序章 小さな皇太子は年上がお好き
年上女将軍と恋する皇太子、元婚約者のモーアプローチなどラブコメド高めで展開予定です。
フェレイデン帝国の第一皇子ヴィクトールの初恋は早かった。
初恋は齢五歳で習い始めた剣術の師匠である十五歳て歴代将軍として仕えたディランドル侯爵家の息女アレキサンドリア・ディア・ディランドルだった。
すらりとした浅黒い肌に鋭い黒曜石の切れ長の瞳が自分を映している。
口元はぷっくりと艶のある桃色に形がよい。
すっと通った鼻筋は形よく鍛えられたしなやかな手足はすらりとしている。
突き出してくる剣の動きに合わせて束ねられた亜麻色の長い髪が飛び跳ねている。
雌豹の様な野性的な雰囲気にヴィクトールの胸は突然早く動き出す。
動悸が………。
「殿下 集中。
病だとしても敵は容赦ありませんよ
剣を離したすきに死あるのみ」
ヴィクトールが皇太子である事など知らないとばかりにアレキサンドリアは剣先の動きを止めない。
フラフラと身体が左右に揺れて突進してくるアレキサンドリアを止めるどころかあっとゆう間に青い空にヴィクトールの剣は吸い込まれた後地上に落下し地面に突き刺さる。
「殿下
今のが刺客なら、戦場なら、死んでいましたよ」
冷たい瞳を隠そうともせすに淡々とヴィクトールを追い込む。
「はい。
最初からお願いします師匠」
再び剣を手にして身構えるヴィクトールはまっすぐにアレキサンドリアを微動だにせず見ている。
どこからしかけてくるのか?
緊張した様子のヴィクトールにアレキサンドリアはため息一つついて言急ぎ足でいった。
「死人とは手合わせしません
明日基礎からいたしましょ」
固まるヴィクトールに鮮やかな印象を残してアレキサンドリアは鳶色のキラキラした瞳を後に残して宮殿を去っていった。
ドキドキする心臓の動悸を止められない。
あぁ~師匠にして僕の憧れ、好き、大好き~~~アレキサンドリアの颯爽とした後ろ姿を真っ赤な頬を隠そうとせずに永遠見つずけるヴィクトール皇太子だった。
宮殿を出たアレクサンドリアは用意してあった馬車に乗り込みディランドル侯爵家の帝都の私邸へ帰ってきたヴィクトールがその場に置き去りにされた。
「アレクサンドリアお嬢様」
執事長のルドルフが慌てながら玄関口に出てきていた。
「ルドルフ?
何かあった?」
いつもは冷静沈着のルドルフが珍しく慌ててアレキサンドリアに近づき耳打ちをすると、アレキサンドリアは急ぎ足で父の書斎の扉を乱暴にあけてガツガツと部屋の中へ入っていった。
「こら。
許可をとらずに入室するとはマナー違反だぞ。」
椅子に座っていた父は頭を抱え幾分いつもより青白い顔がただ事ではない状況がわかる。
「ラルファルド公爵家の子息との婚約は解消する事になった」
音耳に水とはよく言ったもので、子供の頃から当たり前の様に「結婚する相手」と言い聞かされていたので、当然結婚するのはラルファルド公爵家の子息と思っていた。
特に好きでも嫌いでもなかったそうお互いにとアレキサンドリアは名家の子女が思うであろう割り切って考えていた。
今更???何が原因??
アレキサンドリアの自尊心は深く傷つけられたが、その後納得する父の一言が部屋中に木霊する。
「御前がこのディランドル侯爵家の跡継ぎとして将軍の地位に就くのが子息嫌がったらしい。
結婚の条件に今更養子を迎えるなら結婚を来年、跡継ぎになるなら婚約破棄だと言い出した。
あのラルファルド公爵の狸親父。
絶対に御前がわが家の跡継ぎだ。
女将軍となり名声を得るのだ。
あの腰抜け坊ちゃんを見返してやれ!!!」
父が悲観そうにならないだけよかったと思ったアレキサンドリアは明日から皇太子殿下をしごく鬼師匠のモードに突入するのだった。
序章
ご愛読ありがとうございます。
次回は8年後の皇太子と近衛隊長に任じられたアレクサンドリア、元婚約者現ラルファルド公爵との三角関係を軸に展開します。