溺愛が止まらないからの母になる父になる
懐妊が発覚してからヴィクトールのアレキサンドリアへの干渉が尋常ではないレベルへ発展していく。
まずはヴィクトール自身がほとんど毎日公務以外はアレキサンドリアの部屋で過ごして四六時中横で付きっきり。
食べ物も最新の注意が注がれ、毒見、熱さ冷たさすべて確認されないと食べられない。
運動も危ないからダメ。丁度冬の時期と重なり、滑ると危ないと外出もままならない。
ひたすら部屋で過ごす退屈な日々はストレスでしかなかった。
つわりがくるとヴィクトールが気持ち悪そうになる始末。
元々軍隊に所属していたので身体を動かすのを幸せに感じていたたちだ。
限界に達っしていた頃、皇后がアレキサンドリアの部屋を訪れた。
「外出もままならないなんて。よく言ってきかせます。
具合が逆に悪くなります。
妊娠は病気ではありませんからね。
赤ちゃんに悪いわ」
優しい皇后の一言に心に染みる。
この後ヴィクトールが皇后から長い説教されようやくこの監禁生活から解放された。
ヴィクトールは反省して宮殿内ではあるが最初は散歩と帝都より気温の温かい保養地の離宮でゆっくりする事も許され、時折ヴィクトールが訪れる。
静かに読書したり、湖を眺めたり、剣をふって運動したり思い思いに静かに過ごし快適な生活を送ることが出来た。
帝都に戻る頃にはお腹が目立っていた。出産は宮殿で行うのが慣例だった。
妊婦に負担にならないようにと宮殿内にある小さな私邸で出産が許された。
十か月後皇太子妃は元気な女の子を出産した。
丸々した健康的な白い肌とナチュラルブロンドをした可愛らしい女の子だった。
ヴィクトールは初めてだく我が子に感動したらしく涙を流している。
十五歳にして父となり感動しかりだった。
「ありがとうアレキサンドリア」
長時間の陣痛から解放され汗だくになっていたアレキサンドリアも皇太子の様子にいたく感動していた。
あの剣を振りかざしていた子が夫となり父となったのだ。
皇太子は小さな命を手にしてその重さと責任を認識していた。
そして大きな決断をする。