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異世界創っちゃいました  作者: e-log
第一部 原典(ユキ編)
17/50

4-4【ドラゴン?】

ーーーサンハリー領、街外れの洞窟


(前から土人形が二体)

(交戦時手順その1、ルナさんが敵を察知)


 ルナが前方からの敵の接近を察知する。


「エアスプレッド」

(手順その2、ユウカねぇが風魔法でマーキング)


 ユウカは細かい風の刃を広範囲にばら撒き、土人形を傷つける。これによって敵の位置を天球スキルにより全員に周知。


「分解」

(手順その3、カノンさんが土人形を分解)


 カノンは土人形に触れ、自身のスキルでそれを分解し、次の行動に必要な魔素とし自身の身体に取り込む。ユウカは主に彼女のサポートを行う。


(分解できる相手には対して強すぎませんか)

(うん、これまさにチート)


 カノンの創造スキルの効果範囲は、一般的に人間が物作りに用いる材料全般が対象となる。


(足元、罠として土の杭が設置されてる)

『了解』


 ユウカとカノンは呼吸を合わせて、足元の罠を飛び越える。


(あっ、飛んじゃダメ、座標がずれる)

「エアウォール」


 ユウカは周囲に薄く風の波を発生させ、その波に接した物体の察知を行う。


(これ、私、いらないじゃん)

(そう落ち込まないで)


 洞窟内の制圧は順調だが、ユキはこの作戦一番の障害に蝕まれていた。


(頭痛い、気分悪い、吐きそう)

(がんばれ、ユキ)


 ユウカからの魔素による通信とルナからの魔素による通信。その中継地点としてユキがいるため、この三人の中で最も情報を処理しなければならないのは他でもなく彼だった。


(そろそろ、洞窟最深部、あと少しがんばる)


 多少慣れてきたとはいえ、これだけの速度かつ高頻繁で魔素を交換しているため、ユキは酷く魔素酔いしていた。


(何か大きな反応がある。気をつけて)


 ユウカとカノンは洞窟の最深部に辿り着いた。


「おや、嬢ちゃんは昨日の暴力女と、、、もう一人の方は知らないな。糸使いはどうしたよ」

(そいつ、土人形。周囲に人はいない)

「また、打ち上げられに来たの。物好きだなぁ」

「いやいや、そんな趣味はねぇよ。今日は最強の味方を用意してっから」


 土人形は手に持つ鍬を高く掲げる。


「それが開拓の鍬ってやつなのかな」

「そうだよ。思ったよりも冷静じゃねぇか」

「あれを持ち帰れば依頼達成でいいのよね」

(依頼は視察だって、何回も言ってるよ)

「でも、持ち帰れるならそれがいいよね」


 土人形はおもむろに指を鳴らすと、周囲の蝋燭に順を追って火が灯っていく。その光に照らし出された思っていた以上に広い空間は、まるで闘技場を思わせる物だった。


「折角の儀式だ。しっかり見えるようにしてやる」


 土人形は地面に鍬を差し込むと、その鍬は大量の土に呑まれその姿を消す。


「開拓の鍬、それは封印の鍵。古の時代に封印された龍の解放、それが私の目的でね」


 鍬に引き続き土人形も、ユウカとカノンの足元で呼応する土のうねりに飲み込まれていく。


「さあ、恐れ慄くがいい。これがクレイドラゴン、この街を恐怖に突き落とす存在よ」


(なんか面白そう。そっち行く)

(ルナさんちょっと待って。まだ気分が)

(ユキ、行く)


ーーーサンハリー領、街外れの洞窟(最深部)


「ココ、ありがとう」

「次は虎ですか」


 ユキはルナの三柱目の召喚獣である虎のココに咥えられ、洞窟の最深部まで来ていた。


「これが、クレイドラゴンなの」

「彼が言うにはそうみたいだけど」

「確かに首は八岐に分かれてますね」

「これをドラゴンは流石に無理があるな」


 目の前の物体に対して、ユキ達はそれぞれ違った感想を抱いてはいるが。ある一点関しては全員が同じことを思っていた。


「どうだ、恐ろしくて、言葉も出ないか」

(それって、スライムですよね)


 確かに八又に分かれた頭、手足に胴体に尻尾とパーツ自体は揃っている。しかし、その身体は全てスライムを思わせるジェル状の塊でできていた。


「うわ。スライム核、大きいな」

(ここまで大きいとなると、スライム核でも記念に持ち帰りたいと思えてしまう)

「とりあえず、スライムの中に埋まってる鍬を取り出せば依頼達成でいいんだよね」

「なんか拍子抜けだわ、ドラゴンと聞いて内心ワクワクしてたんだけどなー」

「あれはあれで可愛くて好き」

「お前ら、スライムだからって舐めるなよ」

(あっ、スライムって認めちゃったよ)


 土人形が指示を出すとドラゴンスライムは首を鞭のようにしならせユキ達を攻撃する。


「よっ、って」


 いち早く迎撃したのはユウカだったが、スライムの弾力のある身体に足が捕まり、勢いが削がれた後に、ユウカの土魔素とスライムの土魔素が干渉し、打撃面は鉄のように性質が変化していた。


「嬢ちゃんの格闘術はもう対策済みさ、洞窟の中なら昨日みたいな大技は出せねぇよな」

「色々考えられて、凄いね」


 ユウカはスライムから足を引き抜き距離を取る。見た目はあれだが、土人形が用意したスライムと環境はユウカに対して天敵と呼べるものだった。


「ユキ、ユウカ、ルナ、下がってなさい」


 今度はカノンが自信満々と言った感じにそう宣言する。ドラゴンスライムは先程と同じように自身の首を鞭のようにしならせ彼女を攻撃する。


「いくら勢をつけたところでスライムでしょ」

(言われてみれば確かにそうだ)


 カノンは身体強化をせずとも、全くダメージを受けることなく首を一本捕まえた。


「メタルバースト」


 次の瞬間、カノンの装備する鉄のブレスレットの一つは砕け散り、彼女の拳から土魔素の塊とも言えるエネルギー体がビームのように飛び出した。


「その光線も土魔素の塊みたいだな、わざわざこっちの攻撃の威力を上げてくれるなんて、、、」

「分解」


 カノンがそう唱えると、ドラゴンスライムの首は霧散し、再構築した際には鉄の巨大なインゴットに姿を変えていた。


「ユキ、私がいてくれてよかったね」

「カノンさんこそ、鉄がいっぱい貯蓄できますね」


 カノンがドラゴンスライムを完封することによって、ユキ達は開拓の鍬を取り戻し、伯爵からの依頼は最高の形で達成されたのだった。


ーーーサンハリー領、サンハリー邸


「サンハリー伯爵、開拓の鍬とその魂らしいです」


 伯爵とアンジェ、どちらの想定とも違う現状に静かな空気が場に流れる。


「我は初代サンハリー国王であるぞ」


 土人形はユキ達に捕獲されてからずっとそう主張するが、彼等はそれを判断することが出来ずに、依頼の報告を兼ねて領主の元を訪ねることにした。


「何が起こっているのだか」


 事はユキ達が転移する数日前まで遡る。


 アンジェは以前からリーナと仲良くしていたらしく。一緒に農作業をやってみたいと二人で話をしていたそうだ。


 そして、その実施日。アンジェは家宝として保管してある開拓の鍬をその興味から手にしてしまい、鍬に体内の土魔素を吸い尽くされ倒れてしまったようだ。


 アンジェの魔力を呼水として本来の力を取り戻した開拓の鍬は、辺りから土魔素を集め取込み、自分の分身となる土人形を創り上げた。


 身体を手にした開拓の鍬は、魔力を吸い取ってしまったアンジェに御礼として一般人が御しきれない程の土魔素の供給を行った。


 その後にアンジェはリーナとの約束を果たすため農作業を行い、その際に畑の土を通して、リーナは土魔素汚染を発症する運となったらしい。


 それから開拓の鍬は、自分が国王をしていた時と比べて街の土魔素が薄くなっている事に気づき、親切心から土魔素の供給を行っていたらしい。


「今の世の人は、我の想像以上に弱すぎた」

「それは、なんとも信じ難い」


 開拓の鍬の人格は、サンハリーがまだ国と呼ばれていた時代の国王の魂が宿っているらしい。


「信じる、信じないと言っても」


 ユキはカノンに指示を出して、カノンは土人形を分解する。一度は土に還ったその身体だが、次の瞬間にはその土を触媒として彼は復活を遂げた。


「いきなり分解するとは何事だ」

「処罰しようとしても、すぐ復活します」

「、、、少し考えさせてくれ」


 この土人形をどうにかするためには開拓の鍬自体の破壊か、封印するしか方法はないだろう。


「封印とかドラゴンとか、結局何だったんだろう」

「きっと、出まかせの威嚇」

「こんなに鉄がいっぱい、何を作ろうかしら」

(あぁ、これで久々にゆっくりできそうだ)


 とりあえず、ユキがサンハリーに来てから一連として起こった事件はこれにて解決される運びとなった。

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