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「僕は……相応しくありません。」
しかし、返ってきたのは意外な返事だった。
「相応しくない?」
「……」
どういうこと?カイトスは瞳に王家の色をもっている、第二王位継承者だ。王家に相応しくないなんてことはありえない。何か彼なりの理由があるのだろう。
カイトスは両親が亡くなったことを受け入れられないのだと思っていた。王家に入ることは公爵家との繋がりが無くなることを意味しているから。
だけど、彼は「相応しくない」と言った。相応しくないとは何に対してだろう。王家?第二王子という身分?それとも
――公爵家の跡取り。
「どういうことかしら?」
もう一度諭すように問うが、黙ったままだ。
……あぁ、イライラする。何か確実に言いたいことがあるはずなのに言わない。それがどうにも腹が立つ。
――昔の私みたいだから。
「黙りしていたら分らないわ。」
気づいたら低い声が漏れていた。ついでにニッコリと微笑む。目は笑っていないが。
「相応しくないとはどういうこと?」
追い詰めるように淡々と問う。
「何に対して?」
カイトスは一瞬迷うように目を逸らした。後一歩だ。
「貴方を王家に迎え入れるというのは貴方を守るための措置よ。それくらい分かって……」
「だからっ!……守られる権利なんて僕にはないっ!」
いきなり声を荒らげたカイトスにこちらが驚いた。
「……どういうこと?」
カイトスの方も驚いたようだったが、唖然とした顔がだんだんと悲痛に歪んでいく。やがて堰を切ったように話し始めた。
「父上と母上が死んだのは僕のせいです。だから僕には王家に相応しくないし、公爵家に戻る資格も無い。」
「……は……」
はっ?どういうこと?
先程まで苛立っていたのが嘘のように引いていく。代わりに大きな疑問が残った。
カイトスのせいで公爵夫妻が亡くなった?意味が分からない。そんな私をよそにカイトスは話しを続ける。
「あの日、両親は僕と出かけようと誘ってきました。久しぶりの休日だから、一緒に過ごそうと。でも僕は断った。最近ずっとそうでした。親と何かをするのが恥ずかしかったんです。余計な見栄を張っていた。だから二人で出かけてしまったんです。そして魔獣に襲われた。二人が死ぬ原因を作ったのは僕なんです。……僕には守ってもらう権利なんてない。むしろ僕は裁かれるべきなんです。親を殺した悪人だと。」
そんなことで.......とは言ってはいけないだろう。彼が両親の誘いを断った事が原因だとは少し無理がある。しかし、きっと彼にとっては重大な告白だったのだ。悲痛に嘆くカイトスは今にも壊れそうで危うい。
「貴方は……誘いを断っただけじゃない。それは公爵夫妻が亡くなった原因ではないわよ。」
あくまでも冷静に。そう思って声をかけたのに逆に火を付けてしまったらしい。
「違う!二人が乗っていた馬車には血がついていた。魔獣の血かもしれない。あの時、僕が一緒にいればあの馬車に乗らなかったかもしれない!」
初めて聞く情報だ。魔獣の血は他の魔獣を呼び寄せる。でもそれなら馬車の御者はそれに気づかなかったのだろうか。
少なくとも、彼の責任ではない。
「それでも……」
「二人が死んだのは僕のせいなんだ!あの時、無駄な見栄を張って誘いを断らないで、一緒に行っていれば二人は……」
「いい加減にしなさい!」
―― あぁ、本当にイライラしてきた。どうしてこんなにも“ 似ている”のだろう。
自分の罪だと一人で抱えて、壊れそうになるまで溜め込む。そして、本当の罪に気づかずに同じことを繰り返す。
なんて愚かなのだろう。そんなことをしても罪は消えないのに。
――さぁ、説得の時間だ。




