(1)舞踏会とか聞いてないんですけど
煌びやかなホール、響き渡る華やかな音楽、様々なゴシップ話…
先程まで見えていたその「普通」な景色が、まさに物語でよく出てくるような「異世界」へと変わってしまったのは数分前に起こった出来事によるものである。
〜数分前〜
今日は王室が主催するパーティーに出席していた。
なぜ平民である私が貴族たちが出席するはずのパーティーにいるか?
答えは簡単。私が貴族しか操ることのできない「魔法」を使えるから。
なので実質貴族扱いなのだ。
「ご来場の紳士ならびに淑女諸君。本日は我が国の国王陛下が催されるパーティーにお越しいただき、誠にありがとうございます。本日のこのパーティーは舞踏会でもあります。どうぞお楽しみください。」
嘘っ…今日のパーティーって舞踏会でもあったの!?
どうしよう…私はまだ15歳、しかも平民。
いくら異能力者だと言っても、流石に婚約者、恋人さえいない。
うわ…もう皆ペアを組み始めた。誰か、誘ってくれないかな…
「お嬢さん、良ければ踊りませんか?」
あ、すんなり誘われた…ってこの方、王子様!?王子様よね!?
いや、ダメでしょ。だって王子様にはもう婚約者がいるじゃない!
「え、あ、」
でも…このままだと会場の中で余りになるわ。しかも男女二人で。
「生憎、婚約者は体調不調でね。」
あ、だから、だから余っててしかも浮いてた私を誘ったのね。
それなら…今日だけだし、踊ってもいいわよね…?
「では、喜んで。」
そう言うと、当たり前だが彼の手が私の手に触れた。
「!?」
しかし、その時急にひどい頭痛がした。そしてあるはずのない記憶が、脳内のスクリーンに描き出される。