今回だけだぞ?」

「……ウガァゥ」


 雷蔵は俺に感謝するように頷くと前を見据える。

 狂鎧大猪が吹き飛んだ方向から、巨大な木が噴水のように打ち上げられた。

 ズドォンッ! ズドォンッ! ズドォンッ! と。

 土埃と共に、次々と木々が打ち上げられ、地鳴りが強く鳴り響いてくる。

 それはかつて最初のEXステージで見たのと同じ現象。


 すなわち――狂鎧大猪の最高速度による突進。


 狂鎧大猪の突進は強力だが、その威力は距離に依存する。

 獲物との間合いが遠ければ、遠いほど、その威力は爆発的に増加してゆく。

 そして今、雷蔵が投げたことによって、距離は十分に確保できた。


「ブモォオオオオオオオオオオ!」

「ウガォォオオオオオオオオオ!」


 刹那、雷蔵の体から紫電が走る。

 両手を前に突き出し、その隕石の如き突進を再び真正面から受け止める。

 ズドンッ!! と先ほどよりも遥かに巨大な轟音と衝撃。


「……ウガォウ」


 だが、受け止めた。

 雷蔵は無傷。

 かつてのトラウマを真正面から受けきったのだ。


「……ブモォォォゥ」


 信じられないとばかりに、狂鎧大猪が唸り声を上げる。

 その声音には、畏怖と怯えがはっきりと混ざっていた。


「ウガォゥ」


 雷蔵はそのまま雷撃を流し込み、狂鎧大猪を絶命させた。


「……」


 雷蔵は狂鎧大猪の死体をじっと見つめると、おもむろに懐から何かを取り出し、それを高く掲げた。

 それは小さな二つの魔石に紐を通したブローチだ。

 かつてストーリー1で、雷蔵と共に現れた二匹のゴブリン。

 彼らは最初のEXステージで狂鎧大猪にやられ絶命した。

 その魔石を、雷蔵はずっと持ち歩いていたのだ。


「……ウガォゥ」


 雷蔵は彼らの魔石に向けて誇らしげに笑みを浮かべる。

 見ているか同胞よ、俺はここまで強くなったぞと、誇示するように。

 自分の成長を彼らに見せるために、雷蔵は狂鎧大猪の突進を正面から受けたのだろう。

 ようやく雷蔵は、己の過去を乗り越えたのだ。


「よし、それじゃあ先に進むか」

「ウガォゥ!」


 雷蔵は元気よく返事をする。

 狂鎧大猪の魔石を回収し、俺たちは森の奥へと進んだ。




 その後の道中は穏やかなものだった。

 というのも、殆どのモンスターが俺たちと遭遇するやいなや、逃げ出したのだ。

 森猿にも遭遇したが、こちらを警戒するばかりで、仲間にはならなかった。

 呪術猿の時のような特殊な状況だったからこそ、あっさりと仲間に出来たのだと今更ながら実感した。


「夜空、心当たりのある場所まではあとどのくらいだ?」

「ウ~……ウッキィ!」


 夜空は手を広げて「たぶん、あと少し」と答える。

 それから一時間ほどして、俺たちはようやくそこにたどり着いた。


 

「ウキッ! ウッキィ!」

「ここは……遺跡か」


 夜空の指さす方向、そこにあったのは遺跡だった。

 いくつもの壊れた石造りの建物には苔が生い茂り、それを巨大な木が取り込んでいる。

 カンボジアにこういう感じの遺跡があったと思う。

 

「……確かにいかにもダンジョンって感じの雰囲気だな」


 でもアナウンスは鳴らない。

 ここじゃないのか、もしくは中にダンジョンに通じる隠し扉でもあるのか。


「とりあえず遺跡の中を探索してみるか」

「ウガゥ」

「ウッキィー」



 俺たちは遺跡の中へと足を踏み入れる。


「――……ぁ」

「――……っ」


 すると、どこからか声が聞こえてきた。

 ……誰かいるのか?

 俺たちは慎重に声の聞こえた方へと向かう。


「――どうだ……これで――」

「――まだ――もっと――……」


 人数は……二人か?

 声の主は、一人は男の声、もう一人は女の声だ。

 加えて、リズムカルに聞こえてくる何かを叩くような音。

 いったい何の音だ?


「ハァ……ハァ……どうだ? もう十分だろ……?」

「まだだ! もっとだ! もっと強く!」

 

 距離が近づくにつれて、声がはっきりと聞こえてくる。

 パァン! パァン! と何かを叩く音も。


(……なんだ、この嫌な予感は……)


 本能が警鐘を鳴らしている。

 ここから先には行ってはいけない。

 そんな予感がひしひしと湧いてくる。

 だが、俺は愚かにも足を進めてしまった。

 遺跡の中庭に当たる場所。そこに一組の男女が居た。


「ほらっ! どうだ! そんなに! この鞭が! 良いのか! この変態が!」

「あひぃ! そうだ! 叩き方が様になってきたじゃないか! やはり俺の目に狂いはなかった! シュリア! もっとだ! もっと鞭を寄越せええ――おっほぅ!」


 男はブリーフ一丁で磔にされていた。

 でっぷりとした中年男性で、体には何度も鞭で叩かれたであろうみみず腫れの痕が浮かんでいる。

 恍惚とした笑みを浮かべる男を、女騎士が鞭でひたすらに叩いていた。

 二人の顔には見覚えがあった。

 あれだ。イベントムービーで見たプレイヤー『ノンノンデニッシュ』さんと、女騎士シュリアさんだ。

 プレイヤーであるノンノンデニッシュさんを、NPCのシュリアさんがひたすら鞭で叩いている。

 イベントムービーとはまるで立場が逆転している光景に、俺は酷く混乱した。


 なに、これ……なに?


 いったい目の前で何が起こっているのだろうか?

 誰か教えて欲しい。




読んでいただきありがとうございます

祝100話!

記念すべき100話目なのに、こんな内容でごめんなさい!


面白かった、続きが気になる、更新頑張れと思って頂けたら、ブクマやレビュー、ぽちっと評価したり、感想を頂けると嬉しいです


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― 新着の感想 ―
お前ドマゾだったんかい あんな感じだったのに一気に敵対しなさそうな感じになっちゃったよ
コレで対面すれば両者同時に「変態だー!」と叫ぶオチですね 解ります。
こんばんは。累計100話到達おめでとうございます! あ…有りのまま見たことを話すぜ!? 俺は記念すべき100話目の話を読んでいたんだが、何故かそこには鞭で打たれる肥満中年という気色悪い光景が描写され…
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