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異世界創っちゃいました  作者: e-log
第一部 原典(ユキ編)
4/50

1-3【魔法のある生活】

ーーーサンハリー領、ユキの拠点


 初商談が成立してから、ユキは300マルクを片手に、とりあえずは昼食だ、と買い出しの後、昨日の野営地へ帰還する。


「ご機嫌なお昼ご飯さ」


 ユキは料理ができない。いや、料理が出来ないからこそ異世界かつ現状での料理には一定の才があった。


「ウインドカッター」


 街で買ったバゲットと干し肉に、カラフルなキノコ、そして昨日偶然見つけたアブラナシというアボカドのような食材を風の刃で手頃な大きさに切り分ける。


「ファイア」


 そう唱えると、ユキが囲炉裏に翳した手から炎が煌めき、その種火はアブラナシの切れ端を伝ってみるみるうちに燃え広がる。


「ウインドネット」


 風魔法で空気の網を作成し、ユキはバゲットを囲炉裏の直上の見えない網に乗せ、そのバゲットの上にキノコとアブラナシを加え直火で焼き上げる。


「イメージ次第でなんでもできる、この世界の魔法は便利だな」


 ユキが今行っている行為自体は料理なのだが、彼は料理ができないが故に、料理という行動に対する思い入れが無い。空腹を満たすための食事ではあるが、彼にとってその工程は魔法をいかに上手く扱えるかという一種の娯楽なのだ。


「楽だし、食器も洗わなくていいし、最高」


 ユキは風の網を囲炉裏から移動させ、風魔法内の空気を換気する。これで、先ほどまで直火で熱された網は現在の大気温まで温度を落とす事ができる。


「ウインド」


 バゲットの熱を風魔法で飛ばし、一思いに食らいつく。昨日までは無かったバゲットの食感にユキは自然と笑みが溢れる。彼は異世界で食事をする上でのEXスキルを転移前から持っていた。


「異世界サイコー」


 EXスキル『馬鹿舌』である。


 ユキの元いた世界の料理と比べれば、異世界の料理、食材のレベルは明らかに低い。料理の味よりも魔法を使う過程に満足し、美味であろうが、珍味であろうが、壊滅的な味であろうが、問答無用で美味いと思えてしまうのは才能以外の何者でもない。


「干し肉美味しい、やっぱりお肉は食べないとね」


 味がわからないから、食感を大切に。食べれるレベルの硬さなら、肉は硬ければ硬い程いい。ゴムのような弾力の干し肉は、ユキの理念に則った最高の食材であった。


「あの肉屋のお兄さん、できますね」


 ユキは干し肉を買う際に一番硬い肉と注文し、肉屋の店主は申し訳なさそうにこの干し肉を格安で売り渡した。つはり、これはそういう肉なのだ。


(こんな所に人なんて珍しい、同郷かな)


 ユキが拠点を構えている丘から見える範囲に、若そうな男二人組が武器を片手に歩いている。


(木のショートソードに、木のメイスか)


 二人組はこの周辺に多く生息している茶色のスライムを見つけては武器で叩き倒している。


(あー、あれは、同郷だな)


 この世界におけるスライムは、環境維持のための生物で転移前の世界でのイメージとは大きく異なる。


(あれはあれで、いい循環だし放置でいいな)


 この世界には火、水、風、土の4種類の魔素が存在しており、それぞれの魔素は環境条件に合わせてその土地を汚染していく。スライムの核はその魔素を地中から汲み上げる事でぷよぷよとした身体を産み出す、核は木の武器程度では破壊できないため、二人組もぷよぷよ部分が消えるまで攻撃し、次のスライムへと向かっている。


(感覚としては分からないけど、教典の内容から察するにこの辺りのスライムは大量発生気味だった。それを潰し回ってくれるならそれはそれでありがたい)


 スライムという生物は、核が土地から魔素を汲み上げる、スライムに一定量溜まった魔素を消費して核が分裂する、幾らかのスライム核が合体して貯蓄できる魔素量が増加した強スライム核が出来上がる、となっている。スライムが全く居なくなると土地が高濃度の魔素に汚染され、逆にスライムが増えすぎると土地の魔素が汲み上げられすぎて他生物に影響を及ぼしかねない。それは当然人族も例外ではない。


(この世界のために頑張ってくれ、勇者達よ)


 ユキは食事を終え、スライムを狩っていた二人組が通りすぎるのを待ち、腹ごなしと魔法の練習を始めた。


「アースウォール」


 ユキの視線の先の地面から土の板が突き出す。


「エアカッター」


 風の刃が土の板を切り裂く。この世界の魔法に決まった詠唱は存在しない、ウインドカッターでもエアカッターでも同一のイメージさえ整っていれば同じ結果となる。


「エアソード」


 次はユキの手に風を刃状に纏わせ、手刀の要領で土の板を切り裂く。どことなく、先ほどの飛ばすタイプの斬撃と比べて、威力が上がっているように感じる。


「やっぱり、内属性『風』の外属性『土』か」


 魔法の素質の有無に関係なく、この世界の全ての生物は4属性の魔法適正に偏りを持って産まれてくる。


「接近戦は風魔法、遠隔戦は土魔法か」


 その生物が瞬時に扱える魔素量を100%として、生物が体内から発生させる魔素量は50%程度となっている。しかし、産まれもっての偏りにより、各々特定の属性の発生魔素量が75%、その反対属性の発生魔素量が25%となる。この際の体内から75%の魔素を発生できる属性を『内属性』、25%の魔素しか発生できない属性を『外属性』と呼ぶ。


「土魔法で遠隔戦か、、、」


 外属性は魔素を25%しか扱えないから適正のない属性という考えでもなく。瞬時に扱える魔素量は100%となるため、75%の体外の魔素に干渉する事が可能となる。つまるところ、内属性は体内に75%の出力で干渉し、外属性は体外に75%の出力で干渉する事ができ、用途は限られるがどちらとも適正のある属性というのは変わりない。


「土の壁を立てて敵の攻撃を止めたり、沼をつくって敵の足を止めたり、砂塵を起こして敵の視界を妨げたり、どちらかと言えばサポート向きだよな」


 ユキは現状味方がいない、サポートといっても相手がいない。そもそも、魔物もモンスターもいない世界だ、戦闘自体そうそう起こることではないだろう。


「風魔法で接近戦、、、エアソード」

(詠唱時間を考えると、ウインドじゃなくてエアだな)


 ダガー、ショートソード、ロングソードとユキは剣の形をグネグネと変えながら物思いに耽る。


(元になるのが手刀だからな。振り下ろす、薙ぎ払う動作がやりやすいのは当たり前か。槍や斧は柄の部分を省いた場合に恐ろしくリーチが足りないな)

「ロングソード以上の間合いで柄が無い武器、うーん、鞭ぐらいしか思いつかないな」


 ユキが考え込む度に発動中のエアソードに供給される風魔素が少なくなり、次第に大気に溶け込むよう消えていった。


「ん? 魔法が解けたのか。これは大変だな、戦闘中にうっかり考え込む事も出来ないのか」


 ユキは手を下ろそうとするが、コツンと音を立てて一定の高さまでしか下ろせない。どことなく見えない壁に突っかかっているといった感じだ。


(これは、もしかして)


 ユキは思いっきり手を振り下ろしたら、何かが砕ける音と同時に手への拘束が無くなった。


「風魔法の、見えない、刃」


 どうやらエアソードの色は大気と同化し、先ほどまで魔法の的としていた板に接触したために手を下ろせなかったことがわかる。


「でも、大分威力は落ちるのか」

(土の板と言っても、形を保つよう石程度の硬さを持たせている。刃物が負けるのも納得できる結果と言えるかな)

「これは、検討の余地が十二分ある」


 指の先に風の小さな針を作っては透明化させ、その具合を自身をツツキ確認をする。ひとつの魔力操作の練習体系が完成した。


「これなら、教典を読みながら片手間でできるな」


 ツンツン、ツンツンとユキは針に魔力を注いでは抜き、注いでは抜きと、魔力制御の練習に没頭した。魔力の行き来は精神的な負担が大きいみたいで、どことなく夢うつつな雰囲気に彼の意識は次第に沈み込みそうになる。


「おーい、ユキのじょ、、、ぼっちゃん」


 その声を聞きユキは正気に戻る。手を振りながら近づいてくる人物を彼は知っている。そういうよりは、彼の知り合いもそうだが、彼のことを嬢ちゃんと呼び間違えそうになる人は1人しかいない。


「プライベートな空間にまで押し掛けてこないでくださいよ。それでどうしたんですか、ジンさん」

「お前さんに仕事だよ、それも相当急ぎの大仕事だ」

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