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鉄壁の運び屋 壱ノ式 ー三原色と施錠の町ー【完全版】  作者: きつねうどん
第六章 囚われの姫君
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第参拾話 依頼人 ◆

「成る程、姫君を監禁した犯人が今度の晩餐会に出ると。確かに、花菱という男はいい噂を聞かないね。「女性が若作りをするのは分かるが男性が若作りをするのは理解出来ない」と言われる程、年齢に釣り合わない容姿をしているとね」


「Dr.黄泉から以前こんな話を聞いた事があるのです。人魚の肉を食べれば不老長寿になれるという噂がある。それを信じている人達がいると」


その話を聞いて、圭太がフグ刺しを食べる手を止めた。

実際に花菱が口にしていた物は、どちらかというと魚と言うより動物の肉に近い。

しかし、そんな物を口にした事がない圭太は魚の方で連想してしまったようだ。


「ちょっと姉貴、そんな事聞いたら僕食べられないんだけど」


更に光莉は青ざめた様子で口を開いた。

学校生活の中で今まで感じた事がなかった違和感が次第に積み重なり今回の騒動に発展したのだろう。

その違和感に気づけなかった自分達も勿論だが、周囲に対しても恐怖していた。

想像以上に今回の問題は根深いのだろう。


「ねぇ、もしかして。姫乃のお父さんって結構ヤバイ人?いや、娘を監禁してる時点で既に手遅れか」


光莉の言葉に瑞稀は手をテーブルの上で組みながら、首を傾げたあとこう言った。


「いや、そもそも実の親子関係かも怪しいんじゃないかな?彼の実年齢は60〜70代と言われている。それ以上に彼に配偶者はいない。パートナーを晩餐会に連れて来た事もなかったからね」


表では仲睦まじいそうに見える親子だが、実は血の繋がりすらなく姫乃を自分の都合の良い操り人形にしているという有り様だ。

しかも花菱は自分より年上の富裕層に姫乃を差し出そうとまで計画していた事になる。

完全に人脈作りの為、愛人として当てがうつもりだったのだろう。


「...私、何も姫乃さんの事知りませんでした。気丈に振る舞っている裏でこんな事になっているなんて。風間様、この件に協力して頂けるという事でよろしいですか?」


「勿論、緊急事態だからね。しかしだ、晩餐会に連れて行くにしても格という物がある。君達、2人がどれだけ麗しい令嬢だからと言って来客に身元不明な人物を行かせる訳にはいかない。そこでだ」


そのあと瑞稀は圭太に目配せした。話を振られた彼はキョトンとした顔をしている。まさか自分に役回りが来る事を予見していなかったのだろう。自分の事を指差しながらこう言った。


「僕?」


「私は舞台を見るのが好きでね。舞台女優や俳優の知り合いが多いんだ。実際に晩餐会にパートナーとして連れて行って彼らを富裕層に売り込む事も多い。そこでだ、歌舞伎界の新星を連れていって私がいつものように君を売り込む。どうかな?」


その意見に望海と光莉は妙案だと笑みを浮かべる。

それとは対照的に圭太は面倒くさそうな顔をしている。


「僕は別に自分を売り込まなくても客が寄ってくるからいいんだよ。何?僕に愛想を振りまけって言いたいの?」


「ははっ、あくまでもフリだよ。君だって演技は得意だろう?望海、私達が花菱を惹きつけている間に姫君の救出を頼めるかな?」


「ありがとうございます、風間様。後は私達の方で姫乃さんの救出方法を考えてみますね」


瑞稀との会話を終え、後日喫茶店にて作戦会議をした。


「姫乃さんがいるのは壱区です。明日の晩餐会の会場は参区、屋敷から連れ出した後、出来るなら物理的に親子の距離を離したい。児玉さん、何か良い案ありませんか?」


比良坂町の地図を広げ、それぞれの場所に小物を置いて目印にする。

その小物達は完全に山岸達から掻っ払ってきた置き物達だった。


「地図を見た感じ壱区の北部、宇須岸(うすけし)まで行ければ良いがまず俺たちには無理だ。他の運び屋に任せるのが良いだろうな」


「そうだね。でも北部に行けるのって、隼ぐらいしか思いつかないんだけど。他に誰かいたっけ?」


「...あっ」


そのあと、望海は慌てて黒電話を手に取る。

連絡先は協会だった。



「ダメっすよ!小町ちゃん!隼が困ってるじゃないっすか!」


「嫌なの!小町と隼は一心同体!絶対に譲らないの!」


「いや、俺。単体仕事あるし困るんだけど」


現在の場所は壱区の氷川、今日も翼達は隼から小町を引き離そうと躍起になっていた。


「ゲホッ、ゴホッ。おい隼!この颯様を差し置いて壱区のエースを名乗るなんて良い度胸じゃねぇか!」


「山岸先輩、颯先輩倒れそうなんで運んであげて下さい」


「はいはい、病弱な颯君は寿彦お兄さんと一緒に帰ろうね」


山岸は颯を俵担ぎをし、本拠地に戻ろうとする。

それと入れ違うように那須野が慌てて出て来た。


「隼、無線001に切り替えろ。依頼だ、しかもあの方から」


「001?珍しいコードだな。誰だ?」


隼が無線機に耳傾けると、共に北部に行った事のある運び屋に繋がった。


「隼さん、聞こえる?私です、敷島節子。貴方に護衛を頼みたいの、頼めるかしら?」


「了解、仕事が早いのが俺の自慢だから。直ぐに向かう。場所はどこ?」


「それが貴方の担当外なの。私と望海さん達で協会まで依頼主を連れて行きます。そのあと、私と貴方で北部まで移動したいの出来るかしら?明日、決行予定だから打ち合わせも兼ねて協会へ来てもらいたいの」


「訳あり臭いな、作詞作曲より困難ならお断りだけど」


「あら、それと同じぐらいやりがいがある仕事だと思うわ」


そのあと、隼は無線を切った。


「隼、小町一緒に行く!」


「小町は無理だよ。北部まで行けないだろう?那須野先輩、皆を頼むね。悪さしない様に見張ってて」


「おうよ!なに、山岸もいるんだ。餓鬼の扱いは任せろ」


「じゃあ、行ってくる」


そのあと隼は素早く協会へと向かった。


「...成る程。黄色い血の正体は人魚。それでその末裔がいると。颯先輩が居てくれて良かった。あの人から事前に色々と話は聞いてたし、分かった。保護対象がいるなら。俺も協力する」


会長室で節子から話を受けた隼は、今回積極的に協力してくれるようだ。これには節子も胸を撫で下ろす。

正直、全体での連携が取れているとは到底思えない。

少しでもこれからの事態に備え、少しずつでも協力者を募るのが得策だろうと節子は思っていた。


「ありがとう、隼さん。貴方のご協力に感謝します。実は姫乃さんと同じ境遇の方とこの前お話しした事があって。その方は北部の出版社で働いているそうなの。まずはそこに向かいたいわ」


そんな感じで打ち合わせも無事に終わり、会長室から立ち去る事にした隼だったが足取りが重たい。これからの事を色々と考えているのだろう。


「ダメだな。1人で考え込むのは俺の悪い癖だ。こんな時こそ、仲間に相談しないと」


そんな時だった、隼はとある男性に話しかけられる。

水色のジャンパーに黄色のネックウォーマーが印象的だ。


「そこの兄ちゃんさ、運び屋?ちょっとさ、道案内頼みたいんだけど」


「まぁ、教えるぐらいなら。でも運んだりは出来ませんよ。俺、完全予約制なので。当日枠とか設けてないんで」


「えっ、困ったな。緑の服の人達が此処から北は担当してるって聞いたんだけど。今日中に千体まで行きたいんだよな。どうにかならないかな?」


そう言われ、隼は無線である人を呼んだ。そう、同じく千体を担当し当日枠も設けている山岸だ。


「突然隼君から連絡が来るからお父さんビックリしちゃったよ。どうしたの?俺とデートする?」


「違いますよ。連絡した通り、この方を千体まで連れて行ってください。俺は次の仕事がありますんで失礼します」


その場から隼は立ち去り、山岸は男性にある用紙とバインダー、ペンを渡す。これにサインしろという事だろう。


「俺達運び屋は守秘義務がありますけど、売り上げとか成果とかは協会に報告する義務があるんです。だから、依頼を受けた証拠が欲しくて、名前の欄は匿名でも構いません。でも、お兄さんナイスガイだからな。折角なら名前聞いておきたいな。現在地と行き先の記入もお願いします」


「へぇ、此処にサインすればいいのか。運び屋も大変だな。千体は夜危ないって話を聞いてさ。男1人だと何かと心細いしな。守ってくれる存在がいるっていうにはありがたいね」


男性はサインをした物を山岸に渡す、そのあと記入漏れがないかどうか確認しているようだ。


「はい、久堂(くどう)雪道(ゆきみち)様ですね。でも、可笑しいな。こんなに良い男なら俺が見逃す筈ないんだけどな。結構家探ししたつもりなんだけど」


そのあと、久堂と呼ばれた男は山岸からジッと顔を見られている。

当たり前だが、顔を引き攣らせているようだ。


「まぁ、住んでる所は此処から離れてるしな。アンタが知らないのも可笑しな話じゃないだろ」


そういうと山岸はいつもの軽快な様子に戻った。


「そっか!これはどうも失礼致しました。じゃあ、行きましょうか?千体に」


しかしこの出来事が、姫乃の監禁以上に更なる悲劇をもたらすことになるなど、この時の隼も山岸も思ってはいなかった。

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