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鉄壁の運び屋 壱ノ式 ー三原色と施錠の町ー【完全版】  作者: きつねうどん
第十六章 陰謀
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第陸拾漆話 侵入者 ◎

小坂の城の天守閣には町全体の景色を眺める圭太の姿があった。

身を乗り出し、遠くの壁が鎮座する所まで細かく景色を観察しているようだ。


「これが比良坂町の景色か。天下人になった気分になるね。おっといけない。僕も準備しないと」


【コード:800 承認完了 ジャック・フロストを起動します】


彼が雪の結晶を宙に投げると少年のような笑い声と同じく雪だるまが現れる。

ジャック・フロストは異国の霜の妖精であり、悪戯好きなのだ。

彼の力により雪景色に変わる。

それと連続して鴉も起動させるが、配置についた途端一瞬にして姿を消した。


「やっぱり百地が側にいるのか、何処に?」


そんな言葉を言う前に圭太に影が降りる。

目を見開き、瞳孔が収縮した先には百地がいた。

その時、圭太は生まれて初めて人に恐怖を覚えた。


「異国の運び屋、この城の主は何処だ?この見事な城、落としがいがある」


「あ...あっ」


圭太は反射的に後ろに逃げようとするが、百地に距離を詰められる。


「なんだ?異国の運び屋は此方の言葉を喋れないのか?この前会った時は饒舌に話していたように見えたが。それならば、役に立ちそうにないな」


そのあと、天守閣から爆発音が聞こえた。

それと同時刻、下の階では希輝が浅間からの連絡を受け取っていた。


「希輝ちゃん、私の声聞こえる?結論から言うと、軍人達は刀や槍の方が攻撃が効きやすいの此方でも出来るだけ弱点を見つけてみるから分かったら連絡するわ。協会の方は任せて、出来るだけ足止めしておくから」


「流石です浅間先輩。聞いた望海?これならアタシ達にも分があるかも。...っ、何?」


「天守閣の方からです!まずい、あそこには圭太がいるのに!」


2人は慌てて天守閣に向かうと、ボロボロになって倒れる圭太とそれを守るように、黄泉がいた。


【コード:923 承認完了 毘沙門天を起動します】


「ギリギリ間に合ったね。だから言っただろう、僕と出会えた事は何よりの幸運だと」


その場から逃走しようとする百地の存在に気づいた希輝は直ぐに行動を開始した。


「この!逃すか!!」


【コード:007 承認完了 槍の又左を起動します】


6m30cmにも及ぶ長槍が百地の元へと向かう。

そこから更に槍を囮にし、接近戦を仕掛ける。


【コード:007 承認完了 大典太光世(おおてんだみちよ)を起動します】


刀を振り上げるが、百地に僅かな出血を齎もたらす程度で致命傷には至らない。


「くそっ、やっぱり動きがアタシ達と全然違う。逃げられた」


望海はその内に圭太と黄泉元へと向かった。


「圭太!ごめんなさい、貴方を1人にして」


「姉貴、僕の事はいいから早くおじさんの所に向かって!おじさんに何かあったら本当に城がなくなった後、包囲されて全滅させられる」


圭太は傷口を押さえながら望海に対し、訴えるように指示を出した。

そんな彼を黄泉は支えるように、肩を貸す。


「望海君、僕を誰だと思っているんだい?泣く子も黙るDr.黄泉だぞ?僕に治せないものはないんだ。君達は早く児玉君達と連携してあの忍者を追いたまえ」


【コード:700 承認完了 妖刀村正を起動します】


「Dr.黄泉、圭太を頼みます。希輝さん、百地を追いましょう」


「勿論、その前に光莉と児玉さん連絡しないと。あの2人なら側にいるでしょ。白鷹と剣城にも護衛を頼まないと2人とも念力が切れかかってるんだから」


その一方、光莉と児玉は地下へ潜る為、下へ下へと移動していた。

この城の凄い所は外見上から見える城はフェイクでもう一つ小さな城が内蔵されている事である。

その為、内装の全貌を探る事が困難で道も非常に入り組んでいる。


運び屋は印をつけ、迷う事なく縦横無尽に動き回れるだろうが軍人達はそうもいかないだろう。


「玉ちゃん、ここら辺で身を隠そう。私も念力回復させないといけないし、お互いガス欠だから無理に動かない方がいいよ」


「そうだな。後は後輩達に任せて、作戦を練るとするか。無茶をし過ぎた、老体に応えるな」


「ちょっと、やめてよ玉ちゃん!私までおばあちゃんみたいじゃん!」


光莉は児玉の肩を叩くが、彼にとっては丁度良い肩たたきのようだった。


「そういれば、こうやって2人で話すのも久しぶりだな。いつも、望海が側にいるし圭太や零央もいるから静かだった頃の喫茶店が懐かしいよ。光莉、俺達は何年一緒にいる?」


児玉は光莉と向き合い、昔を思い出すように話をしているようだ。


「奥さんのお腹の中に零央君がいた時だったから、もう5、6年前かな。覚えてるよ、あの時玉ちゃんが作ってくれたビーフシチューの味。...家の食堂で料理長に作ってもらったコース料理より何倍も美味しかった。今でも望海達と賄い食べてる方が楽しいよ」


「そっか、それは良かった。光莉、俺は出来るだけ2人が喫茶店が自分の居場所だと思えるようこれからも続けて行こうと思ってる。それにしても、光莉は会った頃より随分と丸くなったな。覚えてるか?旭、朱鷺田、山岸、青葉と初めて顔合わせした時の事」


それを言われた時、光莉にとっては黒歴史だったのか?

顔を真っ赤にしながら児玉に詰め寄る。


「ちょっと!玉ちゃん、それは言わない約束でしょ?」


「しょうがないだろう?光莉が4人に向かって「私がリーダー」だってガン飛ばしてたんだからあの時はヒヤヒヤしたよ。他の奴らも勢いに押されて光莉には逆らえないって口を揃えて言ってたしな」


光莉は嫌な思い出をほじくり返されたくなかったようだ。

当時、光莉は両親を亡くし私生活も荒れていた。

そんな中で児玉と出会い、改善していく途中での出来事だったのだろう。

それ以上に光莉は怖がっていたのかもしれない。


「私は嫌だったんだよ。玉ちゃんが舐められるのが。元祖が1番だって証明したかったんだよ。今も新しい運び屋がどんどん生まれてる。でも、光莉と児玉のコンビから全部始まったんだって事に嘘はない。

そして私達が1番である事に揺るぎない。望海が加入してやっとこの組織は完全体になれた。私達は負けない。どんな敵であっても。私達が終われば、本当の終わりだから」


その言葉に児玉は頷く。


「勿論だ。元祖が1番だって事を証明してやらないとな」


そのあと、児玉は百地がいるであろう城の天井裏を見上げた。


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