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鉄壁の運び屋 壱ノ式 ー三原色と施錠の町ー【完全版】  作者: きつねうどん
第五章 更なる転機
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第弐拾参話 手がかり ◎


「圭太!勝手に入りますよ!」


望海は慌てて自宅に戻り、圭太の部屋の襖を開けた。

そんな様子に反するように彼は落ち着いている。

舞台の台本を読んでいるようだった。


「姉貴、この前自分の部屋に入るなって言ったよね?年頃の男の子の部屋に入るのは合法なの?そういうのは良くないよ、平等じゃないと」


圭太の言葉に相変わらず望海は皮肉上手というか二枚舌だなと思った。

その為か幼い頃から彼と喧嘩をしたり、物を奪い合った記憶がない。

それは仲がいいとかではなく純粋に口喧嘩では弟に負けると望海は幼いながらに思っていたからだ。


「それは先にお詫びしますが、緊急事態です。協会に一緒に来てください」


「教会?姉貴も大胆だね。でも、姉貴はドレスより白無垢の方が似合うと思うけどな」


「冗談言ってる場合ですか!節子さんが貴方に聞きたい事があるそうなんです。ほら、行きますよ」


しかし、当の彼はキョトンとした顔をしている。別に冗談でもないんだけどなと圭太は思っていた。相当のシスコンのようだ。

彼は望海に引っ張られ、協会へと向かった。


「うそ、あの東圭太!本物!?」


協会の応接室で圭太と対面した葵は驚愕の表情を浮かべている。

実は圭太は比良坂町の中では町長に次ぐ有名人なのだ。

流行もあるだろうが、海外公演終わりという事もあり地元新聞でも取り上げられている。

しかし、チケットの倍率も凄まじく。中々舞台に見に行けないというファンも多い。

実際に朱鷺田や姫乃も親のコネなど使い物にならない程、高い倍率の抽選に勝ち抜き一般人と同じチャンスの中で舞台を見に行っている。


「圭太さん、今日は貴方に確認したい事があって来てもらったの。貴方が異国に行った時の事を教えて頂けるかしら?特に音無拳悟という男性について知りたいの」


「...音無?あぁ、僕のストーカーをしてた人か。まぁ、でもその人だけじゃないけどね。護衛とか言って移動も制限されてたし、結構大変だったよ」


実際に圭太はリチャードとフランシスに公演後、声をかけられその日の夜にホテルを抜け出し向こうの協会で言う所のギルドに足を運んだ。

そのあと、ある人物を紹介され圭太は親友と呼べるような存在と出会う。


「そんな中で運び屋の仕事をしてたんですか?その音無さんは圭太の護衛をしていた軍の方なのですよね?私は外の事に疎いのですが、異国に行く際は軍を仲介役にする必要があるのですか?」


「僕が異国に行く時、目隠しされて連れて行かれたのが秋津基地だったんだ。地下の大きな門、軍の人はゲートって言ってた。そこを潜ると異国の地にいたんだ。帰国の時も同じ。帰りは目隠ししなかったらから基地の場所は分かるよ車で30分って所にあると思う」


そう、圭太が居た謎の場所は秋津基地と呼ばれる場所だった。

舞台のプレッシャーにも動じず、日頃から動揺しない彼ですら不気味に思う場所なのだ。

それを考えるとその場に居た音無の存在も怪しく映る。

軍の護衛と行っていたが、何か細かい部署や振り分けがあるのだろうか?もしかしたら、相当大きい組織なのかもしれない。


「えっ!?」


その文句に望海は慌てて圭太が無事であるかを確認するように顔を触る。その様子に圭太は少し嬉しそうな表情をしていた。

そのあと、望海は彼の真意がわかったのか圭太を睨みつけながら手を離した。

危険な状況に遭遇しておいて、よくそんな顔が出来るなと思ったのだろう。


「申し訳ないけど、音無って人の素性は僕にも分からないかな。僕の護衛と通訳の担当者ってだけでそれ以上何か教えてもらった訳でもないし」


「...そうよね。ありがとう、圭太さん」


そのあと節子は何かを考えながらグルグルと歩き回っている。

その様子を見て葵はバツの悪そうな顔をした。


「申し訳ありません。私が色々と話を進めたせいで皆さんを混乱させてしまって」


「いいのよ、だって秋津基地にいる軍人の方々が元々比良坂町の人間かもしれないという事でしょう?しかも、100年以上前に生まれた人達が今でも生きてる。少し時間がかかるかもしれないけど私達なりに調べてみるわね。でも、その前に解決しなければならない事があるのも事実」


「ねぇ、葵さん。僕たちは人魚達と対立したい訳じゃない。むしろ保護したいと考えているんだ。君が人魚の末裔だと言うのなら何か彼女達に関する手がかりを持ってないかな?基地の問題はそれからでも遅くないと思うけど」


姫乃という身近に人魚の血縁者がいる事も相まって、できる事なら協力関係になりたいと願っている。

しかし、そんなが方法あるのだろうか?


「私からもお願いします。運び屋達も人員が十分とは言えません。戦闘を望まない方々が多いんです。彼女達と交渉して何処かに退ける事が出来るのならそれが一番なんです」


その言葉を受け止めながらも、葵は悲しい顔をする。

そのあと、自分の上着を捲り腕を見せた。

そこには大きな引っ掻き傷のような跡が出来ている。


「人魚達は人間の言葉や心理を理解出来ません。だからこそ、魔物と言われているんです。私も何度も彼女達と会話を試みようしましたがこの様です。今まで理解出来なかった物を理解するのはとても大変な事です。150年に渡る亀裂がそう簡単に塞がると私は思えません」


「人魚との対立は避けられない。そう言いたいの?」


「...少なくとも今の段階では」


人魚という存在は、敵対する運び屋でも未だに生態を掴めていない。

分かっているのは麗しい見た目を持ち人間の男性に恋をし、親しい人の声を真似て、水路に引き摺り込もうとすると言う事だろうか?

いずれにせよ、戦闘以外での彼女達の鎮圧は難しいだろう。

室内は陰鬱な雰囲気に苛まれていた。

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