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その後、トゥレイスは用事があると言って帰り、タリタは
「お父様!もう一回!」
「よぉーしっ!やるかっ!!」
……騎士団長との鍛錬を続けていた。
なんか、見れば見るほどすごいのだけれど……
「タリタは昔から、練習していましたからね。」
よく知っているのだろう。ゲナー伯爵が教えてくれた。
「淑女として、百歩譲って魔術師なら良いと、私も教えようとしたのですがね、騎士になると言って聞かなくて。
何度か厳しいと評判の教育係もつけたそうですが、あの面倒くささ……熱意に負けまして……」
面倒くさいって言おうとしてたよね……
「最終的には、アイツも了承したので……」
「えっ?渋ってたのって、奥様ではないのですか?」
アクアが意外そうに尋ねる。私も奥様が反対してるのかと思った。
「えぇ、何でも、『家の可愛い娘に、傷でもついたら!』と、危険なことはさせないように気をつけていたので。」
あー、なんだろう。想像に容易い。
「それでも、タリタは聞かなくてですね。お父様から一本とれたら騎士になる と言い出しまして。」
「……勝ったのですか?」
「いいえ。さすがに、“ アレ”でも団長ですから、簡単には負けませんよ。
しかし……あれほどの腕前を見せられてはですね……」
余程上手だったのだろうか?
「上手……というよりかは、気迫が凄かったのですよ。
子供ならではの素早い動き、相手の意表を突く動作……その全てが我々の想像を逸脱していたのです。」
……ゲナー伯爵が言うと言うことは本当なのだろう。
さっきは似てないと思ったが、才能の方はきちんと遺伝していたらしい。
「まぁ、あれを見せられて反対出来る者はいませんよ。アイツもなんだかんだ言って、娘にカッコイイところが見せられると、喜んでいますから。」
タリタはまだ八歳。これからどんどん成長していくだろう。
……少し、騎士団長がいなくなってからの警備が心配だったけれど、大丈夫そうだな。
「……トゥレイスはどうなのでしょうか?」
不意にカイトスが質問する。
「トゥレイスは、将来何になるのですか?」
真剣に尋ねるカイトスは少し不安気だ。確かに、一番将来が不安な地位にいるのはトゥレイスだ。
「長男は、跡継ぎとして伯爵家の当主になります。
次男は、バトルク様の側近として、隣国へ行きました。
あの子には……自分のなりたい者になれ、と言ってあります。」
バトルク とは私の兄……つまり、王太子だ。へぇ、トゥレイスの兄は、お兄様と一緒に隣国に行ったんだ。
「そうですか……」
カイトスの顔がだんだん下がっていく。
まぁ、心配だよね
だって……
――彼は魔法が使えないのだから。




