第漆拾陸話 宝島 ▲
「トッキー!早く!」
角筈に辿りついた朱鷺田達3人は比良坂町の行政施設の一つへと向かった。
資料室の前で待つ旭と谷川の存在に気づいた朱鷺田は駆け足で向かう。
「今、鍵を持ってきた。あまり長居は出来ないぞ。まずは金の動きを調べないと、軍からどのくらいもらっているのかもな。正確な数字がわかれば、俺から親父に突き出す事も秋津基地に突き出す事も出来る」
室内に入り、該当する資料を探す。
3人が資料を探す中、谷川がとあるタイトルの書かれたファイルを見つけ朱鷺田の元へと駆け足で持ってきた。
彼の手に渡った後、素早くページを捲り数字を確かめている。
「みどり君、これじゃない?この補償金名簿って奴」
「出来したぞ、谷川!!ざっと、年予算の2〜3割って所だな。かなりもらってる、軍からの金がないと財政が逼迫するレベルだな」
朱鷺田の声に旭も駆け寄り、資料を覗き込む。
そのあと、彼は料亭で町長と全斎が話していた内容を思い出しこの町の未来を憂だ。
「そもそも、比良坂町は芸能と芸術の町って言われてるからな。技術も作品も作るのは結局人な訳で、最盛期でも1万。今現在、人魚による被害で4千人まで落ちた。1区辺りの人口は1千人。そんなんで産業が回るとは思えない。俺達は運び屋業で金をもらってるけど、一般人はそうじゃない」
その言葉を聞き、谷川は自分達の入ってきた扉の方を見やる。
この資料室の外、比良坂町の事を考えているのだろう。
自身は勿論、旭や朱鷺田は裕福な家系の出身だ。
そのせいで一般人と自分達とでは目線が違う。
その違和感に気づけなかった事に後悔した。
「そっか、確かに最近。工芸品関連の依頼が減ってるんだよね。職人さんもおじいちゃんばっかりで若い人がやりたがらないって嘆いてた。外にも技術を出す気力もないって」
「だろうな。だけど、外に通用しないと言われればそうじゃない。実際、許可があれば外で商い出来るんだ。比良坂町と外を行き来してる人間も何人か見た事がある。だからこそ、比良坂町は軍に依存してしまっているんだろうな。外に出られる手段が軍だけだから」
朱鷺田は名簿を閉じながら、悲しげな顔をする。
これから比良坂町がどうなってしまうのか?悲壮感に浸っているのだろう。
「ねぇ、みどり君。比良坂町の外ってどうなってるんだろうね?」
「なんだ、谷川?仕事したくないからって外に脱走しても意味ないぞ?」
谷川の疑問に対して、朱鷺田は冗談半分で返事を返す。
しかし彼は良く知っている。
賢い彼女なら何か考えがあるのではないか?と。
しかし谷川自身は言葉に詰まり、自分の考えを上手く纏められないでいるようだ。
不満気な表情をしながらも口が動かない。
そんな2人の会話を旭は見守っていた。
「そうじゃなくて、なんか私達って根本的な事を忘れてるなって。どうやって人魚がここにきたの?そうじゃなくても、何処から来たんだろう?それに、もしこの世界が比良坂町と秋津基地だけならわざわざ壁を作る必要ってなくない?人魚を隔離するだけならまだしも、周囲に壁を作る必要はないよね?何もなければ野ざらしにしてたっていいんだから。それに、150年前は基地もなかった訳だし」
その言葉に朱鷺田と旭は頭を真っ白にする。
いや、確かに彼女の言う通りなのだ。
外界との繋がりを隔てる為に壁があるのだとしたら、その”繋がり“は何処へ行ってしまったのだろうか?
「あれ、2人共どうしたの?谷川さん、また変な事言った?」
「谷川!!」 「鞠理!!」
2人は良くやったと言わんばかりに彼女を強く抱きしめた。
今までにない光景に彼女自身も赤面する。
「谷川さん、もしかして逆ハーレムルート入っちゃった?」
そんな言葉も気にせず、朱鷺田と旭は話を続ける。
「確か、近くの図書館に昔の地図があるはずだ。150年前の地図を出来るだけ揃えるぞ。何か繋がりが見えるかもしれない」
「外との繋がりが見えてこれば、軍に依存せずとも比良坂町を復活出来る手がかりが得られるな。そうなったら直ぐ行こう」
2人は谷川を置いてスタスタと室内から出てしまった。
「ちょ、ちょっと!谷川さんを置いて行かないでよ!みどり君、鍵閉めんな!ここから出せ!」
「谷川の言う通りだ。本当にあったぞ、こんなの盲点だった」
地図を見ながら絶句する朱鷺田の指差す先には比良坂町から少し離れた所に島々が見える。その側には「琉球」の文字があった。
恐らく、肆区で亘達が鏡越しで見たのと同じ物だろう。
「比良坂町は海に囲まれた土地だったんだ。人魚もおそらくここから連れて来られた。かなり海と近いな。そして、肆区から少し離れた所に例の琉球がある。資料によれば独自の文化が築き上げられていて、以前は比良坂町とも貿易を行っていたらしい」
比良坂町では魚類のみが比較的安価で手に入る。
それは地理的に海に囲まれていたからなのだろう。
そんな時、谷川は比良坂町と琉球の地図を見てある発想に至った。運び屋である彼女だからこその発想だろう。
「ねぇ、琉球との貿易って誰が担当してたの?」
「確かに、謎だよな?普通に考えたら比良坂町と琉球を行き来する運び屋がいてもおかしくない。特に肆区からなら地理的にいけそうじゃないか?その状態で比良坂町に壁が作られたら異変に気づくだろうに」
「...そもそも、いないんじゃないか?」
朱鷺田の全てを否定するような言葉に2人は驚く。
「海には人魚がいるんだ。そんな奴らを敵に回して、ここまで来れる運び屋は俺達の中には居ない。だとしたら、一つの結論に辿り着く。比良坂町と琉球の貿易を担っているのは人魚だった。元々、協力体制だったのをぶち壊したのは此方側だ。人魚の肉に不老長寿の効果がある事を知った先住民が彼女らを捕えた。それを周りに悟られない為に比良坂町に人魚を壁で囲い込んだんだ」
「そうしないと、琉球からの心象も悪くなるからって事?それって自業自得じゃない?何の問題解決にもなってないよ。逃げてるだけじゃん」
「鞠理の言うとおりだ。だとしたらこんな壁、もう無い方がいいかもしれないな。それに隠す意味もない。そもそも、この土地は周囲と共存しないと成り立たない。俺は運び屋と人魚は支え合って生きていくべきだと思うし、軍とも友好関係に慣れれば良いに越したことはないと思ってる」
「そうだな。俺達の考えは決まりだ。あとは、この考えを資料に纏めて上に提出するしかないな。だとすると、敷島会長と鶴崎辺りか。とりあえず、忍岡に戻ろう。2人ともそれでいいな?」
その言葉に旭と谷川は頷いた。
圧力に晒された作者は更なる圧力に襲われました。
元々、旅の行き先は何個も事前に候補を決めて時間が取れた時にふらりと旅行に向かう弾丸旅行の場合が多いです。
そんな中で出来るだけ行っていない都道府県に行こうと言うのが作者の旅の目標でもあります。
日本の東西の基準は曖昧だったりするんですが作者の思う東日本、北海道、東北、関東、甲信越、北陸の中でまだ行ってなかったのが山梨県だったんですよね。
「零央を出してるし、「あずさ」とか「かいじ」とかキャラクターも増やせるしな。行かないと失礼だよな」と律儀に思って苦手な新宿駅に重い足取りで向かいました。
作者にとって山手線西側は遊ぶ所で、新宿は仕事の研修というか、セミナーで行く事も偶にあるので東京、上野と同じくなんだかんだ言って利用回数が多い駅ですね。
話しを戻して四季島と三度目の出会いが発生したのは帰りの事ですね。山梨から新宿に戻る時の事で、立川駅と新宿駅の間ですかね。
北海道で会って、東京で再会したのは丁度10日目の事です。
もう、これは四季島に「乗れ」って言われてるんですかね?
恐ろしい圧力ですね。
ですが、費用は勿論、社畜なので休みも取れないし何よりボッチなので当分先の話になりそうです。




