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異世界創っちゃいました  作者: e-log
第一部 原典(ユキ編)
5/50

1-4【異世界医療】

ーーーサンハリー領、街外れの民家


「ジンさん、リーナはどうにかなりますか」

「今先生に見てもらってる所だ、少し待ってろ」

「先生って、彼はまだ子供じゃないですか」

「安心しろ、先生にはちゃんとした学がある。そもそも、医者に行っても駄目だったんだろ。少しでも可能性があるなら、って話だったじゃねぇか、今更子供だからとか言ってんじゃねぇよ」


 ユキはジンに大仕事と連れられ、街から少し外れた位置にある民家へと足を運んでいた。


「呪いなんだよ。災いを避けるために農家は農家同志結婚しろって昔から言われている。俺が駆け落ちなんて考えたのが、それでリーナは、、、」

「馬鹿野郎、お前が弱気になってどうするんだよ」


 心配する気持ちが振り切れ、泣き出しそうなリーナの旦那さんを嗜めるジン。二人の視線を一手に集めているユキはと言うと。


(回復薬、回復魔法、医学、解呪)


 リーナの容態を確認する素振りを見せながら、頭の中ではひたすらに教典を流し読みしていた。


(患者の四肢の末端から石化していく病気なんて、流石の転移者でも、いきなり無理ゲーすぎるますって)


 前に神様に聞いていたとおり、教典の範囲で手に入る回復薬、回復魔法に対する知識は応急処置程度の物しか存在しない。


(大規模な治療行為となると黒魔術寄りと神様が言っていたな。黒魔術か、、、触れるのは少しどころじゃない抵抗があるな)


「どうだ、坊ちゃん。なんとかなりそうか」

(すみません、今のところ手がかりありません、とは言えない。でも、流石に何かしらのリアクションは取らないと、、、)

「呪いですか、、、情報は少しでも多い方がいいですし、一回詳細を聞かせて貰えませんか」


 そう話ながらも脳内で教典をめくる手は止められない。


「農家は農家どうしで結婚しないといけない、そうしないとその夫婦には災いが降りかかると言われているのさ。さっきも言ったがそれ以上の話はねぇよ」

「農家は農家どうしですか。リーナさんは違うんですか」

「あぁ、リーナは商人の家の出自で、俺が野菜を売り込んだ時においしい、おいしい、と褒めてくれてな。その時の、、、」

「すみません、お話はもう大丈夫です」

(話し手が涙ぐみながらも聞く話ではない、できることなら彼女が回復した後に笑顔の彼から聞きたいものです)

「ジンさん。リーナさんは元々商人だったみたいですし、商人の間で同じような病気の話を聞いたことありますか。伝承とか、ジンクスとかなんでもいいのでお願いします」

「流石に聞いたことはねぇな、知ってたらすでに教えてるしよ。ただ、、、なんでもって言うなら」

「はい、なんでもお願いします」

「商人は他の職業と違って沢山歩く、そんな生活を何年も続けていたら足の裏の皮が硬くなってな、それはもう石みたいに、、、なんかすまん」


 ジンは話し終わってから少し苦い顔をする。


「大丈夫ですよ。それで、そんな症状が出た時の治療法とか、対処ってどうされるんですか」

「足の裏を地面から離して風を当てるだとか、水の入った桶に足を突っ込んで冷やすだとか。後は酒だな、エールはどんな病にも効く、これは商人の鉄則だ」

(なるほど、原因と思われる事象に対する治療法も間違ってはいない、エールの話なんてさらに的確な解法だ。流石は先人の知恵と言ったところなのか)

「そういえば、この街に越してきてから、リーナのやつ手足の皮膚が硬くなって、破れた時は水作業が辛いからとよく塗り薬を使っていたな」

(ジンさんから聞いた症状が初期に現れていたとなると、流石にこの二件を無関係とは言えなってきた)

「その塗り薬について教えていただきますか」

「農家でよく使われている、普通のネリイモの軟膏だよ」


 ユキの頭の中で何かが弾ける音がした。


「旦那さん、確認です。これまでなら間、リーナさんには畑仕事を手伝ってもらってるんですよね?」

「あぁ、そうだが」

「おっ、坊ちゃん。なんかわかったんだな」

(農家の人間は土を主に扱う関係上、血統的に外属性は土。商人は同じ他への定住を嫌う、つまり土を嫌っている、血統的に内属性が土なのではないだろうか)


 外属性が土の生物は自身で扱う事の出来る土魔素の75%を外部から正常に蓄わえることができる。その土魔素は通常時の25%に戻そうと、適正のない場合より急速に代謝を行う。


 逆に内属性が土の生物は自身の扱う事の出来る土魔素の25%しか外部から正常に蓄わえることができない。その土魔素の通常時は75%なため、代謝の速度は非常に遅いと言える。


(正常に蓄わえられる量を超えた土魔素は、より多く土に接する箇所から汚染されていき、軽微な症状として皮膚の硬化、重度の症状として皮膚の結晶化が行われたということだろうか)

「原因が分かりました。多分治療も出来ます」

「それは本当か」

「真っ当な人間ならここで嘘はつけませんよ」

「おぅ、流石はは坊ちゃんだぜ」

「治療のため、リーナさんの身体に針穴を開けさせていただきます。目立たない箇所にしますので、お許しいただけますか?」

「あぁ、わかったら。早く頼む」


 身体の魔素汚染を取り除く方法、それはその属性と対になる属性を対象者に付与することであり、さきほどジンが言っていた対処法の多くは効果的だ。エール、いや発泡酒の関係は魔法的な側面において風魔素を含んでいる酒である。


「エアスピア」

(この世界における魔素はアルコールとそう変わらない、今のリーナさんは大量の土魔素が体内で処理できない状況で、重度な昏倒状態だろう。常に死のリスクが背中合わせの段階で歯を食いしばっているんだ、早く助けてあげないと)


 ユキは画鋲の針程度のエアスピアを発動させ、即座に安定させ色を大気と同化させる。この状態の風の針は魔法としての効力を持たず、普通の針と同様に扱う事ができる。少しでも魔法が残ってしまうと傷口が広がり目立たない傷で済まない可能性もある。医療目的での使用には注意しなければならない。


(ゆっくり。おっ、いけそう)


 ユキは風の針をリーナの身体に刺し込む。しっかり血管に刺し込めたようで、少量の血が肌を伝ってシーツを汚す。


「エア」


 風の針を通してユキの体内の風魔素をリーナに送り込む。その風魔素はリーナの血管を伝って全身に行き渡る。魔素で作った針に再び魔力を流すことが可能なのは確認出来ていた。


(本当に魔力操作の練習をしておいてよかったよ)


 次第にリーナの結晶化した皮膚は少しずつ風化していき、目に見えるレベルで治療の効果を確認できた。


「よし、これなら完治もそう遠くはないですよ」

「おぉ、リーナは良くなるんだな」

「只者ではないと思っていたが、坊ちゃんの引き出しの多さ、色々と知る機会の多い旅商人の俺でもここまでなんでもはできねぇぞ」


 それからユキは、風魔素を十数分の間連続してリーナに送り込み続けた。そんな環境において集中を切らすことが無かったのは、ひとえに魔力操作の練習の賜物だろう。


「あ、な、た」

「リーナ、リーナ。無事なのか?」

「えぇ、あなた」

「よかった、本当によかった」

「おいおい、そんなみっともなく泣くなよ」

「今、泣かないで、いつ泣くんだよぉ」


 彼はその場で泣き崩れた。その姿は、男泣きと言えない程度にはみっともなく、ユキとジンはその姿に安堵した。


「リーナさん、これは貴女の病気の症状を抑える塗り薬です。旦那さんがこんな感じなので、貴女に渡しておきますね」


 ユキは大鞄から薬壷を取り出し、リーナに渡す。


「お医者様ですか、今回は治療いただきありがとうございます」

「いえいえ、本日はもうお休みになってください、病気に関しての説明はまた明日にでもお尋ねしますのでその時に」


 ユキが今回の件であれこれと考えている間に、辺りは陽が傾き始める時間となっていた。


「おう、もうこんな時間か。よし坊ちゃん、この後暇か、急な仕事を振って悪かったから飯くらいご馳走させてくれよ」

「ジンさん、僕、年齢の問題でお酒は駄目ですからね」


 ユキの異世界生活2日目はより充実した時間となったのだった。

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