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鉄壁の運び屋 壱ノ式 ー三原色と施錠の町ー【完全版】  作者: きつねうどん
第十五章 旧知の友
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第陸拾漆話 再会 ▲

協会の中に侵入した朱鷺田達は誰もいない一室に身を潜めていた。


「不幸中の幸いだったな、建物の中に人はいないみたいだ。それ以上に外にガチガチに警備が撒かれるな」


部屋のカーテンの隙間から朱鷺田は少しだけ顔を出し、軍人達が目の前を通るのを見ると反射的にそれを閉じた。


「認識の違いでしょうね。一般の方だったら出入り口に向かうと思いますけど運び屋は会議室近くにそれぞれ印を持っているのでそんな事をする必要がないんです」


「谷川さんは面倒臭いからそもそも会議に出ないけどね。みどり君、谷川さんの腹時計がなってるよ。ちょっとお昼休憩しようよ。みどり君の作ったおにぎりと味噌汁が食べたいな」


「谷川!!ちょっとは緊張感を持て!!全く」


「まぁまぁ、腹が減っては戦はできぬと言いますから。谷川さんの言う事も案外的を得ているかもしれません」


「いいんだぞ、浅間。無理してフォローを入れなくても」


そのあと、浅間は移動したいと言うので2人も一緒についていく事にした。

しかし、移動した場所は見晴らしの良い屋上庭園だった。


「谷川さん、これから軍人達の動きを止めるので自分の身を守れる物はありますか?巻き添いを食う可能性があるので」


「おー、まーちゃん。大胆!みどり君はそのままでいいの?」


「朱鷺田さんは町長の息子さんなので、無効化出来るんです。見た感じ数だけで指揮官もいないように思えます。今がチャンスかと」


「分かった。発動条件があるんだな?こっちにも防衛手段はある。後は浅間に任せよう」


【コード:007 承認完了 毘沙門天を起動します】


守り神の加護により朱鷺田と谷川は幕に包まれる。

それを見た浅間は確認した後、行動を開始した。


【コード:007 承認完了 牛蒡種(ごぼうだね)を起動します】


次の瞬間、浅間の目の前に150の瞳が現れる。

それは人間に限らず、さまざまな動物の瞳が軍人達を見下ろしていた。


「目を合わせない方が良いですよ。発狂か頭痛で苦しむだけですから」


「まーちゃん、恐ろしい子!」


「本当に仲間でよかったな。敵に回したら厄介なのは昔から知ってるけども」


しかし、浅間の警告も虚しく軍人達は空を見上げて目を合わせてしまう。そのあとの結末は容易だろう。

激しい頭痛に悩まされて動けなくなる者や、気が触れたのか味方に銃を乱発射する者も出てきてしまった。


これが浅間の戦法、敵を混乱させその内に追い討ちをかける。


「大軍で押し寄せるからこそ、敵は油断し1人1人の能力を全力で発揮出来ずに終わるんです。私はそう言う方達が大好きです。勝てるって思いましたよね?こんな貧弱な女に負けるなんて思いませんよね?1人で何が出来るんだって思いますよね?そんな事、私が1番分かりきっているんですよ!」


【コード:007 承認完了 六文銭を起動します】


部隊の混乱に乗じて四方八方から槍や鉄砲が飛んでくる。

その様子を浅間は冷静に見つめていた。


「やっぱり、火器は相性悪いですね。案外、刀や槍のようなシンプルな物の方が効くのかもしれません。鉄砲ではなく、弓に変更しておきましょう。朱鷺田さん、谷川さん。ご協力ありがとうございました。これでしばらくは時間稼ぎ出来るかと、軍を足止め出来ればこっちのものですので」


そのあと谷川は浅間に対し、拍手を送った。


「まーちゃん、凄いカッコよかったよ!谷川さん、安心してお腹空いて来ちゃった。みどり君、家に帰ってご飯を食べて来よう」


「谷川、またそんな事言って...」


そんな時だった、下の階段から足音が聞こえる。

奇襲だと思ったのか谷川は素早く2人の前に出た。


【コード:007 承認完了 鎌鼬かまいたちを起動します】


突然現れた人影に鎌鼬が襲うが、相手は涼しい顔どころか和にこやかな笑顔で対応した。


【コード:200 承認完了 毘沙門天を起動します】


「鞠理、ちょっとは体動くようになったか?酷い事するな、仲間に向かって」


「「旭!?」」


「旭さん、どうしてここに?」


「よっ、新入り。さっき下から見てたぞ、腕を上げたな。俺も毘沙門天がなきゃ巻き込まれてた」


「もしかして、協会の近くにいたんですか!?どうして?」


「散歩?いや、今は昼寝か。ここは見晴らしも良いし、気に入ってる場所だったんだよな。今は、変な奴らが近くにいるけど。それも悪くないな」


そう言いながらこの状況で旭は昼寝を開始してしまった。

本当にマイペースというか、柔軟な思考、器がデカい、鈍感と彼の性格を一言で語るには難しいぐらい様々な単語が思い浮かぶ。



冬空に合わせた、白と緑のニット帽とそれと同じ色のダウンジャケットを着ている。

その姿に朱鷺田は懐かしさを覚えていた。自分達が運び屋を始めた時も彼は同じ色のコートを着ていたのを。


「珍しく旭と気が合うね。谷川さんも昼寝しよっと!」


「...朱鷺田さん。お2人共どうします?寝ちゃいましたけど」


「放っておきたいのは山々なんだが、状況が状況だからな。おい、起きろ。谷川、さっきおにぎりと味噌汁が食べたいって言ってたよな?卵焼きも付けてやる。これでどうだ」


「...はっ、谷川さん。みどり君の料理大好きなんだよね、仕方ない。起きてあげるよ」


「...トッキー、俺の分は?」


「今、起きると約束したら旭の分も作ってやる」


「仕方ない、起きるか。トッキーの飯に敵う物はないからな」


「普段から、こう言うあやし方をされてるんですか?朱鷺田さん」


「でっかい子供が2人いる状態だよ。でも、なぜか憎めないんだよな。何年一緒にいても飽きる事はない、ずっとこのままでいいと思えるぐらいにはな」


「ふふっ、先輩達が羨ましいなと思ったのはこれが初めてかもしれません」


そのあと、旭の側で寝そべる谷川が自慢するようにこう言った。


「ねぇねぇ、旭。見てよ!みどり君とお揃コーデなんだよ。いいでしょ?羨ましいか!」


「あぁ、洋服と着物だから分かりずらいけど確かにお揃いだな。良く似合ってるじゃないか、鞠理。美人は何着ても似合うな」


その様子を朱鷺田は羨ましそうに見ているようだった。


「良いよ、別に。今日は顔も少し浮腫んでるし。髪を切ったせいで寝癖も上手く治らなかったし。地味な格好してるし、別に褒めてもらえなくても」


「旭さん、朱鷺田さんがお待ちかねですよ。構ってあげてください」


浅間のフォローに朱鷺田は驚くも彼と目を合わせると何と言ってくれるのかと頬を赤らめているようだ。


「あぁ、ごめんごめん。大事なのは最後にとっておく主義だからな。トッキー、ちょっと両手を広げてくれないか?」


「な、なんだよ。もう、しょうがないな。ほら、広げたぞ。旭も寂しがりや...」


これからハグでもされるのかとおもったら、なぜかメジャーを取り出され胸囲を測られているようだった。


「おぉ!凄いな、人間の身体ってこんなに変わるのか。首が太くなってるからある程度筋肉はついてるんだろうなとは思っていたけども。トッキーも細かったからな、これなら俺も安心かな」


「...」


「ウエストも測らせてもらうぞ。相変わらず腰細いな。ちゃんと飯食ってるのか?前は俺の半分しか食ってなかっただろ?鞠理より食細いとか相当だぞ」


「そ、それは大丈夫。最近、飯も美味しくなってきたしな。所で旭、何をしてるんだ?それ楽しいか?」


「えっ?トッキーのスリーサイズ測ろうと思って。前は怖いぐらい細かったしな。健康維持も込めて、良い状態の数値を測っておこうと思って」


「再会した仲間にやる事じゃないな、それ。それに、服の上だと意味ないだろ。まずは感動の抱擁からだ。ほら、旭!こっちにきなさい!」


「えっ、いやだ。ほら、鞠理。家に帰るぞ。浅間もほら外寒いだろ、炬燵出してあるからさ。ほら行こうぜ」


「ういっす。まーちゃん、谷川さんと一緒に炬燵でグダグダしよう。あぁ、そうだ。旭、ほら11月誕生日だったでしょ?渡せなかったからさ、谷川さん持ってきたんだよね。ほら、谷川さんはリングガールに転職したんだよ。みどり君のもあるからさ、お揃いでつけてよね。ふぅ、谷川さん良い仕事したぜ」


「た、谷川!!今年はまともなプレゼントを用意してくれたんだな。やれば出来るじゃないか...って。両方とも同じサイズじゃないか?というか俺達にあってないし」


「えっ!?谷川さんちゃんと自分で確認したんだよ。ほらピッタリ!」


そう言いながら自分の薬指につけているようだ。

その光景に旭は爆笑し、朱鷺田は頬を膨らませていた。


「谷川!!俺達にサイズ合わせないでどうするんだよ!!自分に合わせても意味ないだろ!!本当にもう」


「トッキー、俺。水色の箱の奴がいいな。結婚指輪は妥協したくないからさ」


そう言うと浅間はまるで乙女のような発言だと腹を抱えて笑っているようだった。


「えっ!?あの、クソ高い奴か!?旭って何気に高価な金のアクセサリーとか好きだよな。流石は銀行頭取のお孫さんって所か。分かったよ。それで結婚してくれるなら安いもんだ。ずっと一緒にいてもらわないと困るしな。でも、今はこれで我慢してくれ」


そう言いながら朱鷺田は野花を摘んで、幼い頃旭がしてくれたのと同じように指輪をはめる。


「町長の息子って案外ケチだよな。見てみろよ、女性陣。これが結婚の現実だぞ。あーあ、稼ぎの少ない旦那を持つとこうなるのか」


そう言いながらも幸せそうに旭はその指輪を見ているようだった。


「これから稼ぐんだよ。浪費家の旦那がいるからこっちは大変だよ。でも、旭との時間も欲しいしな。スケジュール調整すれば20分速く帰って来られると思うんだ」


それに便乗するように谷川も嬉しそうに手を挙げる。


「谷川さんも!仕事さぼ...旭との時間を作ろうかな!一緒にゲームしたりさ、ゴロゴロするんだ!」


しかし、そのあと2人の口論が始まってしまった。


「谷川はサボりたいだけだろ!俺は旭との時間を作るっていう正当な理由があるんだ!」


「其方の方が私情に近いじゃんよ!絶対、協会は許してくれないよ!?あぁ、またコイツらかって言われるんだよ!みどり君、此処は全体でサボるべきだよ!みどり君と谷川さんで一緒にサボったら40分も旭との時間が取れるんだよ!しかも毎日!凄いお得じゃない?」


「おーい、なんか口論が変な方向に向かってるぞ。と言うか、2人とも真面目に仕事しろ。なんでトッキーは俺の事になるとIQが下がるんだよ。2人とも完璧な私情だろ」


「でも、旭さん。噂によると皆さんの担当地区で長期の夜間工事があるようなんですよ。インフラ整備って言えばいいんですかね。それが始まったら本当にお2人とも仕事を早めに切り上げないといけなくなるので、案外通ると思うんですよね。お2人の意見」


その言葉に旭は驚き、会話の続きを聞いているようだ。


「毎日40分!?それはデカいな。よし、その間旭と何をするか色々考えて置かないとな。谷川、偶にはいい事言うじゃないか。そうだな、旭ばかりじゃなくてお前の意見も素直に受け入れるべきだな。よし、それで協会に提出しよう」


「よっしゃ!これで谷川さんのニートライフ計画一歩前進!じゃなかった、偶には家族団欒の時間も作らないとね」


旭と浅間は苦笑いを浮かべながら2人が楽しそうにしている所を見守っているようだった。

《解説》

3/16のダイヤ改正によって各新幹線に変化がありましたが、上越新幹線は幹線内の整備の影響で下り方面の終電が20分早まるという事態になりました。

新潟と東京は密接に繋がっているので長野もそうなんですが、夢の国に日帰りで行かれる方も多いんですよね。

良くお土産袋を持っている方を目にします。


地元の方にとってはギリギリまで東京に残りたいと言う方にとっては不便な事になりそうですが、新幹線は安全が命ですからね。人手不足という事もあり終電を切り上げて時間を確保したいという思いがあるのでしょう。


そんなニュースをYouTubeで見た作者ですが、相変わらず解釈の魔物なのでその直前にあさひ号の映像が出たんですよねダイヤ改正が20数年ぶりという事で当時の映像が流れていたんですが「あっ、ときは速く仕事を終わらせてあさひに会いたいんだな。じゃあ、仕方ないな」と謎解釈をしました。


谷川もやる気のないキャラにしていたのでそれに便乗して自分も速く帰ってゴロゴロしてるんだろうなと勝手に思ってました。

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