第陸拾陸話 ご挨拶 ◆
「青葉さん!愛さん!」
氷川に着いた青葉と愛は、2人に迎えられる。
翼は小さな身体を大きく見せるように大きく手を振っているようだった。
「青葉、久しぶりだな。山岸の方には連絡入れたのか?」
「実はまだしてないの。昔のコード使えるかしら?」
「それなら大丈夫ですよ。旭さんも使えるようにして欲しいって言われて、お2人は「コード:200」を使用出来ます。相手の無線にもその表示が出ますから山岸さんは分かると思いますよ?」
その言葉に青葉は安心したのか直ぐ様山岸に連絡を入れる。
しかし、中々返事が来なかった。
ただ、青葉は彼のいつもの癖だと察知しているようだった。
しかし、事情を知らない那須野は首を傾げている。
「不来方で何かあったのか?小町も側にいる筈なんだけどな」
そんな時だった、可愛らしい少女の声が聞こえてくる。
「もしもし、此方小町なの。この古いコードを使うのはだあれ?」
「私よ、可愛い小町ちゃん。少しは背が伸びた?寿彦さん側にいるかしら?変わってもらえる?」
「わぁ!青葉なの!ちょっと、待って。寿ちゃん、何で逃げるの!」
「捕まえて」
そのあと、ガサゴソと向こうから揉めるような音がする。
「ちょっと、小町!随分と動きが速くなったんじゃない!お兄さんに歩調を合わせてくれてもいいんじゃないかな?」
「当たり前なの!隼に合わせてたら寿ちゃんだって捕まえるのは簡単!ほら、マドンナから電話なの!出ないと失礼でしょ!」
「分かってるよ!でも、緊張するんだから仕方ないでしょ!野球の試合よりこっちの方が心臓に悪いわ」
しかし、山岸も小町に追いかけられ次第に体力を消耗させる。次第に諦めムードになり、彼は無線機を手に取る覚悟を決めたようだ。
しばらく経つと、お目当ての声が聞こえてきた。
「...はい。こちら、山岸です」
「あら、奇遇ですね。私も山岸なんです。昔は森園だったんだけど誰かさんと結婚したせいで変わっちゃって」
「それは申し訳ない事をしましたね。所で青葉さん、随分と古いコードを使われるんですね。こっちはもう「コード:005」ですよ」
「あら、良いじゃありませんか?懐かしい思い出に浸る事も時には大事よ?ところで寿彦さん、随分と困り果てているようね。千体をガラ空きにするなんて貴方らしくないわ。彼処も要所よ?」
「俺は女王様の席を用意しておいただけです。他意はない。...いつか戻って来てくれると信じてた。何度も同じ事を言うけど、あの時直ぐ駆けつけてやれなくてごめん。Dr.黄泉には感謝しても仕切れない」
「そうね、私の命の恩人だもの。私は貴方にも他の仲間にも自分を責めて欲しい訳じゃないの。組織が大きくなれば、目が届かなくなる事だってあるでしょう?逆に私が狙われるだけなら良い事じゃない?私は嫌よ、皆んなを失うのは」
そのあと、青葉が切ない表情をする向こう側で涙声になる山岸の姿があった。
「青葉、「私が」じゃない。俺は嫌だったよ。青葉を失うのは。俺の相棒は後にも先にも青葉だけだって今でも思ってる。朱鷺田も旭を思うように、いやそれ以上に俺は青葉の事を思ってる」
「それはプロポーズの言葉と受け取っても良いのかしら?」
「勝手に解釈してもらって構わないよ。青葉にはその権利があると思ってる」
そのあと青葉は機嫌良く微笑んだ。
「じゃあ、寿彦さん。これから私も仲間に加わります。それと、北部に後輩の子達はいるわよね?其方とも連携を取りたいのだけど大丈夫かしら?ヤンチャな子達と聞いているのだけど」
「まぁ、基本俺の言う事は聞かないからな。青葉でも手こずると思うぞ。躾甲斐はあると思うけどな」
「了解。じゃあ、千体に移動したらまた連絡します」
「やっとこれでフルメンバー揃ったすね。青葉さんが配置に着き次第【雪女】を起動させるんで。よろしくっす!隼と颯は青葉さんの事知らないんすよね、どう言う反応するんだろ」
「驚くだろうな。山岸もあまり青葉の事を話す訳じゃないし。でも良い機会だ。青葉、生意気なエース達を懲らしめてやれ」
「懲らしめるなんて言わないで、ちょっと可愛がってあげるだけよ」
その言葉に那須野も翼も笑っていた。
やはり青葉の存在というのは北部のメンバーにとって大事な欠片の一つだと愛は思った。
山岸が引き止めたくなるのも無理はない。
【コード:008 承認完了 雪女を起動します】
「颯、無線機に着信が」
合流した初嶺が颯の無線機が鳴ってる事に気付き、彼に渡すが苦い表情をする。
「なんだこれ、間違い電話にしては不気味すぎんだろ。誰かがタイムスリップでもして来たのか?」
「「200」今は誰も使用してないはず。変だな」
隼でさえも、首を傾げ戸惑っているようだった。
颯は恐る恐る通話ボタンを押す。
「...はい。こちら颯」
「出るのが遅い、貴方が待ってる間に仲間に何かあったらどうするつもりだったのかしら?」
「は?おばさん誰だよ」
「あ?」
颯は自身よりも低い声で言われた事にゾッとしていた。
青ざめる颯に隼は珍しく微笑んでいる。
彼の態度が新鮮だったのだろう。
「貴方、もしかして寿彦さんにも同じ事言ってない?良いのよ別に年長者を敬えなんて言わないわ。私には青葉という名前があるの。そっちで呼んでちょうだい」
「アンタが山岸が言ってた青葉か。引退した運び屋が俺達に何かようか?」
「今から復帰したからご挨拶をしたかったの。近くに末っ子君はいる?変わってもらえないかしら?」
「ほらよ、隼。なんか、面倒くさいやつが来ちゃったな」
無線機を渡された隼は颯とは反対に嬉しそうにしている。
どうやら隼は青葉の事が気になるようだった。
「はい、こちら隼。青葉先輩、ようこそ。歓迎します」
「あら、ずいぶんと偉そうな口ぶりね。先にいたのは私よ?貴方は後で来た末っ子君なんだから」
「そうですね、貴女の言う通りだ。だから先輩として、貴女に厳しく指導してもらえるととても助かる」
「あら、貴方。随分エースとしてチヤホヤされてきたのね。でも、貴方自身はそれを望んでないと。面白いわ、分かりました手加減しません。でも、しばらくはご対面出来そうにないわね。私もやらなければならない事があるの。貴方達もそれは同じ事でしょう?絶対に全員揃って帰って来なさい。良いわね?」
その言葉に隼は颯と初嶺に目線を向ける。
「言われなくとも」




