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鉄壁の運び屋 壱ノ式 ー三原色と施錠の町ー【完全版】  作者: きつねうどん
第二十章 終焉
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第捌拾弐話 目覚め

「...んんっ」


希輝は朧げながら目を覚ますと、自分の無線機がなっている事に気づいた。

まるで、目覚ましを止めるような感覚で通話ボタンをおす。


「よっ、大丈夫か後輩?中々出ないから心配したぞ」


「...あれ?誰ですか?浅間先輩じゃない」


眠たげな、虚ろな表情をしながら希輝はなんとか口を無理矢理動かそうとしているようだ。

それとは反対に通話相手は彼女の事を知っているかのような口ぶりで話を進めている。


「何だ?酷いな、さっき会ったのにもう忘れたのかよ。旭、浅間じゃないぞ。間違えるなよ」


その言葉に希輝は一気に覚醒する。

自分が運び屋を志すキッカケとなり、これまで行方知れずだった彼が今、自分と会話をしている事に驚愕とそれ以上に彼の安否が確認出来た事に安堵しているようだった。

そのあと希輝は興奮したような様子でこう続けた。


「あのレジェンドの旭さん!?ごめんなさい、あの時は必死で。あの、後でサイン下さい!店に飾っても良いですか?」


「おいおい、同業者にサインを求めてどうするんだよ。この大仕事が片付いたらな」


「やった!ありがとうございます!」


そんな騒がしい会話を聞き、近くにいた浅間達3人は勿論、望海達も目を覚ました。

意識が朦朧としているものの希輝の明るい声を聞き、状況が悪くない事だけは理解出来たようだ。


「今、敷島のお嬢さんとトッキー達とで協力して各区の状況を調査してるんだ。俺は参区を任された。完結に教えてくれないか?」


その言葉に希輝は立ち上がり、周囲を見渡した。

彼女は直様、安全を確保する為。敵対していた百地の方へと視線を移すがグッタリとし意識もないようだった。


「今、標的の百地は拘束されたまま動きません。抵抗する余力もないみたいです。味方メンバーは7人が念力切れで昏睡状態になっていましたが今、目が覚めました。他3名も全員無事です。あれ?Dr.黄泉は?」


彼を探す希輝に対し、側にいた圭太が返答した。


「今、Dr.黄泉は肆区に行ってる。音無の身体に異変が起こったって聞いて調査に向かったんだ。もうすぐ戻ってくると思う」


その言葉に希輝は頷き、同様に旭に伝えた。


「了解、全員無事で何よりだ。とりあえず、俺達の方から伝えておきたい情報がある。今いるメンバーを無線機の近くに集めてくれ。肆区の奴らにもあったら同じく伝えてほしい。それと同じく、これからの指示を出す」


その言葉に望海や光莉達も身体を引きづりながらだが、無線機の元へと集まってきた。全員集まった所で旭が話を開始する。


「まず、一つ目。ここ、比良坂町の立地を説明する。側に秋津基地があるのは皆知ってるよな?問題なのはその先だ。ここは海に囲まれ、海上には人魚がウジャウジャいる。しかも、肆区の側には俺達の知らない琉球という島々の集まりがある」


「「「「!?」」」」


突然の言葉に望海達は驚愕するも、誰も異議を唱える物はいなかった。

何せ、話しているのが朱鷺田達が唯一慕う旭だからだ。

いや、それ以上に1人の人物が衝撃の事実を口にした。


「れおね、にんぎょさんにあったよ。あのね、かべをはこんでるときあったんだ。おはなしもしたんだよ」


「零央!?人魚は言葉が通じないんじゃなかったのか!?どうやって」


その言葉に剣城は何かに気づいたのか、付け足すようにこう言った。


「確かに、零央が見たのは同じ人魚だろう。しかし、環境が違えば性質も次第に異なってくる。しかも150年というラグがある状態だ。比良坂町で生まれた人魚と外界で生まれた人魚が同じかと言われればそうとも限らない」


「...比良坂町産の人魚は酷い環境の中で隔離されてた。凶暴化は勿論、人と接する機会がなければ言語を使う事も出来ない。でも、開けた穏やかな環境で暮らす人魚達は人に親切で流暢に会話も出来る。...剣城はそう言いたいんでしょ?」


「おっ、ここに来て新たに情報が手に入ったな。お前達に連絡して正解だった。少し、話を掘り下げさせてくれ。おじさんの倅に聞きたい事があるんだ。壁を運んだ時の事をゆっくりで良い。話してくれないか?」


児玉は零央に寄り添い助言をしながら、その時の状況を聞き出す。


「あのね、にんぎょさんは。もえちゃったおしろをなおすためのざいりょうをさがしてたんだ。だからね、もってたかべもちょうだいっていってきたの。れお、プレゼントしたんだ。そのおれいにおはなをもらったの。でも、げんきがなくなっちゃったからママにおしばなにしてもらったんだ。いまもたからばこにはいってるよ」


「決まりだな。ありがとう、零央。後でトッキーが宝箱を見せて欲しいって言ってたから一緒に遊んであげてくれ」


「うん!」


そんな会話の流れを聞いて望海は頭を打ちつけたかのような衝撃と目眩を覚えた。

此処に来て、一気に比良坂町の真実が見えた事による困惑もあるのだろう。


「まさか、あの8日間の中でこんな事が起こってるなんて考えもしませんでした。そうですよね、普通に考えれば外に壁を持ち出す所まで全部零央君がやらないといけないんですよね?いや、というか圭太。貴方、全部知ってたんじゃありませんか?地震があった時も落ち着いてましたよね?」


「酷いな。僕がやった事は、おじさんから零央を連れ出す事だけだよ。それに海だって帰りの車窓から見えてたし。各区への移動はDr.黄泉にお願いして、壁を持ち上げて移動させるのは零央。その前にも予行練習はしてて、念力のコントロールが上手くいかないと流石に浮遊状態を維持出来なくなって、そのまま重力に沿って落下しちゃうんだ。その為に安全装置をつけて、備蓄した予備念力で直ぐに元通りにはなるけど落下した事実は塗り替えられないからその余波で揺れが起こる。それが姉貴の言った地震の正体だよ」


「そうだよね。壁を持ち上げるにも念力が必要な訳で、毎日一枚づつが零央君でも限界だった訳か。それでも十分凄すぎると思うけど。とりあえず、旭の話に戻ろう」


光莉の言葉の後、旭は次の話題を提示する。


「では二つ目、この戦いのおける全斎の目的についてだ。これが非常に厄介な事に複雑に入り組んでいる心して聞け。結論から言うと、全斎は自分の部下を捨て駒にして軍の上層部から信頼を得ようとしていた。この信頼というのは、自分達が危険な存在ではない事の証明だ。不老長寿によって、姿が変わらないのを気味悪いと鶴崎の上。元帥が秋津基地に彼らを隔離した」


その言葉に続けて浅間は望海達に、これは自分の弱さを示す戦いなのだと説明すると案の定、全員驚いた顔をするのと同時に百地を見やる。


「じゃあ、全部繋がってたんだ。ずっと、何か可笑しいと思ってた。もし、全斎が比良坂町を欲しているなら狙うのはまず、アタシ達じゃない。Dr.黄泉や愛さんを動けなくした方が早く壊滅させられる」


「もっと、言えば三種の神器だってそうだ。私達が捕えられた時だって没収しておけば、身動きが出来なかった筈なんだ」


その会話の流れに望海は以前、鶴崎に会った時の事を思い出し後悔した。


「「そんな単純な物じゃない」鶴崎が私が自分達の町を取り戻そうとしていると主張した時、そう言われました。どうしてあの時、もっと話を素直に聞けなかったのでしょう。もしかしたら、その時点でこの戦いを止められたのかもしれないのに」


「姉貴、過去の事を悔やんでも仕方がないよ。旭さん、これからの指示をもらえるかな?僕達はどうすればいい?」


その言葉を言い終える前に、丁度黄泉が参区へと戻ってきた。

無線機を片手に持ち、愛と会話を試みようとしている時だった。


「何やら、面白い事になっているね。その声は旭君か」


「黄泉先生、待ちくたびれたぞ。では、指示を出す。ここから二手に分かれろ。まず、百地の見張りは必要だ。これは希輝達4人に任せる。そして、望海達3人と零央は直ぐに協会で俺達と合流して、一緒に全斎のいる水行川のホテルにきてもらう。良いな?」


そのあと、望海と希輝は頷き前者は壱区へ向かう準備を他メンバーと始める。

黄泉も旭の話を聞いた後、直ぐ様愛と初嶺に連絡をし自身はこれから弐区へ戻る事を告げた

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