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鉄壁の運び屋 壱ノ式 ー三原色と施錠の町ー【完全版】  作者: きつねうどん
第十一章 過去と今と未来
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第肆拾捌話 夜空を見上げて ◆

前回の投稿後、勝手ながら作品のナンバリングとサブタイトルを付けさせて頂いています。

作品が探し辛かったら申し訳ありません。

「隼、愛ちゃんの診察は?問題なかった?」


初嶺と入れ替わる形で、隼達3人は治療を終え通常業務に戻る事となった。

無表情ながらも隼が頷くと小町もそうだが同じく診察を受けた翼も安心したように頷いている。


「それなら安心っすけど。俺も仕事溜めちゃってるんで早く拠点に戻らないと。山岸さんにも迷惑かけちゃったし。後で説教かな」


「説教なら俺だけで十分。それ以上に颯先輩の方が怒ってると思うし。業務全部あの人に押し付けちゃったから」


そんな会話をしながら拠点に戻ると、満面の笑みを浮かべた山岸が玄関入って直ぐに腕を組んで仁王立ちの状態で3人をじっと見ていた。

その後方では、那須野が謝るように何度も手を顔の前に(かざ)している。


「すまねぇ、隼。病み上がり早々、長時間説教になりそうだわ。辞めろって言ったんだけどよ」


「翼と小町はいいや。隼君、ちょっとこっちに来なさい。お父さんと話をしよう」


しかし、隼は状況に反して涼しげな表情で頷いているようだった。彼には何か思う所があったようだ。


「丁度良かった。俺も貴方と話をしたかったので。これからの事、相談したくて。良いですよね?」


隼は依頼人名簿などが仕舞われている資料室のような場所に連れて行かれ、案の定座布団は敷かれているものの正座をさせられている。


「隼、今回の件は最終的に児玉さん達の方で解決してもらったからいいけど。最悪、運び屋壊滅まであり得た事案だったって事は君も承知してるね?」


「勿論。俺は現役最強の運び屋。まぁ、初嶺もそうだし。あの小さな子供の方が恵まれた才能をもっている事は理解してますし。認めるつもりではありますけど。それでも、俺には組織のエースとしてもプライドがある。そこは譲れない」


そう言うと、山岸は嬉しそうに頷いていた。


「正直さ。隼は本人の前でいう事でもないかもしれないけど扱いが難しいんだ。生かしてあげる為に俺達も色々思考錯誤してるけど。結局は本人次第な所もあるしね。君は繊細だから何処かの拍子で壊れてしまわないか心配になるんだ。今回の件は特にそう。隼のプライドを深く傷つけた」


山岸の言葉に隼は自分の気持ちを見透かされたように気まずそうな表情をしながら相手から視線を逸らした。

その姿はまるで叱られて嫌そうにしている子供のようだと山岸は思った。


「プライドなんてあってないような物ですけどね。俺は貴方達に支えてもらってる。だからそう簡単に崩れたりしませんよ。それだけです。それにやっと開けた道もある。山岸先輩、久堂っていう人の居所は?」


そう、隼は少し前に初嶺が久堂という人物を口にしており彼が運び屋の情報を横流しした存在であると考察したようだ。

山岸は頷いた後、数ヶ月前の依頼人名簿を見ながら話を続ける。


「記載されてた住所は偽装と言うより、個人情報をその家主から高く買い取って使用してたそうだ。比良坂町は富裕層と貧困層の格差も激しいしな。金になるならって事なんじゃないか?」


「逃げられたって事か。ただ、水行川の門は開放したままになってる。また基地に侵入すれば」


「隼、分かってると思うけどこれ以上の無茶は俺はさせられない。リーダー命令と言っても良い。もう、格付けは済んだんだ。初嶺を相手出来なかったお前にあの場所で出来る事は何もない」


そのあと、山岸は目を泳がせ言い過ぎてしまったかと思ったが隼は逆に嬉しそうにフッと笑みを浮かべた。


「分かってますよ。ただ、町内で出来る事はさせてください。特に長らく進んでなかった行動範囲の拡大は最優先事項だ」


「まあね。うちは男世帯でメンバーも多いけどその分人魚にも狙われやすかった。颯や隼が偶然、陸奥の出身で運良く担当やってもらってるような物だし。宇須岸も北部の玄関口みたいな物だしね。道のりは遠いか」


山岸は何か思い詰めるように遠くを見つめている。

隼達に期待が寄せられているのは、北部の攻略だ。

担当場所である宇須岸は北部における橋頭堡と言っても差し支えないだろう。


しかし、隼達はそれで満足したとは思っていない。

むしろこれは通過点に過ぎず、大きな目標としてその先にある人が集まる中心街、大友(おおとも)に辿り着く事が自分達の使命であると考えているようだった。


「希輝達もいずれは小坂にと思って日々の業務をこなしてる。後輩が出来て、先輩に出来ない事は絶対に無いでしょ?特にこの組織には俺がいるんだから。やらないなんて言い訳は通じない。説教はもう良いですよね?俺も(くすぶ)っている訳にはいきませんから」


「あぁ、良いよ。行っておいで。そうだ、お母さんが隼の事を心配してたよ。差し入れ持って来たって言うから後で食べなさい」


そう言うと隼は首を傾げているようだ。


「それって、俺の本当の母さんですか?それとも比喩表現ですか?貴方が父さんっていうのは悪ふざけの一端だって分かりますけど」


「どっちもだよ。だからテーブルの上が差し入れだらけなの。そうだ、お兄ちゃんは今頃。宇須岸にいるんじゃないかな?仕事の引き継ぎ忘れないように」


そのあと、隼は颯の所に向かう為。宇須岸へと向かった。

到着すると、1人の老人と話しているのが見える。

隼は老人の事を良く知っている。

自分達が宇須岸に来る前から長年、一家で北部の運び屋を担当している人物だ。苗字は冬楡(ふゆにれ)と言っただろうか?


「そんで、隼は大丈夫か?もうすぐ戻って来られるんだろう?」


「あぁ、悪いな。北斗(ほくと)のじいちゃんに心配かけて。あっ、噂をすれば来やがった。おい、あんまりベテランの運び屋困らせんなよ」


そう言うと隼は太々しく上着のポケットに手を入れながら其方へと歩いてく。その様子に颯は呆れていた。


「良いじゃないですか。お久しぶりです、北斗さん。また、あの高台に連れて行ってください。俺の中では1番綺麗な夜景だから」


緊張感のない会話に北斗は思わず笑みを浮かべる。


「あぁ、あぁ。復帰祝いに連れて行ってあげるよ。可愛い孫が来てくれるみたいで、オラも嬉しいかんな。あのドラ息子と大違いだ」


その言葉に思い出したかのように颯はある物を手渡した。

壱区が書かれた比良坂町の地図のようだ。


「北斗のじいちゃん。その息子さん。武曲(むごく)さんの事なんだけど。ごめん、俺たちで探してみたけど無理だった。敷島家もそうだし、同じ会長候補だった五曜(ごよう)家に行ってもダメ。妃翠(ひすい)の行方すら分からず仕舞い。本当にどうなってんだ」


現在の会長が決まる前、敷島家以上に注目を集めた2人の運び屋がいた。

その名前は冬楡(ふゆにれ)武曲(むごく)五曜(ごよう)妃翠(ひすい)

どちらも夜間勤務であり、忍岡から宇須岸より先。

大友までを担当する運び屋だった。


御三家と並び、個人として高い運び屋技術とカリスマ性を持ち次期会長候補を言われ。実際に結果発表の当日まで熾烈な選挙活動を繰り広げていた。

担当場所が被る事も相まってお互い良いライバルのような関係だったという。


しかし、結果発表の当日。2人が協会に姿を現す事はなかった。1人ならまだしも2人揃ってだ。

こんな異常事態、今までなかった。

当時の会長は瑞稀の養父でもある、風間(かざま)逢磨(おうま)であり。

自身の年齢を考え、隠居を視野に入れており後継者を探していた矢先に起きた出来事でもあった。

逢磨は同じ御三家の敷島家に会長職を引き継ぎ、引退を決めた。


しかし、そのあと町中を探そうとも2人の姿は未だに発見されていない。

周囲からは結果が怖くなって直前になって敵前逃亡したなどと噂されているが颯や隼を含め。そのように思う者は少なくとも同業者の中にはいない。

数多のメンバーが揃った状況で再捜査を試みたが手がかりは得られなかった。


「こう言う事があるから尚更、大友に行きたいんだ。2人の担当場所でしょ?勿論、北斗さんもそうだけど。何か目撃情報が得られるかもしれないし。自分の目で見ておきたい」


その言葉に颯は目を見開いた。


「はぁ!?病み上がりが何言ってんだよ。範囲を広げるのがどれだけ大変が分かって言ってんのか?あれか、初嶺に負けて焦ってんのか。心配すんな。誰もお前の事なんか見てねぇよ」


颯なりに隼に無茶して欲しくないと気遣いの言葉を投げかけるが彼は思っている以上に自分を追い詰めてしまっているようだ。


「...そうですね。誰も俺の事なんか見てない。実際こうやって颯先輩が仕事を引き受けてくれてる。俺の代わりなんて幾らでもいる。でも、俺にしか出来ない事もあるわけで。颯先輩、貴方なら分かってくれると思ってたのに。だからここに来たのに」


最後の方は少し涙声になってる事に颯は気づき、これはやってしまったと隼を引き止めようとするが彼は直様その場を後にしてしまった。


「おい!隼!あぁ、もう。くそっ。北斗のじいちゃん、ごめん。隼を追いかけてくるわ。逃げ足は早いからな、アイツ。追いつくかどうか」


「まぁ、待ちなさい。隼は大友に行きたいんだろう?それで颯に助けを求めたんだ。1人で出来ない事は十分わかってるという事だろう。大丈夫、ちゃんと戻ってくるさ。その時に手を貸してやれば良い」


その言葉に颯は少し救われた気持ちになる。

年の功というか、年長者の知恵にいつも颯は助けられているように思う。


「まぁ、だと良いけどな」




《解説》

なんか、初嶺以上に元ネタが分かりずらいキャラが出て来ましたね。結論から言うと。


風間逢磨→「トワイライト・エクスプレス」

(名前は黄昏の類義語である逢魔が刻に由来します)


冬楡武曲→「北斗星」

(父親は現在も札幌ー函館間で運行されている特急北斗ですね。「北斗」「すずらん」「北斗星」は別名エルムと呼ばれていた過去があってエルム=楡の意味があります。名前は北斗七星の恒星の中にミザルという星があって、武曲はその中国名となっています)


五曜妃翠→「カシオペア」

(苗字はカシオペア座の漢字表記ですね。五曜星やそれが訛って九曜星とも呼ばれています。カシオペアが元ネタ的にエチオピアの王妃である事から「妃」を名前に取り入れています。名前的にも女性なのは確定ですね。正直、有名だし出したいけど漢字変換に困る列車No.1ですね)


ただ、名前もそうですし設定をちょろっと出すのは良いんですけど回収する事が出来るかどうかは未定です。

未来の作者に期待という事でぶん投げておきましょう。

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