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ああ神よ!

作者: 魑魅毛量

近年の自殺者の増大によって神様はついにアフターサービスを始めたようだ。神はついにスーパーボタンを全人類に配布したのだ!役所に行って(未成年の場合は保護者同伴)所定の手続きを踏めば自分の容姿だったり能力に不満のあるものはそのボタンを押せば何度でも変えられる(ランダム)。なんて素晴らしいものだろうか、と実装された当時は思っていた。しかし現実は無情で神は許しても世間が許さないようだ。私は一重だ。生まれた時は二重だったらしいが今は一重になってしまった。運動神経が悪い。幼稚園の頃はいつだってかけっこ1位だったが今やもうその影も見えない。そして小学校の頃は良かった頭も悪いし、視力はずっと悪いし、性格も。そして最も最悪なのが私の両親はあの便利なボタンを使うことを許さない族に属していることだ。

もうボタンが配布されて2年経った。私の見知ったクラスメイトはもう半分以上リセットして教室から消えていた。消えたクラスメイトは私よりも優れた容姿、優れた運動能力、私が持っていない全てを私よりも持っていたのにさらに優れたパワーを持って再臨していた。ボタンを配るだけでほかは何もしない神様はなんて酷いやつだろうと毎日思って毎日私は死にながら生きている。

テレビのニュースでリセットボタンを使用していないと公言していたアイドルが実はリセットを繰り返す所謂"リセマラ"をしていた、と報じられていた。あれだけ整った容姿ならそんなもんか、と思うが世間様はまたもや許さないらしい。ボタン配布当時の30歳以降の人は基本的にボタン否定派だ。倫理とやらに反しているらしい。倫理に潰されながら生きて死にたくなっているのに何が倫理だよ!と思っても私は口には出せない。

もう一度親にボタンを使わせてくれと頼み込んでみようか、いやどうせ無理だ、といつも思考を反復横跳びさせてコンタクトの裏表も分からないまま私は高校三年生になってしまった。高校がかなり厳しい所なので大学に行けばなんとかなる、大人になったらなんとかなる、と自分に言い聞かせてなんとか最高学年になったが私は夏休みから学校に行っていない。正直大学に行きたいとは思っているが生きたくない。ボタンを押せば全てが変わって助かるのかな。救世主が白馬に乗って現れて私を救済してくれるのかな。毎日1人で昼ごはんを食べる度に思う。本来は今頃学校で昼ごはんを食べていたのに、と泣きたくなる。普通になりたい。普通になるためにあのボタンを押したい。

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