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鉄壁の運び屋 壱ノ式 ー三原色と施錠の町ー【完全版】  作者: きつねうどん
【番外編】幻の運び屋
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後編

「此処は変わらず煌びやかと申しますか、混沌としておりますね」


地下道から角筈のネオン街に足を踏み入れた4人は朱鷺田の申し出もあり、映画館側で固まっている子供達を眺めていた。

以前から角筈に隠れながら出入りしていたのは子供達を思う朱鷺田がこの現状に憂でいた事も関係している。


「本当に正式に許可が取れて良かったよ。トッキーはさ、此処にいる子供達の事を凄く、凄く心配していたんだ。私利私欲で俺は此処を選んだけど、トッキーは違うな。尊敬するよ、流石俺の相棒だ」


そんな言葉を言われ、朱鷺田は照れ臭そうに頬を赤らめていたが気を取り直して阿闍梨に現状の説明をした。


「比良坂町内から居場所のない子供達がここに集まってるんだ。協会からの許可がないと俺達も支援したり、手を貸したりする事が出来なくてな。やっと数日前に炊き出しが出来た所なんだ。正直言って角筈は治安が悪い。俺達も単独行動は出来ないし、控えないとならない。どうにか一緒に活動出来る仲間を募っている所なんだ。そこでだ、阿闍梨。俺達の仲間になってくれないか?家業が大変なのは知っているでも...」


角筈では旭達3人をはじめ、無数の運び屋がここで活躍をしている。

しかし、この地域の治安維持の為には人手が足らず苦労をしているようだ。

朱鷺田の願いを聞いた阿闍梨は穏やかな表情を浮かべ口を開いた。


「欲望渦巻くネオン街に無欲の和尚がいて良い物か疑問に思いますが気が向いたら出向かせて頂きます。それに迷宮攻略には僧侶の力が必要でしょう?」


「ありがとう、阿闍梨。恩に切るよ」


2人は軽く握手を交わしている最中、旭と谷川は子供達と会話をしているようだった。

その中で時折見える青い舌に朱鷺田は悲しげな表情を浮かべた。


そんな様子をみて、阿闍梨自身もこの異常な空気感に飲み込まれてしまったのか同じく下を向き何も言えなかった。

両者とも暗い雰囲気になりかけていた所で夜の街に太陽が差し込む、旭が笑顔で2人を手招きするとそれに釣られたのか?双方ホッとしたような笑みを浮かべた。


「折角夜の街に来たんだ、2人とも楽しまないと損だぞ。そうだ縁姫、お願いがあるんだ。折角の大晦日だしさ、俺に歌わせてくれよ。ラストソングってやつ。やっぱり男って生き物はさ、世界一を常に狙ってるんだ。売り上げ一位を狙うには姫の力が必要なんだよ、50万円の水で良いからさ入れてくれよ」


「その姫かよ!というか50万って完全にぼったくりじゃないか!まぁ、旭の為なら...良いかな。喜んでもらえるなら」


旭と朱鷺田の漫才は完全にホストと貢ぎ客の物であった。

それをすぐ側でみていた谷川は苦笑いを浮かべながらも楽しそうに聞いていた。


「うわー、みどり君完全にカモられてるよ。絶対にATMとしか思われて無いよ。あれだよ、あれ。なんとか銀行トッキー支店ってやつ。しょうがないな、谷川姫がお店からパクってきたブラックパールを開けるか。折角、幻の運び屋さんもいる訳ですし。幻のお酒を飲んで年越ししよう」


そのあと、谷川は横脇に抱えていたいかにも高そうな箱を容赦なく開け、簡単に中身を開けた。

その光景を旭は軽快に笑い、朱鷺田と阿闍梨は青ざめていた。


「いやぁ、ありがとう鞠理。これで俺も世界一の男だな。トッキーもATMとしてのお勤めご苦労様」


「笑えない。笑えないぞ谷川。そう言えば良いのか?俺達と飲み交わして。店で飲み明かしてこればいいじゃないか。誰も咎めたりしないぞ」


「谷川さんは一位の男としか酒を飲み交わさない主義なんでね。今日はスペシャルゲストもいるけど」


安価な紙コップに高級酒が注がれ阿闍梨の手に渡った。


「どうもスペシャルゲストです。谷川姫、ありがとうございました。素敵な年越しになりそうです」


酒が回っているのか?阿闍梨がノリ良くそう言うと谷川は嬉しそうに笑みを浮かべる。

しかし、そのあと異変が起きた。

旭が何かに気づき、朱鷺田と谷川を守るように側に引き寄せるそのあと阿闍梨に対しても耳打ちをしているようだった。


「阿闍梨、何処からか視線を感じないか?俺たちの事を舐め回すように見られてるような感じがするんだ」


「視線?...もしや、私達を狙う誰かが?」


阿闍梨が周囲をキョロキョロと見渡すと白い女優帽だろうか?それが壁に隠れられておらず(うごめ)いているのが分かる。

その正体を皆知っている。同業者であり、時折角筈で依頼を受けている運び屋だ。

旭は相手を揶揄うように其方へと声をかけた。


「おーい、舞子。全然隠れられてないぞ。なんだ?五目並べでもしに来たのか?」


その声を聞き、蒼月(そうげつ)舞子(まいこ)は全身を顕にした。

白い女優帽に艶やかな黒髪、蒼い瞳は海を連想させるだろう。

まるでバカンスを楽しむような爽やかな蒼いワンピースを着用している。


「違います!依頼を受けた帰りですの!此処は相変わらず野蛮な地域ですわね。協会の近くと全然雰囲気が違いますわ。所で(あずさ)さんと甲斐路(かいじ)さんは?此処にはおられないの?」


「2人なら零央と一緒にいるよ。児玉さんも甲斐には行けないからな。零央も幼いし、しばらくは一緒に仕事をするそうだ」


舞子の質問に対し、朱鷺田がそう答えると彼女は軽く頷く。そのあと、阿闍梨の姿を見ると驚いているようだ。


「もし?其方の和尚さん?もしかして実梨のお兄様?いつも、赤い犬とペンギンのぬいぐるみを小脇に抱えて眠ってるっていうあの?」


その表現に旭と朱鷺田は笑いだし、弄るように軽く阿闍梨の肩を叩いた。

阿闍梨も恥ずかしい思いをしたのか頬を赤らめ下を俯いているようだ。


「そうですよ!私が動物のぬいぐるみを抱えて眠る実梨の兄です!良いではありませんか、実際にペンギンは協会のマスコットでしょう?違いますか?」


確かに協会のマスコットとして受付等にペンギンのぬいぐるみが飾られていたり、イベントでも着ぐるみが登場し壱区では有名な存在だ。

他にも参区ではカモノハシが、肆区ではカエルを模したキャラクターが人気となっている。


「まぁ、良いですわ。皆さん、年末でお忙しいでしょうし、また改めてお声掛けさせて頂きます。それではご機嫌よう」


そのあと阿闍梨も凛との約束を思い出し、早々に立ち去って行った。

その半年後、運び屋達は新たな困難に遭遇する事になるのだが今はまだ知らない。



《解説》

・トッキーがATMと呼ばれていましたが、今年JR東日本からJREBANKという新しい銀行事業が誕生したんですが、銀行の支店名が新幹線の愛称になっていましてそれぞれ「はやぶさ」「こまち」「とき」支店となっています。

作者も新幹線でも使える4割引クーポンやグリーン車無料券にホイホイ吊られて口座を作ったんですがそれで満足してしまって空っぽですね。何も活用出来ておりません。


・阿闍梨が赤い犬とペンギンを抱えているのは千葉県のマスコットキャラクターであるチーバ君とSuicaに描かれている謎のペンギンが同じ千葉県出身である坂崎千春氏がデザインされたと言う事で描写をしています。


・蒼月舞子の元ネタは新宿でも時々運行されていますサフィール踊り子ですね。

作者も初めて乗った時、あまりにも車内チャイムがお優雅すぎてビビり散らかしました。全車両グリーン車も驚きましたね。

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