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「人の気持ちを代弁するな!生まれた事が間違いだったかなんて、貴方が決める事じゃない!」
カイトスが驚いたようにこちらを見る。何回目だろう、この顔を見るのは。
「二人がどう思っていたかなんて知らない。あの時、貴方が馬車に乗っているべきだったかなんて分からない。でも、貴方は生きている。それだけは紛れもない事実よ!」
私が言うことは酷いことかもしれない。本当なら 二人は貴方を愛していたはず だとか言うべきなのかもしれない。しかし、これが私の意見だ。
「貴方が死んでどうなるの?貴方が生まれなければ良かったの?そうすれば二人は報われた?貴方の“ 罪”は無くなった?違うでしょ。」
そう、彼の本当の“ 罪”とはカイトスが両親の愛を素直に受け入れられなかったことだ。
「公爵夫妻は望んで貴方を産んだ。それが貴族の役目だったからかもしれない。でも、貴方は望まれて生まれた。それなら生きなさいよ!」
言っていることは横暴だ。それくらい分かってる。でもどうか、死ねばよかった なんて言って欲しくない。
「悲観的になるな!生きている意味が、価値が、ないというのなら作りなさい!最期まで生きたその時に、生きていて良かったって思えるように。」
だんだんと言っていることが自分でもわからなくなってくる。まるで、自殺願望者を止めるような物言いだな、と思いながらも口が止まらない。
「貴方がどうしても罪の意識を消せない、というのであれば守りなさい、公爵が作り上げた土地と民を。地位も責任も継いで。」
私はあえてきつい言葉を選んだ。
二人の思いなんて分からない。ただ、貴方は生きている。
貴方が死んでも、そもそも生まれてこなくても、二人は報われないし、罪も消えない。
二人は望んで貴方を産んだ。それなら生きて良いんだよ。
どうか悲観的にならないで。生きている意味がないと思うならば作れば良い。
罪の意識に悩むならば、どうか公爵が作り上げた平和な土地と民を、公爵の地位を継いで守って。
話しているうちにやっぱり分からなくなってきた。何を言っているのだろう。これは“ 私”が“ あの時の私”に言ってやりたかった言葉なのに。
「今、どこかの貴族の養子になったり何も後ろ盾がない状態なのは危険よ。貴方は正式な王位継承者だから。でも、王家であれば守られる。後に公爵領の管理を任せることもできる。」
どうする?
これで最後だ。私の最大限の力をもってして“ 説得”を行ったが、これでダメなら私には無理だ。
「僕は……」
「今すぐに決めなくても良いわ。明明後日にはお父様が帰ってくるみたいだからその時までに決めてくれれば大丈夫よ。」
今、雰囲気に流されて決めて欲しくない。もっとじっくり考えれば良いだろう。
「何かあったら呼びなさい。」
座っていたベッドから降りると扉へ向かう。勢いよく開けるとアクアが転がり込んできた。どこの物語よ……
「アルビー様、あまり長居は良くないかと。私、専属侍女として不安になってしまいました。」
すまし顔で言いやがるアクアの頬を抓る。
「主の話を無断で聞く侍女もどうかと思うけどね。」
「それよりも良いんですか?あれ……」
後ろを見るとカイトスが呆然としたようにこっちを向いていた。
「とりあえず、ご飯を食べて、ゆっくり寝なさい。それから答えを聞くわ。」
こういう時には食事と睡眠が重要だからね!言い過ぎた感はあるけど後はカイトス次第だ。




