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「僕は王家に入るつもりはありません。」
おぉ。目的をあっさりと見抜かれてしまった。
まぁそうだろう。お父様からも誘われていただろうし、箝口令を敷いていても王城の中でなら噂が回っている。
「……そう。わかったわ。」
公爵夫妻……彼にとっての両親が亡くなったのだ。すぐに立ち直れる訳でもないだろう。
「また来るわ。」
彼はもう来るなと言いたいだろうが仕方がない。これは国のためだ。
食事をとっていないようだったので、前世で姫様が作っていたカロリー〇イトという保存食を置いておく。栄養が全て取れる訳では無いのでちゃんとした食事をとって欲しいが仕方がないだろう。彼の対応について思うところはあったが、気持ちが分からない訳では無いのだ。
「よろしいのですか?」
お父様との話を聞いていたアクアが心配そうに聞いてくる。
「大丈夫よ。」
時間と共に傷が癒えてくれればいい。そんなことを願いながらカイトスの部屋を後にした。
◆◇◆◇◆
「アルビー様、顔、顔っ!」
「大丈夫よ。」
この私のにこやかな笑顔を見て「怖いですよ!」と言ってくる無礼な専属侍女は置いといて。私は今、猛烈に腹がたっていた。
初めてカイトスに会ってから五日がたつ。一応毎日様子を見て確認はしていたが、一向に「王家には入らない」と言われていた日々。最初は「気長に待つか」と思っていたが、昨日最終通知が届いてしまった。
『三日後には帰ります。
追伸
例の件よろしくね!
お父様』
( 何が『よろしくね!』だっ!いい歳して可愛く言ってんじゃねぇ!)
と何処からか声が聞こえたような気がした。空耳かな?
まぁ気にしないで。とりあえず、三日後までにカイトスを説得しなくては。
「失礼するわ!」
五回目となればさすがに慣れるらしい。護衛は何も言わずに通してくれた。
「何でしょうか?」
相変わらず薄暗い部屋に居るけれど、返事だけはしてくれる。カロリー〇イトが気に入って私がお土産で持っていくのを楽しみにしているのはわかっているのだよ。
「考えは変わったかしら?」
「いいえ、変わりません。」
相変わらず淡々と告げてくる。いつもならここで引くところだが今日はカイトスに近づいて行った。
「少し二人にさせてちょうだい。」
静かに命じると護衛達が部屋から出ていく。アクアは心配そうな顔をしていたが一緒に部屋から出ていった。
「僕は今も王家に入るつもりはありませんよ。」
私が引き下がらなかったことに驚いたようだが否定の意を示す。しかし、私は気にせずにベッドの上のカイトスの隣に腰掛けた。
「何故そこまで頑なに王家に入るのを嫌がるの?」
両親が亡くなってすぐに別の家の子供になる、というのは受け入れられないものだろう。しかし、彼の口から理由を聞きたかった。
「貴方が成人になったらお父様は公爵領を貴方に任せるつもりよ。」
そう、お父様がしたいのはあくまでも保護。成人になれば自分の身は守れるだろうと判断している。公爵領も一旦王家が管理するが、後にカイトスを公爵家に戻し領地経営を任せようとしている。
公爵家に思いがあるのであれば問題はない。




