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少し、ショッキングな話になります。

「貴方が居たら二人は助かったのかしら?」


再び顔に笑みを浮かべる。相手を挑発するための笑顔だ。


「二人は四人乗りの馬車に乗っていたそうじゃない。貴方がいた所で乗っていた馬車は同じだったかもしれないわ。」


そう、何もせずに五日間待っていた訳ではない。アクアに頼んで状況を教えて貰っていたのだ。


「でも……」


「あえて古い馬車で行ったのでしょう?領民のそのままの姿を見たいと、護衛も付けていなかったそうね。きっと、貴方がいても犠牲が増えるだけだったわ。」


あの時、二人は護衛をつけていなかった。公爵自身が剣を扱いに慣れていることと、行くのが領地であることから大丈夫だと判断したのだろう。

でも、自身と妻の他に息子もいれば護衛をつけていたかもしれない。古い馬車は二つあって、四人乗りと六人乗りのだったそうだから、カイトスがついて行けば護衛を含めて六人乗りの馬車に乗っていたかもしれない。


だけどそのまま四人乗りの馬車で行っていた可能性も高いのだ。むしろ、わざわざ用意していたのは四人乗りの馬車だったからその可能性の方が高い。


小馬鹿にしたように微笑するとカイトスは悔しそうに唇を噛む。



「それとも何、貴方が二人を守れたとでもいうの?」



彼がハッとした様な表情になる。唇が白くなると同時に顔が青くなっていく。悔しいだろう。

――私もそうだったから。


今、彼に必要なのは怒りだ。自分に対する。そして……私に対する。


「そんな貴方が守られる権利がないですって?逆よ。貴方は守られなければいけないの。権利ではなく義務なのよ。」


さぁ、これで分かっただろう。君は無力だ。あの時、いてもいなくても、結末は変わらない。それならいない方が良かったのだ。――いたとしても何も出来ないから。


カイトス、君は守られなければいけない存在だ。王家の色を持つ継承者として。


それが嫌ならば力をつければ良い。私が嫌いなら“ 王女”と対等な立場になれば良い。


権力も武力も学力も、全てが必要となるこの世界で、守れなかったもの(家族)を守れるように。



「……た……」



「何かしら?」



「あの時、僕が馬車に乗っていれば、僕は父上と母上と一緒に死ねた!!」



……はっ?…


「何を……」


「そうだ!僕は何もできない。生きていたって意味が無い。価値なんてない僕は、あの時、一緒に馬車に乗って死ねば良かったんだ!!そうすれば僕は……」


カイトスの瞳からぼろぼろと涙がこぼれる。カーテンの隙間から差した茜色の光がカイトスを照らした。彼の腕には真新しい傷が残っている。



「独りにならなかった……」



俯いたせいで顔が隠れる。公爵によく似た銀髪が光に反射した。


あぁ、そうだ。一つ大事なことを忘れていた。()()()、私は何よりも.......寂しかったんだ。


「本当は僕だけが死ねば良かった。父上と母上にいつも素っ気ない態度をとって二人を困らせた。きっと二人は僕を恨んでいる。僕なんか産まなければ良かった って思って……それならいっそ.......」



「黙りなさい、この馬鹿が!」



気づいたらまた大声を出していた。


その言葉は果たして誰に言ったものなのか。私のダメな癖だ。一度スイッチが入ると周りが何も見えなくなる。

目の前にいる少年が別の少女と重なっていく。


ごめんね、カイトス。私は貴方の心を埋められない。貴方に優しい言葉をかけることも、明るく振る舞うことも、愛を与えることもできない。

『良い姉がいると知れば決心が着くかもしれない。』

お父様の言葉が頭に浮かぶ。良い姉 、たぶん私はそうなれない。

()を重ねて貴方に言葉をかけるなんて最低だ。


――だけど――


今頃護衛が中に入ろうとするのをアクアが止めているだろう。自己満足かもしれないが、これだけは言わないといけない。――彼が間違いを犯す前に。


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