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鉄壁の運び屋 壱ノ式 ー三原色と施錠の町ー【完全版】  作者: きつねうどん
第十九章 魔の十一分
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第漆拾仇話 蘇り ◯

「ねぇねぇ、軍人さん達ってお腹空かないの?燕何か持ってこようか?音無さんは何がすき?大丈夫、七星邸なら料理人が美味しいのを作ってくれるよ」


瑞穂、咲羅、燕と交代で音無の見張りをしている時、彼女からそのようなお気楽な話しが出た事に音無は困惑した。


「お前は俺の事が怖くないのか?見た目はあどけない少女にしか見えないがな」


「チッ、チッ、チッ。燕をみくびられたら困るよ。貴方の事を怖いなんて思った事は一度もないもん。強いなとは思ったけど」


その言葉を聞いて音無は意地悪な返答をした。


「随分と図太い神経を持っているんだな。俺はチキン南蛮をこよなく愛してるんだが、燕の肉も悪くないな」


「きゃー、怖い!燕、チキン南蛮にされちゃう!」


しかし、燕の口調は正に棒読みであり一切の動揺がみて取れない。

流石は名門乙黒家の後継者、このような緊急事態には慣れているのだろう。

しかし、そんな彼女にも動揺する事態が起こった。


「がっ!あぁ...あぁ!やめろ!くるな!」


彼は突然、何かに怯え恐怖するように身体をもがきはじめる。

拘束していた手錠の鎖がガチャガチャと音を立て、燕の恐怖を煽った。


「ちょ、ちょっとどうしたの!?ねぇ!?みず...」


助けを求める為、瑞穂の名を呼ぶ前に彼女の視界は緑色に染まった。


「どう、海鴎君?次、見張り出来そう?」


「えぇ、安静にしたら随分と良くなりました。燕様の元に行って参りますね」


海鴎が交代の為、地下倉庫へ向かおうとすると何故か血生臭い匂いがした。

彼は鼻と口を覆い、後退りしようとしたが見知った顔が近づいてきた。

その正体に気づくと立ち止まりはするものの一向に身体の震えが治る何処か更に寒気が襲った。


「...海鴎君、やられた。音無が爆ぜた」


まるで燕はバケツの水を被ったように、血を全身に浴びている。


「今まで大人しくしてたのに、急に苦しみ始めたの。瑞穂達を呼ぼうと思ったけど間に合わなかった」


呆然とし虚ろな目をする彼女を海鴎は異常事態だと感じ取りすぐさま駆け足で上にいる3人を呼んだ。


「燕、良く耐えた。1人で辛かっただろう。屋敷の浴室を使ってもらって構わない。使用人に着替えを用意してもらおう」


「...うん、ありがとう亘君」


亘は燕を上へと送り届け、残った4人は音無のいた場所を凝視していた。


「こんな事ありえねぇ、爆薬でも仕込んでない限りはな」


「でも、ちゃんと武器類はこっちで回収したしお腹に何か仕込んでいる様子もなかったわ。どうなってるの?」


「何か、体質的なものなのでしょうか?」


そんな時だった。散乱した肉塊が一箇所に集まる。

その光景に皆恐怖しながらも、瑞穂、咲羅、海鴎は亘を守るように囲いこんだ。


「何が起こっているんだ!?」


そのあと肉塊は人の姿へと形成していく。

その姿は音無の姿そのものだった。

いや、以前見た時より若く見えるのは目の錯覚なのだろうか?

音無は何も発する事なく、自身の身体を確認したあと倒れ伏した。


「ムッティ、彼の容体は?」


「瞳孔に反応はあるから脳は動いているようだけど、中々こんな状態見られる物じゃない。植物状態に近いわね。紫紋、検査器具を持ってこれる?」


海鴎は屋敷に母親を呼び、音無の対応をお願いした。

彼は時々、母親の手伝いをする事はあったがここまで深刻な状態は初めてだったのだろう。右往左往してる様だった。


亘達は先程の出来事の原因を探る為、燕とも合流し資料を探っていた。


「そもそも、運び屋と軍人は一般人と異なる体質を持っている事を忘れていた。何があってもおかしくない。僕達はその心構えをもっていなかった」


「軍人達は人魚と人間の混血児、そして不老長寿で姿形がゆっくりと移り変わる。もしかしたら、そのせいじゃないかしら?」


瑞穂は資料の文書の一部を音読した。


「その若い身体を維持する為にはあの方法が必要って事か。坊ちゃん、これは好機。これを脅しの材料に使えば、軍はこの町から去っていくだろうよ」


「確かに、これは彼らにとって致命傷だ。若さを維持する為に一回身体を作り替える必要があるなんて、しかもその間動く事もままならない。完全に無防備な状態だ。今までどうしていたんだ?薬で制御出来るレベルなのか?」


亘とて、医学の知識には乏しい。

海鴎の母親から色々聞き出す事も出来るだろうが、彼女にそんな余裕など残されていないだろう。

そんな時だった。燕がこの様な提案をした。


「ねぇ、亘君。Dr.黄泉を呼ぼうよ!もし、瑞穂や咲羅の行動範囲内にいたら協力してもらえるかも。ついでに参区がどうなっているのかも知りたいし、見回りもかねて。どうかな?」


「確かに、今現状音無は動けない。植物状態ならすぐに目を覚ますのも難しいだろう。瑞穂、咲羅、頼めるか?」


2人はお互いの顔を見た後、頷きその場を後にした。

中心街の小坂まで移動した2人は異常な光景を目にする。

目の前に聳え立つ巨城と、雪に埋もれ窒息死する軍人達の姿だった。


「参区がこんな大変な事になっていたなんて知らなかったわ。この城の中に誰かいると良いけど」


2人で城内に潜入し、手がかりを探す。

そんな時だった、咲羅が何かに気づいたのか瑞穂を呼び寄せる。


「瑞穂、ここに印がある。児玉と光莉の物だ、近くにいる可能性が高い」


「そうね、その2人がいるなら望海ちゃんも側にいるかもしれない。上まで行ってみましょう。ここならDr.黄泉の武器も使えるし、あの子達にも捜索を協力してもらおうかしら」


【コード:700 承認完了 論語猿を起動します】

【コード:700 承認完了 青丘せいきゅうの虎を起動します】


「まぁ、可愛い!それじゃあ行ってらっしゃい」


複雑な城内を諸共せず、瑞穂達は動物達の力を借りて上の方へと登っていく。

猿に案内された場所に行くと、人が集まっている事に気づいた。


「やぁ、瑞穂、咲羅。久しいね。ご覧の通り、動ける者は私達以外にはいないよ。援軍を送る事も出来なそうだ」


瑞稀の返答に倒れた7人と百地の姿を見て2人は珍しく動揺している。

しかし、周囲に黄泉がいる事を確認し其方へと向かった。


「Dr.黄泉。肆区で少し困った事が起こりまして。音無伍長を捉えたのですが、数時間の監視の後。身体が四散したんです。まるで爆発したみたいに」


その言葉に話を聞いていた黄泉は勿論、圭太も瑞稀も目を見開き百地を見やる。


「けいた、ばくはつってなに?」


「えっと...身近な物で言うと花火見たいなものかな?零央、ごめん。これ以上は僕から話さない方がいいかも」


「そのあと、残骸が集結して元の...いいえ、新しい身体と言った方が正しいのかしら?新しい姿に生まれ変わったの、私達もびっくりしてしまって。ただ、幸いな事に音無伍長はそのあと倒れて今植物状態で動けないでいるの」


「Dr.黄泉なら何か原因が分かるかと思ったが、この状態じゃ厳しいだろうな」


参区も肆区も音無と百地を捉えたものの、運び屋達は限界を迎えていた。今、動ける人間も少数だ。

黄泉は少し考えた後、口を開いた。


「分かった、僕の力が必要という事だね。それなら少し待っていてくれ。動ける3人に指示を出そう」


そう言って黄泉は圭太達を呼び寄せ、指示を出した。


「済まないが緊急事態だ。僕も肆区に行かなければならない。零央君、君の力が必要だ。治療なら【盧舎那仏】で粗方対応出来る様にはしている。それに念力の回復ならもう少しで終わる筈だ。それまでの間、皆の護衛を頼んだよ。圭太君もサポートして貰えるかな?」


「勿論。それに百地が抵抗してきたら全員を連れて弐区に避難すると言う手段もある。瑞稀さんもいるし、退路は作れる筈だよ」


「そうだね。それに、根本的な原因が分からなければ対策のしようがない。ここは私達に任せてDr.黄泉に行ってもらった方がいいだろう」


「れお、みんなのことぜったいまもるから!よみせんせい、いってらっしゃい!」


「頼もしいね。では、瑞穂君、咲羅君行こうか?」


「無理を言ってごめんなさいね。こちらで何かあったらすぐに私達でもいいし、Dr.黄泉を呼んで。駆けつけるから」


そのあと、瑞穂達3人は肆区の七星邸へと戻る事にした。



もうそろそろ話数的に本編が終了する為、終了後についてお知らせをしたいと思います。

【通常盤】では圭太視点の前日譚を投稿させて頂きましたが【完全版】では新しく仲間に加わりました阿闍梨視点の後日談を前後編に分けて投稿させて頂きたいと思います。


小話集やキャラクター紹介については原型である【通常盤】の方にまとめて投稿しておりますので興味のある方はご覧ください。

最後に後書きを投稿して完結とさせて頂きます。

宜しければ最後までお楽しみください。

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