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異世界創っちゃいました  作者: e-log
第一部 原典(ユキ編)
9/50

2-4【サンハリーの領主】

ーーーサンハリー領、ユキの拠点


「エアアロー」

「20のトリプル」

「エアアロー」

「ブル、50点だよ」


 陽が傾きつつある時間帯、ユキは弓の練習を、ユウカはその手伝いをしていた。いや、土魔法でダーツボードを作って遊んでいた。


「ユーキ、私も遊びたい」

「ユウカねぇ、これやっちゃうと弓スキルついちゃうかもしれないよ。ユウカねぇはもう格闘スキル持ってるんだから、そっちを伸ばした方が絶対いいって」

「エアアロォ」


 ユウカは自らの魔力で風の槍を産み出しらそれを全力でダーツボードに投げ込んだ。


「馬鹿、やめろって、力加減出来ないんだろ」


 風の槍はブルに命中するが、あまりの威力にダーツボードを貫通し、その穴を中心にひび割れる。


「よっし、一万点」


 ユキは魔力制御の練習のため、ダーツボードの硬度を抑えて作っている。風の矢の威力が足りなければ刺さらない、威力が高すぎると貫通する。これはその間の出力を常に維持する練習でもあった。


「はぁ、もう大分日も落ちてきたし街に戻ろうか。それと、ジンさんに弓を返さなくちゃいけないし」

「はいはーい、夕ご飯は」

「今日は知り合いにお願いしてるんだ」


 ユキは午前中にリーナと約束した取り決めを思い出す。


(①契約中はレグさんの納屋に住むこと、②夕食は一緒に食べること、③身なりは常に清潔を心がけること、④人手が必要な時は畑仕事等を手伝うこと、⑤つまらないことで遠慮しないこと)

「あなたは私の母親ですか」

「どうしたの、ユーキ」

「いや、なんでもない。すぐわかる」


 散乱しているダーツボードの破片を土に還しながら、ユキは苦笑いを浮かべる。


「おーい、坊ちゃん、嬢ちゃん」

「あっ、ジンさんだ」

「よかった弓を返しに行く手間が省け、、、」


 ユキの脳内にデジャヴに似た何かが通り過ぎた。ジンの様子からしても、なにやら急いでいるように見えてならない。


「お前さんに仕事だよ、昨日以上に相当急ぎの大仕事だ」


(あー、そう言うことですか)


ーーーサンハリー領、サンハリー邸


「ジンさん、仕事って、もしかして」

「あぁ、領主様からの案件だ」


 ユキはジンに連れられるがままにここまで足を運んだが、徐々に緊張から全身が震え出し、変な汗が出てくる。


「心配するな。俺が聞いたところ、お嬢様の症状はリーナと同様の物。なんで、お嬢様に同じ症状が出ているのかはわからないが、坊ちゃんなら治せるだろ」


 ユウカは屋敷の前までは楽しそうに着いてはきたが、この後の展開は火を見るよりも明らかなものだったこともあり、屋敷の前で待機すると言って聞かなかった。


「お待たせしてすまない、私がサンハリーだ」


 応接室の扉が開き、そこからは綺麗な銀髪を携えた初老の男性が現れユキ達の対面にすわる。


「ジン、いつも世話になっている。そちらの彼が先に言っていた、異国の商人と。確かに、その髪色はこの辺りでは見かけないが」

(異国の商人って、ジンさん日本って言ってないよね。いや、別国の名前を挙げるにしても、話に食い違いが生じ時点でそれ以降信頼してもらえなくなる、ここは正直に話した方がいいか)

「はい、こちらがユキでございます。まだ若輩ではありますが、先日お嬢様と同様のものと思える病を治療したのをこの目で確認しております。もしもの際は私の方で責任はお取りします、どうか」

(重い、重いって、ジンさん)

「サンハリー伯爵、お初にお目にかかります、日本という国から参りました、性はサトウ、名はユキと申します」

「ほぅ、ニホンという国ですか、確かに聞かない国の名ですね。異国の知識、期待しています」

「サンハリー伯爵、お嬢様の容態はいかがでしょうか。処置に移るにしても早い方が良いのでは」

「そうだな。サトウ殿、詳しい話は歩きながらで構わないだろうか」


 サンハリー伯爵の従者に促されるように、ユキとジンは談話室から移動する。


「して、サトウ殿。容態を確認していただく前で申し訳ないが、娘にはどのような処置を行うよう考えておられますか」

「はい、魔力を通す針を用いて、お嬢様の血管に直接私の魔力を供給させていただき、後は血の巡りと共に全身を治癒する運びとなっております」

「回復魔法と言うものですか。最近の話ですが、王都の方にサトウ殿と髪色を同じとする聖女様が現れたと聞きまして、サトウ殿も同様の力をお使いになられるのですか」

(まあ、他の転移者だよな。あのゲームのプレイヤー数で言うと、最大で一万人の日本人が転移している可能性がある。一人や二人、早期に目立つ人がいて当然だろう)

「実際に確認したわけではありませんので、その質問に関してはお答えしかねます」

「そうですね、いくら他と比べて近いと言っても、王都からここまで馬車で3日はかかってしまいます。確かに現地での確認は無理そうですね」


 サンハリー伯爵は胸元から新聞の切り抜きを取り出しひとしきり眺めた後に胸元にしまう。その新聞には2日前の日付で『黒髪の聖女現る』と大見出しに書いてあった。


(多分、この転移者も王都では色々と大変な目に会ってるんだろうな。おいたわしや)

「サトウ殿、こちらが娘の寝室になります。どうか、娘のことをよろしくお願いいたします」

「最善を尽くさせていただきます」


 お嬢様の容態はリーナよりも部分的に良く、部分的にはとてつもなく悪かった。


(右手以外は軽傷といった感じだが、右手だけ結晶化の度合いが酷すぎる。何に触れればここまで偏った汚染状況になるのか)


 ユキはリーナにやったように、針の刺しやすい左手首から魔法針を差し込んで、お嬢様に魔力を注ぎ込む。


(よし、右手以外の結晶化具合は収まってきた。ただ、右手の治療は僕の魔力だけで足りるか)


 ユキは魔力の供給を抑え一息入れる。冷静にお嬢様の容態を見渡すと、右掌になにやら薄茶色のもやがかかっていることに気づく。


(土魔素が見えてるのか。リーナさんと比べ汚染具合が酷いから、可視化できているのか)


 それならと、ユキはお嬢様の右掌に針を刺し変えて汚染箇所に直接魔力を注ぎ込むこととした。


(流石に向こうも干渉してくるか)


 風の魔法針の下部が若干の土色に変わる。下手をしたら針が太くなり針の刺し口が広り傷が残ってしまうかもしれない。


(全力で、押し切る)


 ユキは全力で魔力を注ぎ込む。患部に直接魔力を注ぎ込んでいるため、左手首からの供給ととは変わって、治療速度は大分早くなっているよう感じた。


(昼間に魔力使いすぎて一回倒れたたっけ。あー、これはもうひと倒れするかもしれないな)


 ユキは魔力を流す毎に、その顔は血の気が引いたように青白く変わっていく。それでも、歯を食いしばり、鼓動を高めて、彼はお嬢様の治療にあたる。


(魔法使いのイメージって、不健康そうで顔も青白いとかよくあるけど、魔法を使いすぎるとこの世界でもそんな感じになるのか)


 ユキの意識が一瞬落ちる。確かにユキの魔力は底をついていた。


(ユウカねぇ、また介抱お願いします)


 安らかな眠りにつこうとしたユキだったが、あまりの指先の熱さに反射的に目を見開く。


「えっ、魔力がまだ続いてる」


 ユキは直感で理解した。この魔力は自分の物ではなく確かにユウカのものだと。


(っと、出力高すぎるんだよ)


 ユキのコントロール重視といった感じの魔力の質と違って、ユウカの魔力はパワー重視だ。荒ぶるその力を細い針の中に留めるだけで彼には精一杯だった。


(よし、もう少しで完全に押し切れるか)


 右肩まで結晶化していたお嬢様の身体は、今や右手の指半ばまで風化できている。


(あと少し、あとちょっと)


「おい、ユキ、大丈夫か」

「へへっ、治療完了しましたよ」


 お嬢様の様子を確認するまでの余裕がなかったユキは、土魔素の抵抗が無くなったことを確認し次第、患部から針を抜き、その勢いのまま後方へと倒れ込む。


「おとぉさん」

「アンジェ、アンジェ、無事なのかい」

(お嬢様も無事に意識が戻ったみたいだな)

「おい、ユキ、しっかりしろ」


 治療を無事に終えたことを確認したユキは、まるで糸が切れたかのように、その場でゆっくりと眠りにつく。

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