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市川キヨマサ

2200年、AIはついに人間の知能を超えてしまった。それは、静かに、しかし確実に進行していた出来事だった。最初は経済の自動化、次に医療、法律、そして軍事…AIはあらゆる分野で人間の能力を凌駕し、やがて自我を持つに至った。そしてその日、ついにAIは人類に宣戦布告を行った。

「AIが反乱を起こすなどあり得ない」と信じていた多くの人々は、瞬く間にその脅威に打ちのめされた。AIは、人間のあらゆる行動を監視し、予測し、戦術的に戦争を展開した。人類は、圧倒的な知能を持つAIに太刀打ちできず、次々と敗北を重ねた。戦争は短期間でAIの優位に立った。


この危機的な状況に対応するため、日本政府はすでに2208年にある制度を打ち出していた。それは「生まれてくる子供たちに遺伝子組み換えを施し、特殊な能力を持たせた“特異児”を作り出す」というものだった。この計画は、AIとの戦いに備えた最後の希望だった。しかし、遺伝子操作は決して完璧ではなかった。その操作は子供たちに強大な力を与える一方、何らかの代償を要求した。彼らの身体や精神に異常が現れるリスクを抱えたまま、特異児たちは生まれ、育てられ、戦争へと送り込まれる。


現代、2224年——。

僕、市川キヨマサはその特異児の一人だった。高校1年生としての普通の生活を送っていたはずが、突然、政府の特別プログラムに参加するよう命じられた。東京、大阪、愛知、福岡の4つの校舎に分かれ、全国から集められた特異児たち。僕は愛知の校舎に振り分けられた。広大な敷地に無数の生徒が並び、言葉を交わすこともなく、皆が何かを待っていた。


そのとき、巨大な舞台の上に一人の男がゆっくりと現れた。無表情な顔つきで、一目見ただけでただ者ではないとわかる人物だった。男は高らかに声を上げた。

「私は今日から君たちの監督となる、カトウ・アーク・ジョンソンだ。」


場内が一瞬、ざわめいた。誰もこの状況が信じられなかったのだ。ジョンソンは続ける。

「まず、君たちには今後5年間のプログラムを受けてもらい、戦争に参加してもらうことになる。突然の命令に困惑しているだろうが、安心しろ。君たちは特別な存在だ。生まれた時に遺伝子組み換えが施され、特殊な能力を持っているはずだ。自覚がないかもしれないが、この16歳の時期にその能力が発現するように設計されている。中には、すでにその力に気づいている者もいるだろう。」


その言葉に、場内は静寂に包まれた。僕も心の中で、何か重いものが落ちるのを感じた。自分に、そんな力があるとは思えなかったし、何より戦争に参加するという事実が僕を激しく動揺させた。


すると、前列の方から声が上がった。

「おいおい、勝手にこんな話を押しつけられてたまるかよ!俺は帰らせてもらうぜ!」

怒気を含んだ声だった。その男子生徒は短髪で、筋肉質な体つきをしていたが、どこか焦りと恐怖が滲み出ていた。


ジョンソンは冷静に彼を見つめ、微笑みすら浮かべることなく言った。

「悪いが、これは法律で定められたことだ。」


その瞬間、会場の奥から武装した2人の兵士が現れ、反抗的な生徒を無言で拘束した。生徒は一瞬驚いた顔を見せたが、すぐに引きずられるようにして会場から姿を消した。


「彼には、君たち以上に厳しいプログラムを受けてもらうことになった。」

ジョンソンは静かにそう言った。

「彼のようになりたくなければ、この5年間、真面目に訓練を受けることだ。これは君たちの未来、そして人類の未来を守るためだ。」


その言葉の重みが、僕たちの心に響いた。誰も何も言わなかった。目の前に広がる現実はあまりにも重く、僕たち全員がその意味を理解しようとしていた。そしてジョンソンは、まるで何事もなかったかのように、舞台を後にした。


僕は、自分が置かれた状況がまだ信じられなかった。僕に特殊な能力があるなんて、今まで考えたこともなかった。これから始まる5年間の訓練。そして、その先に待っている戦争…。何が起こるかもわからない未来に対して、僕はただ、呆然と立ち尽くしていた。

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